イノンドは合点がいったと言うように、掌を拳でポンと叩くポーズをしました。
「なるほど、ではジンジャー殿の言っていた事は本当だったのですな」
「ボクの事を物扱いするからムカついただけだよー?」
「だとしたら…ジンジャー殿が不憫です。私がジンジャー殿ならば、今頃あなたの身を案じて救い出さねばならない!と、画策している事でしょう」
「ジンはボクの事なんか、ちっとも大切にしてくれないよー?」
「ああ、神よ…。私はどうすれば良いのです?命の恩人のチャービル卿は裏切れないが、この妖精が命を落とせば、ジンジャー殿が傷付く事になる」
「あいつはボクが死んでも涙一つ、こぼさないと思うけどー?」
イノンドは鳥籠の留め金を外すとルリを出してあげました。ルリは鳥籠から出てもイノンドの方をじっと見ています。
「この窓からお逃げなさい」
「でもボクが逃げたりしたら…おじさん、あのおじいちゃんに叱られたりしない?」
「折檻を受けるでしょう。五十万は私が働いて返すと言って許してもらいます」
「えーっ!そんなのおじさんが可哀想だよ…」
「妖精殿は心が優しいですなぁ」
「優しいのはおじさんの方でしょ!クレス先生より良い人に初めて会ったよ?」
ルリはイノンドの事が大好きになってしまいました。逃げる事も出来ずに窓の前でイノンドと別れを惜しんでいます。
「ん?あれはジンジャー殿ではありませんか」
「あっ、本当だ!よくここがわかったね」
「おそらく、道に残った車輪の跡を追いかけて来たのでしょう」
「へぇ、筋肉バカの割にはやるじゃん?」
「彼は左利きのようでしたが、どうも本気を出していないと感じました。なぜでしょうか?」
「あいつは右利きだよ?なんでか左手しか使わないんだよねー」
…つづく
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昔、知り合いが某少年漫画に持ち込みして、編集の人にこき下ろされまくった作者の原作の小説。復刻版の第22話です。