アラヴェスタで定時になるとアークはすぐに仕事を切り上げました。仕事は手早く片付けて残業などしません。
「お疲れ様です。お先に失礼します」
「お疲れさん!って、もういないし…。ルシファーはいつも定時で上がるなぁ」
「若くて可愛い新妻が待ってるからだろう?」
「あいつの嫁さんってまだ十六のピチピチギャルだろう?羨ましい…」
「夫婦仲はあまり上手く行ってないって噂も聞くけどなぁ」
「嫁さんの方も相当べっぴんさんだから、浮気でもされそうで気が気じゃないだろう?」
「無駄口叩いてないで、さっさと仕事終わらせて帰らねぇと…」
アークは城から出ると翼でマルヴェールまでひとっ飛びします。馬車で移動するより三倍は速く到着しました。フラウは執務室の姿見鏡の前で服装をチェックしているところでした。
「どこも変じゃないかしら…。デートなんて久しぶり」
執務室の窓をコンコンと叩かれました。黒尽くめのアークが窓の外にいるのが見えます。フラウは慌てて窓を開けました。
「玄関からだと守衛に止められるから面倒なのでこっちに来た。迎えに来るのが遅くなってすまない」
「いいえ。私も今、仕事が終わったところだからちょうどよかったわ」
アークはフラウを抱き上げると夜空に舞い上がりました。星がとても綺麗です。
「寒くなって日が短くなったな。まだ夕方なのにもう真っ暗だ。急がないと…」
フラウが小刻みに震えています。アークは上空でフラウを片手で抱き抱えたまま、片手で上着を脱ごうとしましたが、上手く脱げませんでした。フラウは落ちないように、しっかり抱きつきます。
「寒いのか?僕の上着を着ると良い」
「ここだと落っこちちゃうから、このままで良いわ…」
「震えが酷いようだが…」
「寒いからじゃないの…。緊張しちゃって…」
「予約してる店に行けば暖かくなる。少し飛ばすよ?」
リズと一緒に入った高級レストランにフラウを連れて行きました。フラウは黒い議員の正装を着ていたので、入口では止められずに通されます。
「素敵なお店ね。高いんじゃない?」
「今日はプライベートだから自腹だよ?」
…つづく
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本編のパラレルワールドをシナリオにしてみました。ストーリー第110話。