アークは前髪を手でくしゃくしゃに掻き毟りながら呻きました。
「感覚共有の呪いを僕にもかけてくれていたら良かったのに…。ナタは自分の痛みは使い魔にわからないようにしていたから、見つけるのが遅くなって、こんな事に…」
「きっと大丈夫よ?この薬の成分はかなり良い物を使っているわ!この病院、内装は汚いけど薬は良い物を使っているから…」
「そうか、内装が汚いので腕は確かなのか?と不安だったが、専門家のフラウ様がそう言うなら助かると信じたい…」
「内装にこだわって、薬は良くないものを大量に処方して儲けている病院もたくさんあるの。私にはわかってしまうから、そう言う病院には行かないようにしてる」
「あの医者からは黒いオーラは出ていなかったから、信頼しても大丈夫だと思うよ」
朝になってもナタの容態は回復せず、アークは苛立ちを抑えきれなくなりました。別の入院患者の診察をしている医者に怒鳴り散らします。
「先生!他の患者ばかり診ていてナタをほったらかしにしていませんか?ちゃんと診てください」
「病院内では静かにしなさい。私はやれるだけの事はやった。あとは本人次第だよ?他の患者の迷惑になるから出て行ってくれ!」
アークは病院から出て行ってしまったので、フラウは献身的な介護を続けています。アカデミーの上空までやって来たアークは、女子生徒の集団のそばに近付きました。
「昨日この学校で何があったのか調べている。調査に協力して欲しい」
「アーク様だわ!昨日学校で何か事件でもあったの?」
「これって騎士団の聞き込み調査ですかー?事情聴取受けるのって初めてー!」
「アーク様となら取調室で二人っきりになってあれこれ聞かれたい!」
「では全員、騎士団の取調室まで来てもらいましょうか?」
「行く行くー!授業もサボれるし、ラッキー」
アークが女子生徒たちを大勢引き連れて、アラヴェスタ城に隣接している騎士団の詰所に堂々と出勤しました。
「なんだあのギャルどもの群れは…」
「なんか知らんが昨日の事件の事情聴取をするそうだ」
そこへサニーの母親が顔面蒼白でやって来ました。下っ端の騎士団員が受付で応対をしています。
「む、娘が部屋で殺されていたんです!どうか犯人を見つけてください…」
「なんだって?若い娘が他殺体で見つかったとは…。大事件の予感がするぞ!」
「実況見分をするから現場に急行します」
「お願いします…。娘を殺した犯人を捕まえてください!」
…つづく
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本編のパラレルワールドをシナリオにしてみました。ストーリー第123話。