その頃、セルフィーユ王国騎士団の者が紅い兄弟の討伐の為に田舎村の役所に来ていました。
「盗賊団・紅い兄弟のアジトはどこにあるかわかりますか?何でも良いので情報を集めています」
役所の前に紅い兄弟の情報を高額で買うと言う御触書が出されます。ジンはそれを見てお小遣い稼ぎが出来ると思って情報を提供しました。
「君が紅い兄弟のアジトの場所を知っていると言う少年かね?」
「はい。俺で良かったらアジトまで案内しますけど?」
「手続きの為にこの書類にサインしてくれないか」
「面倒だなぁ。振込先?そんなもんねぇし…」
「では現金で報酬を支給しよう。住所と名前だけ記入して提出しなさい?」
「役所ってのは手続きが一々、面倒臭いな…」
ジンは左手でミミズののたくったような汚い字を書いて提出しました。
「君はサウスポーなのかい?珍しいね…」
「右手は調子が悪いんです」
右手の魔力が強過ぎて、羽根ペンを燃やしてしまうから、アカデミーのレポートも苦労していました。とりあえず右手は耐熱性の手袋を付けた上から、包帯をグルグル巻きにして、ごまかしています。
「こっちです。付いて来てください」
「ところでこの薙ぎ払われた木々は、一体…」
「ああ、それは俺が…いえ、何でもないです」
盗賊団のアジトに着くと、真っ黒焦げに燃え尽きた紅い兄弟の遺体がいくつも転がっていました。
「これは!まるで第一級魔術師が戦った後のような惨状だな…」
「これで報酬はもらえるんですか?奴らみんな死んでますけど」
「これを誰がやったのかを、君は知っているのかい?」
「言っても信じないだろうけど、俺がやりました」
「き、君が?確か騎士科の生徒だったね。魔法科の生徒でもないのに魔法を使えるのか」
「俺じゃなくて、この右手に魔力が宿っているんです。自分ではコントロール出来なくて困ってるんだ…」
…つづく
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昔、知り合いが某少年漫画に持ち込みして、編集の人にこき下ろされまくった作者の原作の小説。復刻版の第10話です。