翌朝アークはアラヴェスタ城に出勤しました。
「昨日はなぜ来なかったんだ?お前が無断欠勤するなど、今まで一度もなかったからな。何かあったのではないかと心配したぞ?」
「申し訳ありません。緊急事態でしたので…」
「そうか、それならば仕方がない…」
「それはそうとサラ様に折り入ってお尋ねしたい事があるのですが、出来ればサラ様と二人だけでお話がしたいので、許可をお願いします」
「うむ、アークならサラに何かおかしな真似をするとは思えんし、構わんよ?」
煌びやかで美しいドレスを身に纏った王妃のサラを、アークは別室に案内しました。
「折り入ってお話とは何ですか?あなたがフォン様のお気に入りなのは知っていますが、またくだらない冗談を言ったら、フォン様に言い付けますよ?」
「あの冗談の事は忘れてください…。あの時サラ様はゲイザー様の恋人だったと仰ってましたよね?」
「はい、婚約していましたが、破談にされてしまったのです。元国王の横暴のせいで…」
「ゲイザー様は生前、どうやってサラ様のお心を射止めたのでしょうか?」
「そんな事を聞いてどうするのです?卑しい身分の私が王妃である事を快く思わない者の依頼であなたは動いているのかしら?ゲイザー様への私の想いをフォン様に報告して私と別れさせようと言う策ですか?」
「そのような卑劣な策に手を貸したりはしません…!私個人がゲイザー様の事を知りたくて、私がこの髪を黒く染めたのはゲイザー様へのリスペクトからですよ?」
「確かにあなたは見た目だけならゲイザー様によく似てるわ。でも中身が全然違います」
「中身もゲイザー様に似せたいのです。どうか生前のゲイザー様の事を教えてください。私はゲイザー様とあまり話した事がないので、その人となりを知る事ができなかったのが、口惜しいです」
「ゲイザー様は…私が過去に最も愛したお方でした。フォン様の妻になってもゲイザー様を忘れる日は、一日たりともありません」
「なぜそこまで…。フラウ様でさえ忘れかけていると言うのに」
「フラウ様も忘れてはおられないでしょう。あの人の目を見ればわかります。墓に花を手向けなくなったからと言って、忘れたとは限りません。私も今の身分では花を供えるのも一苦労ですから」
「確かに…。花屋へ気軽に花を買いに行けなくなりますし、護衛がなければ外出もままならない」
「私はフラウ様のように自分の身を守れるほど強くはないですからね。レジスタンスに見つかれば捕虜となる可能性が高いから外出は控えています」
…つづく
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本編のパラレルワールドをシナリオにしてみました。ストーリー第103話。