ナタはサルバドールを家に置いてアカデミーに行く事になりました。出席日数が足らなくて単位を落としてしまいそうだからです。出かける前にサルバドールに話しかけました。
「一人でお留守番できるかな?サルバドール」
サルバドールはまた筆談で答えます。
「いつもママを一人で待ってたから大丈夫…かぁ。シングルマザーだとそうなっちゃうよね」
サラサラと続きを書いて筆談します。
「僕はママと結婚したかったけど、お姉さんと結婚してあげても良いよ…ってそう言ってくれるのは嬉しいけど、私はアークと結婚してるから重複婚は無理だよ?」
サルバドールは少し怒った様子で筆談を続けます。
「ママもあのお兄さんに取られた。お姉さんもあのお兄さんのものだからムカつく…。アークに嫉妬してたんだね、サルバドールは。でも相手が悪いかも?アークに勝てる男は…おじさんくらいしかいないんじゃないかな?」
サルバドールが殴り書きします。
「ん?おじさんって言うのは勇者の事だよ。あなたのパパのテオドールが勇者を殺しちゃったの」
「嘘だ!僕のパパがそんな悪い事をするわけないよ?」
「なんだ、ちゃんと喋れるんじゃない?」
「パパは…パパは…すごく良い人だったって…ママが言ってた!」
「でもね、勇者のおじさんはもっと良い人だったの。私の一番大事な人だったのに…。死んじゃって、私…毎日泣いてたんだよ?」
「僕…ママの言う事しか知らなくて…そんな良い人をパパは殺したの?知らなかった…」
「人間って自分の都合の悪い事は言わないものだよ?一方的に誰かが悪いって罵ってる人は大抵、嘘つきだから信用しない方が良いと思う」
「ママが嘘つきだったの?僕、本当の事がわからなくなって来たよ…」
「嘘はついてないと思う。テオドールって人はおじさんの親友だったから、おじさんも信頼してたの。おじさんが親友だって言うくらいだから、本当に良い人だったとは思ってる。でも、おじさんの信頼を裏切ってしまったから、私も本当はテオドールが許せなかったの」
「お姉さんも僕のパパが嫌いなの?」
「今は別に恨んでないし、あなたがテオドールの息子でも嫌うつもりはないわ」
「僕、何も知らなかった…。本当の事…」
「もしアークが魔王だったとしても、ルシファーが暴れたりしたら、私が必ず止めてみせるからね?だから安心して良いよー」
「あのお兄さんはめちゃくちゃ強いんだ。僕、あのお兄さんがレジスタンスを皆殺しにするところを見てたんだけど、あんな奴に勝てる奴いるわけないよ!」
…つづく
Tweet |
|
|
0
|
0
|
追加するフォルダを選択
本編のパラレルワールドをシナリオにしてみました。ストーリー第72話。