ジンとルリとイノンドは妖精界のゲートの前まで行きました。ゲートの番人が話しかけて来ます。
「首尾はどうだった?ユーカリ姫の奪還は上手く行きそうかい」
「既に惚れてるのに落ちない女もいるとはね。俺は惚れた女が惚れてくれなくて悩んでるってのに…」
「浮気草の汁があれば、目が覚めた時に最初に見た者を好きになるよ」
「そんな魔法の草があるのか?でも無理やり惚れさせるのは、なんかやだなぁ」
「お前は勇者だからそう言うと思ったよ?普通の人間なら欲しがるけど、勇者は嫌がる」
「そう言うものなのか。俺は勇者じゃなかったんだよな?」
「ああ、ルリジサ・ボラージが死んだ瞬間から突然、お前は勇者の素質が目醒めたからな。その前のお前なら浮気草を悪用してただろうね」
「確かにアカデミーにいた頃の俺なら悪用してた可能性が高いな。ルリが死んでから何もかもが虚しくなって、女とやりたいとも思わなくなっちまってた…」
「勇者の死によって新たな勇者が生まれるなんて前例がなくてね。面白い事象として天界の記録者の多くが注目している」
「別に何も面白くはないだろ?」
「それで今日は何の用で来たんだ?」
「妖精の王様に会わせてくれよ?聞きたい事があるんだ…」
「オベロン様もお前には興味津々だよ?付いて来なさい。案内するよ」
樹の中の迷路をくぐり抜けて、木漏れ日のチラチラ漏れる葉っぱの屋根のある玉座の間に辿り着きました。
「よく来たな?勇者ジンジャーよ。其の方の活躍は報告を受けておる」
「別に俺は大した事はしてねぇけどな?」
「勇者と言う者は皆そう言うものだ。自分のした事がどれほど素晴らしい事であるのかを自覚していない」
「うーん、まあとりあえずメリッサはかなり強かったっぽいから、倒したのはすげぇ事なのかな?油断してたみたいだったんで、あっさり倒せちまったが…」
「メリッサを油断させる…と言うのが最も難しい事だよ?お前以外には倒せなかったはずだ」
…つづく
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処女作の復刻版、第53話です。オオカミ姫とは無関係のオリジナル小説ですが、これを掲載する前に書いていた、オオカミ姫の二次創作とかなり設定が酷似しています。