食事に行くと周りの目を引くので、眼鏡の女性は狼狽えていました。自分のファッションが変なのか、と不安になってきたのです。
「どうかされましたか?何か気になる事でも」
「い、いえ…。ちょっと人の目が気になって」
「ああ、たまにジロジロ見て来る人がいますけど、気にしないでください。いつもの事です」
落ち着こうと思って眼鏡を取ると、シルクのハンカチでレンズを拭います。
「目元が可愛いですね。黒縁の太い眼鏡をかけていたから気付かなかった」
「そ、そうですか?じゃあ外してようかな…」
ぼやけてよく見えない視界で何とか食事を済ませます。周りが見えないおかげで少し緊張が和らぎました。
「お会計は僕が済ませて来ます」
「いえ、割り勘でお願いします」
「女性に払わせるのは失礼に当たると習いましたが…」
「私は男に奢らせるのは良くないと習っています」
「そうですか。立派なお考えをお持ちなのですね」
店を出ると、また噴水広場に戻って、ベンチに座って話す事にしました。一睡もしていない上に眼鏡をかけていないので、フラフラしながら座ります。ルークが体を支えて座らせました。
「具合は大丈夫ですか?足元がフラついてるようですが…」
「大丈夫です…。眼鏡を取っていたので、よく見えなくて」
「店ではあまり話せなかったので、もう少し話をしたかったのですが、もう帰られますか?」
「私もまだ話がしたいです」
「何の話をしましょうか?」
「ゲオルグ様のご趣味は?」
「趣味は読書と…最近音楽を少々始めました」
「音楽もされてるんですね」
…つづく
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どうしても書きたくて書いた裏の続き、第36話。