眼鏡をかけ直すと周りの目がたくさんこちらを見ています。ヒソヒソ話もしていました。
「ええ、ミッシェルの好きな曲のレコードを聴かせてもらって歌詞を覚えたんです」
「若い子の流行りの曲は知らないの」
「十年前に流行っていた曲のようですよ」
「十年前のなら少しはわかるかも。ワンフレーズ、歌ってくださる?」
「ここではちょっと…。人が大勢見ていますので」
「そうですよね…。ごめんなさい!」
「二人っきりになれる場所に行きませんか?」
「えっ…!二人っきりになれる場所に?」
「郊外の森なら誰も来ませんし、歌っていても誰かに聞かれる事はまずないかと…」
「郊外の森だと魔物が出るって噂があって危険ですよ」
「ハハハ!魔物が出ても僕が退治して、あなたを守ってあげますよ?」
「見かけによらず、武術を嗜んでいらっしゃるのですか?」
「いえ、武術はやっていませんが、魔術なら得意です」
「魔術師だったのですね…。読書家の武術家なんて変だと思いました」
「僕の祖父の息子は剣士でも読書が趣味だったそうですよ」
「あなたのお父様の事ですか?」
「いえ、実の父は僕が生まれる前に亡くなっていて、僕は養子なので祖父とは血の繋がりはないんです…」
「まあ!思っていた以上に、不幸な生い立ちだったのですね…」
…つづく
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どうしても書きたくて書いた裏の続き、第37話。