ジンは哀しそうに目を伏せながら言いました。
「今はもうその才能も潰れちまったよ?」
「左手でも防衛はできるんでしょ?防衛を極めたら良いじゃない!今出来る事を頑張りなさない」
「左手では小剣のフルーレしか持てない。右手なら大剣のエペを持てたんだが、フルーレなんて女や子供が使ってるような護身用の弱い武器だぞ?」
「例え護身用でも身を守れるなら立派な武器でしょ?私はそれを弱いなんて思わないわ」
「わかったよ。攻撃技じゃなくて防衛技を極めてみる」
「ええ、あなたならきっと出来るわ?攻めるより守る方がずっと大変な技術だと思うの」
洗濯物と皿洗いが終わるとルリはジンと一緒に出かけました。夕食の買い出しの為です。
「何が食べたい?ジン」
「俺の為に何か作ってくれるのか?」
「あまり難しい料理は作れないけど」
「前に一度だけ食べたアレが食べたいな」
「アレって…もしかして紅い兄弟に襲われる前に食べたお弁当の事かしら」
「紅い兄弟の事は思い出したくないな…」
「私だって思い出したくないけど、その後のメリッサの記憶の方がもっと嫌だわ…」
「メリッサの記憶って、どんな記憶なんだ…」
「ブヨブヨの太った男も相手してたみたいよ」
「ごめん!聞いた俺が悪かったけど聞きたくない」
「この体は綺麗だと思うんだけど、心は穢れてしまってるわね」
「ルリの心はずっと綺麗なままだと思うぞ?」
…つづく
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処女作の復刻版、第65話です。オオカミ姫とは無関係のオリジナル小説ですが、これを掲載する前に書いていた、オオカミ姫の二次創作とかなり設定が酷似しています。