セルフィーユまでまだまだ遠い道のりでした。成績が落ちなければ騎士団の者が迎えに来てくれますが、落第点ギリギリまで下がってしまった為、迎えの者が来なかったのです。
「お尋ね者になった事がバレたら、騎士団には入れないよなぁ」
「ジンジャー殿はセルフィーユ騎士団に入るつもりだったのですか?」
「ああ、ちょっと探したい人がいてね。騎士団に入れば見つかるかなって」
「探し人ですか?どなたでしょう…。名前を教えてくだされば、探す方法もわかりますが…」
「メリッサって言う名前の魔女だ。今は絶世の美女だから、有名になってそうな気もする…」
「メリッサなら知っています。去年まで私はセルフィーユ騎士団におりましたので…。しかしメリッサは美しいですが危険な女ですよ」
「イノンドはメリッサの事を知ってるのか?」
「ええ、あの女は次々に男を誑かして、セルフィーユ騎士団の者はほとんどあの女の餌食になっておりましたが、私は強い精神力であの女の魅了の術を跳ね除けました」
「魅了の術って男なら誰でもかかると思ってたんだが、気合いでどうにかなるもんなのか?」
「私以外の者はメリッサの虜にされてしまいました。一度抱いたら忘れられない絹のような肌とマシュマロのような胸だと噂に聞いております」
「それは…ちくしょう!別に羨ましくなんかないんだからな?」
「私はメリッサに逆らったので、騎士団の中で孤立していじめに遭って追い出されてしまったんです」
「イノンドさんは全然悪くないのにー。メリッサって人が悪いんじゃん!」
イノンドの肩に止まっていたルリが、口を開きました。
「メリッサは人間のルリの体を乗っ取ったんだが、ルリを殺したのはメリッサだから、許せないんだよ?」
「なるほど、それがジンジャー殿が旅を始めた理由なのですね。不肖私めは感動して涙が…」
「いや、今の話のどこに泣くところがあった?おっさんはすぐに泣くからなぁ」
「愛する女性を殺されてしかも体を奪われて、好き放題にされるなど…。考えただけでも怒りで震えが止まりません」
「イノンドは感受性が強すぎるんだよ?普通はこんな話聞いても泣かないと思うぜ」
…つづく
Tweet |
|
|
0
|
0
|
追加するフォルダを選択
昔、知り合いが某少年漫画に持ち込みして、編集の人にこき下ろされまくった作者の原作の小説。復刻版の第29話です。