No.98108

真剣に私に恋しなさい! 外伝『川神の永い夜』 第三幕 

きささげさん

夏の暑い時期に戦うんだったら動きやすくて
涼しい格好がいいんです。そう決めたんです。

でも男の水着は誰得な感じです…
百花繚乱、戦いの宴までもう間もなくです

2009-09-30 08:45:07 投稿 / 全5ページ    総閲覧数:4267   閲覧ユーザー数:3844

 翌日の昼休み。昼食を終えて教室でまったりしながら、俺は昨日の一件を思い出していた。

 悔しいが冬馬のヤツにすっかりしてやられた。これならある程度話を聞いてから断っておくべきだったか… いや、この展開はおそらくどっちに転んでも姉さんへのアプローチを止める事はできなかったろうな。

 それにしても冬馬は何を思って俺と『決闘』するなんて考えているのやら… 

「どうした大和? またよからぬ事でも考えているんじゃないだろうな?」

「ん… ああクリスか。大したことじゃないから大丈夫だよ」

「ふむ、ならいいのだが。お前がそういう顔をしている時は大体ロクでもないことを考えている時だからな。心配というか、釘の一つでも刺しておこうと思ってな」

 相変わらずクリスは俺の事をどこか気に入らない風なことを言ってくる。本心から嫌っての発言じゃないことはわかるが、やっぱり聞いていて気持ちのいいものじゃない。

「それにしても、ここ最近どうもクラスの空気が良くないときがあるな。特にS組の生徒が来た後はかなり険悪なムードだ。転校直後はそういう感じはあまりなかったと思うのだが…」

「ああ。元々仲は良くなかったけど、ここんところはかなり酷いな。俺や委員長もそうだし、S組の中でも気にしてないやつはいるんだけどな」

「空気だけ悪くして陰で何かをいうくらいなら、いっそ正面からぶつかって一度決着をつけてしまえばいいのにな。幸いにもこの川神学園には『決闘』というシステムがあるのだから、私と犬の時のように行動をおこすべきだ」

 まっすぐな瞳で俺を見つめてくる。迷いのないその視線を俺にぶつけられても困るんだけど。

 別にクリスに限った事じゃないし、昨日冬馬との話にあがってきたことを思い出すまでもなく、両クラスの仲はかつてないほどにやばさを感じる。あいつはそれを引き合いに出してきて俺に何かをさせようとしてきたのが気になって一度は話を断ったが、やはり何か起こる前に手を打っておいた方がいいのかもしれないな。

 午後は幸いにもヒゲの授業。考え事をするには丁度いい時間だ。

「俺としても別に放っておくつもりはないから、最悪の事態にだけはならないように考えておく事にするさ」

「ああ、交渉などはお前や委員長が適任だろうからな。その上で力が必要になれば私たちを頼ればいい」

 珍しく自分の主張がまっすぐ通って嬉しかったのか、クリスは上機嫌で自分の席へと戻っていった。

 さて、どうしたものかな……

 で、あっという間の放課後。今日も俺のどんよりした心とは裏腹にいい天気だ。

「やあ、今日は大和君から呼び出されるとは… もうこれはフラグ成立とみて間違いなさそうですね」

「どうしてそう会うたびに愛をささやこうとするんだよ!」

「愛は想っているだけで伝わるとは限りません。特に大和君のようなタイプにはどんどん言葉で押していくのが一番じゃないかと思ってましてね。 …それにしても、昨日の今日で再びというのは、ちょっと予想より早かったですね。大和君のことですから週明けくらいまでは焦らせてくると思っていたのですが」

「ウソつけ。まず行動ありきの姉さんを最初に動かしておいてよくいうぜ」

 ま、おかげで冬馬が何を考えているかが少しわかったのは拾い物といえるんだけどな。

「で、俺と『決闘』したいってのは本当の話なのか?」

「はい。一応はS組とF組との決闘、という形にはなりますがね」

「一応?」

 昨日の話からしてそれを『一応』というのは随分変な話だな…

「私は大和君をもっともっとよく知りたいのです。賭場での一件から貴方の行動を見聞きしてきましたが、やはり直接相対してその実力を知りたいというのが本音です」

「やれやれ、S組でも切れ者で通っている存在からそれほど高く買われていたとは光栄だけど… 俺にはそこまでの力はないと思うぜ?」

「さあ、それはどうでしょう? 能ある鷹は爪を隠すものですからね」

 うーん… つかみ所が少ないなぁ。知りたい事の半分くらいは既にわかっているはずなのに、肝心の核心部分がちっとも見えてこない。問題なのはクラス同士の不穏な空気であって、俺や冬馬個人は何のしがらみもないのだから、担がれでもしない限り敵対する必要はないはず。

