ユーカリ姫とイノンドの婚礼の儀も城内で盛大に行われました。二人とも幸せの絶頂で、ウエディングドレス姿のユーカリ姫をイノンドは抱き上げて大聖堂から出てきます。
「皆さん、今日はこんなにたくさんお集まりいただきありがとうございます!」
「私、ディルと一緒に幸せになります!」
ステンドグラスがとても綺麗な教会の中は、大勢の人が祝福に訪れて美味しいご馳走を食べていました。もちろんジンとルリも来ています。
「こんな豪華な結婚式を俺たちも開こうな?」
「お金が無駄にかかるから、私は別にもっと地味な結婚式でも良いのだけど…」
ビュッフェ形式の料理をあれこれトレイに盛って、むしゃむしゃ食べながら二人は話しています。
「それにしてもイノンドの奴、幸せそうだったなぁ。ユーカリ姫の事は諦めるって言ってた癖にさ!」
「本気で好きだから諦めないとダメだって思う事もあるんだよ」
「ルリはクレスの事を諦めちまって後悔はしてないのか?」
「後悔はしてないのだけど、もし私がクレス先生と結婚してたら幸せだろうなぁって思う時はあるわね…」
「クレスの事は別に忘れなくて良いと思うよ?忘れろって言ってもどうせ無理なんだろうし、余計に好きになっちまうだけだと思うぞ?俺が逆にルリを忘れようとしたらそうなると思う」
「あんたは考え方が本当に他の男と違うわ。普通なら忘れろって言ってくるはずだもの」
「クレスが好きで一生懸命なルリも好きだったからさ?俺もクレスの事は本当は嫌いじゃなくてね。嫌いなフリして喧嘩してたんだけどさ。クレスは大人だから俺の事は嫌ったりしてなかったけどね。セルフィーユ王子に対するイノンドの態度と似てたなぁ」
「それでジンはイノンドさんを幸せにしようと努力してたの?」
「いや、理由はわからねぇけどほっとけなかったんだ」
「クレス先生からは私を奪ってしまったから罪悪感からそうしてたのかしら?」
「そうかもしれない。ただイノンドには幸せになってもらいたかったんだ。クレスが俺にしてくれたみたいにイノンドにしてやりたかったのかも?」
「クレス先生の優しさがイノンドさんに回って来たのね?」
「そうだな。親切は本人に返せなくても誰かに返していれば、いずれ本人に帰って来るってクレスも言ってたし、クレスもいつか必ず幸せになれる日が来ると思ってる」
「うん、私もそう思う。クレス先生は必ず幸せになれると思うし、ロイも幸せになれると思ってるよ」
…つづく
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処女作の復刻版、第86話です。オオカミ姫とは無関係のオリジナル小説ですが、これを掲載する前に書いていた、オオカミ姫の二次創作とかなり設定が酷似しています。