一年後にルリは第一級魔術師試験に一発合格しました。この年、二十歳で合格したのはルリ以外にいないようです。ルリと一緒にジンもボラージ家に帰ります。ルリの母親がドアを開けると、ルリの父親が腕組をしながら仁王立ちして玄関に立っていました。
「ただいま、お母さん」
「わしには挨拶はせん気か?ルリ!」
「お父さんはどうせまた怒鳴り散らすだけでしょ?話したくないわ…」
「第一級魔術師試験に最年少で一発合格したそうじゃないか!チャービル・タイムスにも載っていたよ?」
「全部、クレス先生のおかげよ?奨学金に頼らなくても学費を全額支援してくださって、魔法指数の高さも紹介状に書いてくださったから、魔法科に途中編入が許されたの」
「うむ、クレスとの交際を許そうと思っておったんだ」
「クレス先生とはもうお付き合いしないわ。今はジンと付き合ってるの。今日はその話をする為にジンを連れて来たのよ」
「な、なんだって!この悪ガキと付き合ってるのか?」
「ジンはもうあの頃の悪ガキじゃないの。私の頭の上におしっこをかけられたのも、今となっては良い思い出だわ…」
「俺そんな事したっけ…?ごめん!」
「どうせ覚えてないと思ったわ。クレス先生にカブトムシをあげたのも忘れてるんでしょ?」
「ああ、ヘラクレスだろ?俺の宝物だったんだよ」
「あら?よく覚えてたわね」
「ルリを助けてくれたお礼だったからな…。あのヘラクレスはお気に入りだから、本当は渡したくなかったんだけど」
「ふふ、私の為にありがとうね」
「なんでルリがその事知ってるんだよ?クレスの奴がバラしたんだな!絶対に言うなって約束したのに…」
「先生は私にあんたの事を好きになって欲しくて話してくださったのよ?」
「ヘラクレスをあげたって話で好きになってくれてたのか?俺のヘラクレス…まさか恋のキューピッドになってくれていたとは!」
…つづく
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処女作の復刻版、第89話です。オオカミ姫とは無関係のオリジナル小説ですが、これを掲載する前に書いていた、オオカミ姫の二次創作とかなり設定が酷似しています。