 だけど言葉から察するに、向こうは俺個人との『決闘』を望んでいるように聞こえる。あるいはそう思わせることがフェイクで、もっと別の目的をはらんでいるのかもしれないけど… さすがに現時点では考えすぎだな。

 ここは向こうの目的の深い部分を知るためにも話を進めるべきだろう。

「わかったよ。クラスとしての了解はこれから取る形になるけど… まあ乗り気になることはあれ、反対されるってことはウチのクラスからはないだろうし」

「ありがとうございます。きっと首を縦に振ってくれると信じていましたよ」

「…それで、決闘の形式はどういうものにするんだ? 俺が姉さんから聞いた限りではクラス外からの応援ありで、複数人数同士の団体戦みたいな感じだと言っていたんだが」

 その采配をするだけというのなら、こちらは姉さん一人で全てカタがついてしまうだろう。まさかそんなわかりきった勝負をしてくるとは思えない。

「ええ、おおむねはそんなところですが、私自身が一番に望んでいるのは本気を出した大和君との『決闘』です。おそらく今大和君は百代先輩さえ自分の側につけば勝ちは見えたも同然と思っているでしょう?」

「…まさか」

 思わず背中に冷たいものが走る。冗談じゃないぜ、戦う事前提で姉さんを相手に勝ちを取るなんて至難の業だっていうのに!

「ふふっ、そんなこわばった顔をしなくてもいいですよ。百代先輩にはあの時、こういうことを考えている事を伝えただけに過ぎません。それに、いかに先輩が無双の強さを誇ったとしても、一人一戦の団体戦という形式を取れば簡単にその強さの大半を封じてしまえますし」

 言われてみればもっともである。というかそんな簡単な事にも気づかないとは我ながらちょっと情けない。

「大まかなルールは考えてありますが、学校側の了解を取る必要もありますし、私と大和君の双方が納得できる条件でなければ意味がありません。それについては一番融通の利きそうな学長に直接話を持っていこうと思っていますので、その時は同席をお願いしますよ」

 そういいながら、冬馬が胸ポケットから二つ折りのメモ用紙を手渡してきた。

「大和君の気が万一にでも変わらないよう、一つだけ先に決めておきたいルールがそこに書いてあります。学校側を納得させるだけの説得材料は揃っていますので心配はありません」

 開いてみるとそこにはこう書いてあった。

 

 

『参加者は全員水着着用』

 

 

 ………

「…S組の連中はコレ知ってるの? っていうか参加者は納得してんの?」

「はい。参加予定者全員から了解の意思はとっています」

「あの軍人とか一緒につるんでいる女の子もか?! …って、全員って事はもしかして」

「はい。私も準もそうですし、英雄も時間を作って参加してくれるようです」

 そうだよなぁ。全員って書いてあるもんな。当たり前か

 だがこれは…

 なんというか…

「楽しい勝負になりそうだな」

 思わずニヤけそうになる口元を必死で堪える。この時点で昼休みから巡らせていた考えはほぼどうでもよくなった。もちろん決闘するからには勝ちを取りに行くつもりだけど… ぶっちゃけクラスのこと抜きでも受けてたかもしれないな。

 後はどうやってこちら側の女の子の参加者を増やすかだが、ここは俺の腕のみせどころだな。

 やる気でてきたぜ!

 

 

 -続-

『川神の永い夜』第四幕 予告

 

「やれやれ、こんな年寄りに予告をさせるとは人使いが荒いわい。とはいえ、ワシも出番がないままというのは寂しいからのう。ここは一つバシッとキメてギャルのハートをゲットじゃわい」

 

『次回、予想を上回るポロリ戦争勃発 ふんどしvsブーメランvsヒモ』

 

 

「なんという羨まし… いやいやけしからんタイトルじゃ! これはワシもふんどしチームで参加するしかないようじゃの!」 

 


 
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