ずっと、私のお腹にあなたが宿るのを待っていました。
何度も何度も遠い病院へ行って、
何度も何度もつらい思いをして、痛い思いをして。
それでも、きっとあなたがくると信じてました。
あなたが宿ったとわかったとき、
とってもとっても嬉しかった。
言葉で表せないほど嬉しかった。
パパなんて、ほんとうにほんとうに喜んで、
ママに「ありがとう!」って大きな声で言ってくれて、
ぎゅっと抱きしめてくれました。
「頑張るよ!」
って、
「バンザイ!」
って。
ママも、「ありがとう」って、パパとあなたに言いました。
「よく来てくれたね。」って、あなたに言いました。
あなたのいるお腹は、ほんわり温かいような気さえしてました。
まだ、形もないのに、どくんどくんと聞こえるような気さえしてました。
それから少し経った頃、
なんだかいつもと違って、あなたのいる辺りが冷たく硬く感じました。
怖くなって、とても怖くなって病院へ行くと、
先生が、あなたはもうママのお腹にはいないのだと、言いました。
形ができる前に、逝ってしまったのだ、と。
その言葉が何を意味するのか、最初はわかりませんでした。
先生のつらそうな顔を見ているうちに、
あなたがいなくなってしまったことがわかってきました。
あなたは、もうここにはいないってこと?
この世には生まれてこないということ?
パパとママは、あなたのパパとママになれないってこと?
何も考えられませんでした。
処置が終わって、
パパの運転する車でおうちに戻ってきて、
どれくらいの間、ここに座っていたのかわからない。
気がついたら、もう辺りは真っ暗でした。
ふと、ずっと止めていた煙草が吸いたくなって、ベランダに出ました。
あなたのパパになれなかったパパは、私を心配して、一緒について来てくれました。
2人で黙って煙草を吸いました。
久しぶりの煙草は、とてもきつかった。
自分のはきだした煙を見上げると、その煙の向こうに白い星が一つ光ってました。
私を慰めてくれるかのように、光ってました。
「あの子、あれ、あの子だよね。」
私が指さす方を見ると、
「うん。きっとそうだよ。」
と、パパも言いました。
「あの子、お星様になったんだね。」
と言うと、
「うん、そうだよ。ママのこと、ずっとあそこで見ててくれるよ。」
と、パパが言いました。
「悲しまないでって、言ってくれてるよね。」
「うん、そう言ってくれてる。」
言ってるうちに、涙が出てきて、声をあげて泣きました。
パパは私を抱きしめて、ママに負けないくらいの声で泣きました。
「今度は、生まれてきてくれるよね。」
「・・うん。きっと。」
2人であなたをしばらく見上げてました。
まだ風が冷たく感じる夜でした。
あなたの写真、一枚だけあるんだよ。
まだ卵のだけど。
大事にするよ。
一枚しかないから。
・・・生まれて来て欲しかった。
パパ、ママって呼んで欲しかった。
もっともっと沢山、あなたの写真が欲しかった。
もっともっと沢山、色んなことを一緒に見たかった。
もっともっと一緒にいたかった。
今度命として生まれ変わってくるときは、ちゃんとママの子供で生まれてきて。
待ってるからね。
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自身の経験からだけでなく、近しい方々からうかがったエピソードから、炎華が勝手に想像した『想い』です。