クレスが本棚からパワーストーンのヒーリング効果についての資料を取り出します。
「ルリが露店で見つけてイノンドが五百ジェニーで買ったんだよ?価値を知らずに売っちまったんだろね」
「現在、確認されてる中で最も強い魔力を秘めた宝石がそのエルフの涙だよ?」
エルフの涙について記述されてるページを開きました。ジンは一部分だけ読み上げます。
「魔力の消費を半減させる、呪いなどの効力を弱める、魔力を蓄積して放出する事も可能…」
「付けてるだけで健康になれるから、金があるなら魔術師ではなくても欲しがる代物だよ?」
「クレスは妖精を人間にする方法とかは知らないか?」
「伝承によると心から愛する者の口付けで人間になったと書かれていたのを読んだ事がある」
「心から愛する者?クレスかイノンドがルリにキスしたら人間になるって事か」
「えーっ!クレス先生とイノンドさんのどっちとキスするかなんて…。ボク、選べなーい!」
ルリはクネクネしながら嬉しそうに悩んでいます。
「妖精が二股してる場合はどうなるんだ?クレス」
「そこまではわからないよ?僕も妖精にはそれほど詳しくなくてね…」
その晩、ルリはこっそり三人が寝ている診療所のベッドの上を飛んでいました。三人ともイビキをかいてよく寝ています。
「誰にキスしよっかなぁ。クレス先生はモテるから浮気が心配だし…、イノンドさんはユーカリ姫の事が大好きなんだよね…」
イノンドはモフモフだったヒゲを剃ってチクチクに戻していました。ジンはこの日ヒゲを剃らずにチクチクにしようとしてるようです。
「なんでジンまでヒゲをチクチクにしようとしてるんだよー?ボクの事は嫌いなんじゃなかったの…」
なんとなくジンの顎をルリが手で触ると、少しチクチクしていました。
「バカじゃないの?ヒゲがチクチクになったってジンの事なんか好きになるわけないじゃん!人間のルリだってお前が嫌いだったはずだし」
ルリは人間だった頃の記憶を思い出そうとしましたが、記憶にモヤがかかってどうしても思い出せません。
「どうしてだろう…。大嫌いなはずなのに…」
ジンの無くなった右腕の包帯を、そっと手で触ります。
「なんでこんなに気になるんだろう…。この右腕の事が…」
翌朝、診療所のベッドの上に巨大な繭が出来ていました。人一人、入ってそうなサイズです。
「なんだこのでかい繭は…」
「これは…!伝承通りなら妖精の繭だな」
「妖精がこんなでかい繭作るなんて思わなかったぞ?」
「ここから生まれ変わるんだよ?新たな種族の姿にね」
…つづく
Tweet |
|
|
0
|
0
|
追加するフォルダを選択
処女作の復刻版、第58話です。オオカミ姫とは無関係のオリジナル小説ですが、これを掲載する前に書いていた、オオカミ姫の二次創作とかなり設定が酷似しています。