ナタが腕組みをしてアークの方を睨みつけながら、低い声で言います。

「アーク、今の話は聞き捨てならないわね？」

「ナターシャ様、あれは…リズが死ぬ前にキスをせがんできたので…可哀想になりまして…」

「ふーん、それでキスしたんだ？アークは…」

「思い残す事なく天界に旅立ってもらいたかったのです。悪気はありません…」

「悪気はなくても浮気は浮気よね？」

「浮気ではありません。私の愛は常にナターシャ様のものです」

「どうだか…。リズが殺されてブチギレモードになったんでしょ！それってアークが本当はリズの事を愛してたからじゃないの？」

「それはあり得ません！私はあの女は全く好みのタイプではなくて、フォン様の命令で嫌々口説いてたんですよ…。自腹まで切らされて良い迷惑でした」

「ママの悪口言うなよ！この悪魔め」

「ああ、頼むから子供は夫婦喧嘩に横槍を入れないでください！犬でも夫婦喧嘩の邪魔はしないものです」

「そうね、ジョルジュなら仲裁してくれそうだわ」

「ジョルジュはここでは飼えませんからね…」

「ジョルジュがいたら悩みを聞いてくれたんだけど…」

「私は犬語がわからないので、ジョルジュが何を言っているのかサッパリでしたが」

「超ワイルドでダンディーなの！大人っぽくて渋くてめっちゃカッコ良い声なんだよ？」

「あの容姿からは全く想像もつきませんね…」

「ジョルジュが人間なら結婚してるわー」

「うーむ、それは聞き捨てなりませんね」

…つづく