次の街に着くとイノンドは兜を深く被って顔を隠します。街中の至る所にイノンドの似顔絵が描かれた手配書が出回っていました。
「おっさんの絵、本物にそっくりだなー」
「ねぇ、この隣の絵ってジンに似てないー?」
「ん?俺はこんな人相悪くないぞ…」
「名前の欄は『左利きの魔剣士』となっていますなぁ」
「えっ?まさかこれって俺の事なのか…」
「私よりも賞金が高いです。流石、ジンジャー殿ですなぁ」
「なんで俺まで、いきなりお尋ね者になってんだよ!こんなの予定になかったんだが…」
「チャービル卿はセルフィーユ王家の血筋のお方ですからね。怒りを買ったら、いくらでも賞金を釣り上げて、地の果てまでも追いかけて来るでしょう」
「最悪だ…。それもこれも全部このバカ妖精が悪いんだ!」
「ボクの事バカって言ったな!バカって言う奴の方がバカなんだぞ?」
「その言葉、そっくりそのまま返してやる!お前だっていつも俺の事バカバカ言うだろが?」
「ボクのバカは愛のあるバカだから別にバカにはしてないんだよー?」
「人間のルリにバカって言われると逆に嬉しかったのだが、なんで妖精のルリに言われると、こんなにイラッと来るのだろうか…」
ジンはルリのぺったんこの胸をチラ見すると、深く大きな溜息を漏らしました。人の大勢いる大通りを歩くのは危険だと判断して、裏道に入ると露天商がガラクタを並べて売っています。
「キラキラして綺麗ー」
「そんなもん、どうせガラス玉だろ?本物の宝石がこんな値段で買えるわけないし」
「これ買ってー!ジン」
「ダメだ!無駄遣いするわけにはいかない…」
「私の所持金が少しありますので、ルリ殿にこの指輪を買って差し上げますよ」
「わーい!だからイノンドさんの事、大好きなんだー」
…つづく
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昔、知り合いが某少年漫画に持ち込みして、編集の人にこき下ろされまくった作者の原作の小説。復刻版の第26話です。