・・それが、貴方が冷たくなった理由だったんですね。
私は、そんなこと、考えもしなかったし、
思いつきもしなかった。
「貴方に他に好きな人がいた」、なんて。
貴方は、いつもとても優しかったのに、
急に怒りっぽくなって、
私といてもつまらなそうで。
休みも、私とは別の日にとって、
一人でどこかへ出掛けていく。
忙しいせいだと、休みさえ自由な日にとれないのだと、
貴方が言うから、
その言葉を疑いもせず、
寂しいと思うのは、私の我が儘で、
貴方といても、前ほど暖かくはないと思うのは、私の我が儘で、
忙しい貴方に、我が儘を言ってはいけないのだと、
ずっと我慢してきた。
いつだったか、
今日だけは、一緒に出掛けて欲しいと私が言ったとき、
「なんでだよ?一人で行けないのかよ。」
そんなこと、貴方に言われたことはなかったのに。
一緒に出掛けるのは久しぶりだったから、
貴方も「行こう。」と言ってくれると思ったのに。
車を出してくれても、ずっと黙ったままで、不機嫌な顔をしていた。
だけど、どんなに寝不足でも、
あの人の誘いには、ちゃんと起きて出掛けていく。
それも仕事の内だと、貴方が言うから、
疑いもしなかった。
あの人が、貴方の好きな人だったんですね。
なんで、わからなかったんだろう?
何度も何度も、見たのに。
何度も何度も、あの人と一緒のときの貴方の顔を。
なんで、気がつかなかったんだろう?
忙しい貴方を、少しでも休ませてあげようと、
寂しくても、我慢して、
冷たくされても、我慢して、
自分を、責めて、
苦しくて、
それでも、弱い自分が悪いのだと、
もっと強くなろうとしてた。
最後まで、
他人に教えられるまで、気がつかなかった。
貴方に好きな人がいる、ということに。
私がいなかったら、あの人は貴方を受け入れたのだろうか。
私がいなかったら、貴方はあの人と一緒に歩いていけたのだろうか。
私がいなかったら、こんな事にはならなかったのだろうか。
もっと早く気がついて、私から別れると言えばよかったんだろうか。
もっと疑って、貴方の気持ちに気がつくべきだったんだろうか。
そうすれば、こんな大事にならずにすんだんだろうか。
私ひとりが苦しめば、みんなが苦しむことはなかったんだろうか。
そうだとしても、私にそれができたのだろうか。
もしまた、同じ事が起きたら、私にそれができるのだろうか。
貴方が急に冷たくなったのも、
怒りっぽくなったのも、
私との約束を破るようになったのも、
貴方に好きな人が、いた。
それが、全ての理由だった。
私の罪は、それに気がつかなかったこと。
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自身の経験だけでなく、近しい方々からうかがったエピソードから、炎華が勝手にその心情を想像して書いたものです。
なので、フィクションとも言えますし、ノンフィクションとも言える作品です。