No.97554

恋姫†無双 真・北郷√特別絵巻01

flowenさん

恋姫†無双は、BaseSonの作品です。
この物語は私の真・北郷√の延長上のお話です。
インスパイア先の素晴らしい絵を描いた郁様をフロウウェンは応援しています。
絵師、郁様に許可は頂いておりますので、
どうぞ素晴らしい絵を見ながら私の駄文をどうぞ!

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2009-09-27 00:18:45 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:51574   閲覧ユーザー数:34150

 

恋姫†無双 真・北郷√特別絵巻01

 

 

 

もうひとつの『再会』

 

 

 

 暖かく穏やかな風が、桃の花を、ひらりひらりと舞い落とす。

 

 その幻想的な光景に佇む、二人の男女がいる。

 

 始まりの外史で愛し合い、終端の光に引き裂かれ、再び出会った、御遣いと覇王。

 

 穏やかな表情の優しき天の御遣い、北郷一刀。その瞳は慈愛に満ちていて、目の前の少女を大切なものを包むように腕の中へと迎え入れようと、

 

「おいで、華琳」

 

 短くただ一言。覇王、曹操の真名を呼ぶ。

 

 それは、少女にとって、最も嬉しい言葉。孤独な覇王が見つけた、心温まる場所。その腕の中では、彼女も、ただの女の子でいられるのだから。

 

「えへへ、ご主人様……私は、ずっと、あなたの側にいて良いのかしら?」

 

 白く輝く彼の胸元に、美しい少女は、顔を埋め、甘えるように問い掛ける。

 

「ああ、俺の側にいて欲しい……」

 

 一刀は答えながら、そっと、華琳の細腰に右手を添え、左の掌で、柔らかな金の髪を上から優しく梳かす。まるで壊れ物を扱うように……。

 

「……華琳が愛想を尽かすまで?」

 

 だが、嬉しい返事の後に続くのは、やはり、おどけた彼らしさに溢れていて……。

 

「……ばか」

 

 少女は嬉しさと照れで耳を赤くして、一刀の胸に額を擦り付けながら、そう呟き、熱くなった耳を目の前の広い胸に押し当てる。

 

トクントクン

 華琳の耳に一刀が生きている証が聞こえる。

 

ひらりひらり

 一刀の目に華琳の腕のリボンが、風に流れて舞っているように見える。

 

 桃色の花が舞う中、寄り添う二人は無言。互いの温もりを感じ、確かめ合う時が流れていく。

 

「……寒くない?」

 

 一刀が、肩を出した服装で風に当たる華琳の体を心配すれば、

 

「ええ、ここは……暖かいもの」

 

 華琳は視線を合わないまま、嬉しそうに一刀の体を引き寄せる。

 

 少女は想う。この場所に辿り着けて良かった。と……。本当に欲しかったもの。ずっとずっと居たかった場所。求めて止まなかった、寂しがり屋の女の子の大切な……。

 

「おかえり」

 

 その声が聞きたかった。その姿を見たかった。その腕に抱き締めていて欲しかった。ただ、一緒に居て欲しかった。世界でただ一人の愛しい人……。

 

「ただいまっ」

 

 だから少女は、とびきりの笑顔で……その居場所を抱き締める。

 

 

 

 これもまた、望まれた外史のひとつ。

 

 


 
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