No.980874

左利きの魔剣士62

リュートさん

処女作の復刻版、第62話です。オオカミ姫とは無関係のオリジナル小説ですが、これを掲載する前に書いていた、オオカミ姫の二次創作とかなり設定が酷似しています。

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2019-01-18 12:16:37 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:207   閲覧ユーザー数:207

ジンはルリに頼まれて直筆の手紙をボラージ邸へ届けました。ジンとは顔見知りなので、ルリの母親が玄関先ですぐに応対します。

 

「これは…!間違いなくルリの字だわ。服を持って来てと書いてあるわね」

 

「こんな話をしてもおばさんは信じないかもしれないけど、ルリは死んだ後に妖精になって、ずっとクレスの診療所にいたんだ。俺と旅をしてたけど、人間になれる方法がわかって、さっき人間に生まれ変わったんだよ」

 

「本当なの?あの妖精がルリだったなんて…。私はてっきりクレス先生がペットの妖精にあの子の名前を付けて可愛がってるものだとばかり思っていたの。クレス先生はルリの事を我が子のように大切に思ってくださっていたから…」

 

「服がないから困ってるんだ。おばさん、急いで服を用意して診療所に持って来てくれよ?」

 

診療所に戻るとルリとクレスが話をしていました。ジンはドアに耳を当てて盗み聞きします。

 

「セルフィーユの魔法科に通いたいんですが、学費はどれくらいかかりますか?奨学金制度も視野に入れてますが…」

 

「妖精のルリには給料は出していなかったが、一年間、私の仕事を手伝ってくれたので、学費は全部、僕が出すよ?」

 

「高いんじゃないですか?先生に全部、負担させるなんて申し訳ないです」

 

「気にする事はないよ?ルリの回復魔法で随分と僕もラクをさせてもらってたし、君も今なら回復魔法を使えるんじゃないかな…」

 

「多分、使えると思います。魔法科に通っても学ぶ必要がないかもしれません」

 

「それでも第一級魔術師の資格を取る為には、形だけでも通っておかないとね」

 

「はい、わかっています。私は今、生きていれば十九歳だから来年で第一級魔術師試験を受けられますよね?」

 

「そうなるね。役所の手続きの書類は僕が用意しておくよ」

 

「お願いします。先生に頼めば安心です」

 

少し遅れてルリの母親が大きなスーツケースに服をたくさん詰めて持って来ました。ルリは服を着替えて出て来ます。

 

「ルリが生きていたなんて…。もう諦めかけていたのに…」

 

「お母さん、ごめんなさい。今まで心配をかけて」

 

「お前が生きててくれただけで、もう何もいらないよ」

 

「私、セルフィーユに行って魔法科の勉強をして来ます。来年、第一級魔術師試験を受ける為に」

 

「そうなの?お前が決めた事なら母さんは応援するよ」

 

…つづく


 
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