二千年前、魔界の木こりの家でルシファーは娘のリリムと一緒に遊んでいました。暖炉にパチパチと焔が揺れている前で、人形の首に紐を括って吊るし、リリムがそれを揺らしています。
「プラーン、プラーン」
「ははは、リリム。それは何をして遊んでるんだい?」
「ママがさっきこうやって遊んでたのー」
「えっ?そう言えばママの姿が見えないね…」
「ママならあっちの小屋にいるよ?」
リリムが指差したのは木こりが木材を保管している小屋でした。ルシファーは人形を見てゾッとして、慌てて小屋に向かいました。ドアノブを握る手がガクガク震えています。恐る恐るドアを開けました。そこには愛する妻が人形と同じ姿で吊り下がっています。ルシファーは声にならない奇声を発して、無我夢中で妻の躯を下に降ろし、人工呼吸を施しました。しかし冷たくなった妻はピクリとも動きません。
「ラミア…なぜだ!どうして…自殺なんか…。僕の愛が…足りなかったのかい?」
亡くなったラミアのヘビの尻尾はズタズタに切り裂かれていました。ラミアの尻尾にはルシファーの強い魔力が込められていたので、その尻尾を狙ってラミアは幾度となく命を狙われていたのです。その哀れな姿を見て、ルシファーは決意を固めていました。
「君を傷つけた連中を僕は決して許さない!地獄の果てまで追いかけて皆殺しにしてやる…」
ルシファーは手始めに近所に住んでいる者たちを何名か手にかけました。首を締め上げられながら、ジタバタもがいています。
「ル、ルシファー様…!お優しいあなた様が…なぜ、こんな事を…?」
「お前たちはラミアをいじめていたのだろう?僕が知らないとでも思ったか!」
「私はラミアをいじめていません…」
「お前はいじめた者たちと仲良く一緒にいて、ラミアがいたぶられるところを見ていただけだろう?なぜ助けようとしなかった!」
「助けたりしたら、今度は私がいじめに遭います…。それが怖かったのです…」
「フン!いじめていなければ罪がないと思っていたのか?見ているだけで助けないのは一番重い罪だ」
ルシファーは命乞いをするその者から手を離しました。
「も、申し訳ありません!助けたいと言う気持ちはありましたが、私のような力の弱い者には無理なのです…」
「もういい…。ラミアはこんな事は望んでいなかった。いじめた奴らに手を出すな!と僕はラミアから釘を刺されていたのだ」
「お許しください!ルシファー様。どうか、どうか命だけは…」
「名前をリリスからラミアに改名しても、悪い噂を嗅ぎつけた奴らがやって来て無駄だった」
「近所の者はルシファー様を畏れて、ラミアには手を出せないと申しておりました」
「ではラミアを死に追い込んだのは、近所の者ではないと言うのか?」
「おそらくは…天界から来た者ではないかと。以前、ラミアを男たちに襲うように指示したのは、天界から来た者でしたから」
「天界から来た者が?くっ…!ミカエルの奴に事情を聞きに行ってくる…」
…つづく
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書き残してしまったことを書きたくて考えた本編の続き第131話です。