少し時間を戻します。闇市のテントの中でナタは縛り上げられていましたが、ネズミのピーターがナタを先に見つけて縄を噛み切りました。
「ありがとう、ピーター。でも私一人では逃げられないわ…。真っ直ぐ歩けないの」
「チューチューチュチュチュ!」
「そう…。ルークたちが探してくれてるのね?金バッヂをわざと掴んで溝に投げ捨てて来たのだけど、簡単にはこの場所を見つけられないと思うわ」
闇市の中には沢山のビーストカードが保管されていました。酷い呪いが幾重にも施されています。
「可哀想に…。でもこの程度の呪いなら解いてあげられるわ?」
ナタが手を差し伸べて呪文を詠唱すると中から魔物が現れて、ナタに襲いかかろうとしています。
「もう痛くないでしょ?大丈夫だから、怖がらないで」
「チュチュチューチュー!」
ピーターも魔物を説得しています。魔物は唸るのをやめてナタの手をペロペロと舐めました。ナタのそばで丸くなって寝ます。
「他の子たちも助けてあげないと…」
ピーターがカードを咥えて持って来ました。ナタは次々に呪いを解除して行きます。仲間になった魔物が他の魔物を説得するのを手伝っているので、誰もナタを襲ったりしませんでした。
「ここにいる子たち以外にも苦しんでる子はどこかにいるのね。昔のアークみたいに…」
テントには強力な結界が張られていて出られそうにありませんでした。
「これは第一級魔術師でも結界を破るのは難しいわね」
逃がそうと思っていた魔物たちを一旦カードに封印し直すと、ピーターに頼んで棚に戻しました。ナタは縛られたフリをしながら横になって寝ます。
「ルシファー・マルヴェール様が来られた!闇市の元締めを出してくれ。ルシファー様をお待たせするなよ?」
揉み手をしながら闇市の元締めが現れました。
「これはこれは…。いつもご贔屓にしてくださり、ありがとうございます」
「この前、頼んだ人質はどうしている?」
「あの女なら縛り上げて、特殊なテントの中にいますよ。高額商品だけを置いているテントです」
それを聞いてルークが怒ったように闇市の元締めに言いました。
「手荒な真似はしていないだろうな?怪我でもさせていたら許さないぞ!」
「魔物はカードに封印されてますし、怪我をする事はないと思いますが…」
ルークの足元にピーターが現れて、ネズミ語で何やら話しています。ルークはネズミ語もわかるので、静かに聞いていました。
「ん?ウェアラットが一匹、逃げ出したか…。まあこの程度の雑魚モンスターなら別に大した問題はない」
「どうやらナターシャ・マルヴェールは無傷で生きているようですね。このウェアラットから聞きました」
「魔物の言葉がわかるとは…。流石です」
…つづく
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どうしても書きたくて書いた裏の続き、第47話。