No.970200

yurigame!12_rin_kou3

初音軍さん

りんコウのつもりがコウりんな感じですが。りんコウは日常の方ということで一つ(何)

2018-10-13 16:50:51 投稿 / 全5ページ    総閲覧数:830   閲覧ユーザー数:830

Yurigame!12_rin_kou3

 

【りん】

 

 コウちゃんが向こうへ行ってからSNSで報告やら近況などを話し合っていた。

もちろん…それ以外のプライベートなことも。

 

「コウちゃん。こんど休み取ってそっちに仕事のことを含めて様子を見に行くからね」

 

 場所が場所だから時差のことも考えて私は送信したのを確認してから仕事に戻った。

返ってきたのは翌日の夜、自宅に帰ってきた頃。いつもより遅くて心配になったけど

いつものような返事と写真を添付して送られてきた。楽しそうにしている姿を見て

ホッとする。

 

 それにしてもいつもコウちゃんの傍にやたらくっついてるカトリーヌさんが

気になってしかたないんだけど…。

 

 そんな複雑な感情の中、タイミング悪くテレビの内容は遠距離恋愛の難しさと

その理由でいくつもの別れたカップルの話題を取り上げていた。

 

 ピッ

 

 私はテレビを見ていられなくて不安な気持ちでコウちゃんの笑顔を見つめる。

コウちゃんは私のこと思ってくれてるよね…。信じてるけど、どこか不安が残る。

切り替えようと思っていても今一人きりでいる私には簡単にはできなかった。

 

***

 

 あっという間にその日が来てしまった。コウちゃんの様子を見にフランスへ向かう私。

向こうに着いたら空港で待っていると約束した数分前にコウちゃんが慌ててこっちに

向かってきた。

 

「ごめん、遅れた?」

「ううん、まだ数分前」

 

 前と変わらない様子を見て私は小さく笑っていた。いつものコウちゃんを見て

安心したからだろうか。

 

 コウちゃんはご飯抜いてきたと笑いながら言っていたからコウちゃんの好きなお店に

入ろうと言ったら以前ハマっていたのとはまた別のラーメン屋さんに入って

美味しそうに食べていた。

 

「またラーメンなの…」

「美味しいじゃん?」

 

「まぁ、美味しいけど…」

 

 来るたびにラーメンだと三食ともラーメンなんじゃないかと体の心配をしてしまう。

嬉しそうにラーメンを啜ってるコウちゃんの横顔を見てると私の視線に気づいた

コウちゃんが私の方に向くと苦笑いをしながら言った。

 

「いくら私でも三食全部ラーメンってことはないよ!?」

「え、私何も言ってないけど…」

 

「りんのことだからそう思ってそうだったからさぁ。呆れてる顔してたし」

 

 たまに言わなくても通じることがあって、そういうのって何だか嬉しい。

でも本当に大事なことは言葉や行動で表してくれないと不安になっちゃうけど。

 

 ラーメンを美味しくいただいた後は仕事や家でのことを話をしながら

恋人繋ぎをしながら散歩をする。

 その途中、何かを思い出したかのようにコウちゃんが私に聞いてきた。

 

「そうだ、りん。明日時間空いてるかな?」

「え、うん…。大丈夫だけど」

 

「そっか、よかった」

「え、え? 何なの?」

 

「何でもなーい。ちょっとした秘密だよ」

「え~、気になるじゃない」

 

 何度聞いても教えてくれないまま時間は過ぎていった。夜になって明日の仕事に

響くと困るからとコウちゃんは私をホテルまで送っていった後にその日はそのまま別れた。

それにしても何かしら隠しごとをしているのが気になる。

 

 …恋人の私にも言えないことなのかしら…。信じていないわけではないけど

私の中でちょっとモヤッとしていた。

 

***

 

【コウ】

 

 数日前、りんから来たメッセージを見てから。

ふと頭に浮かんだことをリビングで寛いでるカトリーヌさんに聞いてみた。

 

『カトリーヌさん、ちょっと相談したいことが…』

『なんだい、コウ?』

 

『ちょっとプライベートなことなんですが…』

 

 りんに内緒でちょっと用意したいことがあって。いつもの思いつきではあるんだけど。

いつかはりんに伝えたいことだったから…。そのことを他に聞こえないように

耳元で話すとカトリーヌさんは笑みを浮かべて言った。

 

『ふふ、それは面白そうだね。僕に任せてくれ』

 

 普段、変わった人だと思うけど。そういう所以外はけっこう頼りになる。

そしてその話の後、仕事の話になってダメな部分を色々指摘された。

頼みを叶える代わりか、明日からの仕事の質を更に上げないといけなくなった。

大変だけどやりがいはあるが、日本と違って仕事の時間以外に取り組めないのは

なかなか骨が折れる…。

 

『できるかい、コウ』

『えぇ、もちろんやりますよ』

 

 多少の無茶振り感はあるけど、できないことをさせようとする人ではないから。

私は安心して仕事に打ち込める。

 

 そして私が仕事に没頭している間にカトリーヌさんは私が持ち掛けた話を

こなしてきて、りんが来る翌日に予定して計画の全てを私に見せてきた。

 

『コウ。これでどうだい?』

『おお、すごい…』

 

『コウにこれだけ想われるなんて…彼女は幸せ者だね』

『あはは…むしろ私が幸せ者ですよ』

 

 入ったばかりの頃から私のことを見ていてくれたりんのことを思い出しながら

渡されたものを見ていると。

 

『ふふっ』

『何ですか?』

 

『いや、君が彼女のことを想ってる顔が可愛いと思ってね。他の誰にも見せない、

良い表情をしてるよ』

『からかわないでくださいよ』

 

『からかってなんていないさ。素敵なことだと思うよ』

 

 そう、そしてその日に来たりんに私は告げた。りんと別れて一人になった私は

明日のことを考えていたら思ったより緊張しているのか心臓の音がうるさいくらいに

聞こえていた。

 

***

 

【りん】

 

 コウちゃんと待ち合わせした場所で待っていると昨日のように少し焦ったように

走ってくるコウちゃんの姿があった。

 

「ごめんごめん」

「そんなに慌てなくても今来たばかりだから大丈夫よ」

 

 私の顔を見ると穏やかに笑うコウちゃん。これから向かう場所は少し遠いらしく

タクシーを利用して目的の場所へと移動した。

 

 目的地に着いて車から降りた私はびっくりして見上げる。大きさに驚いたわけではなく

場所が教会風の結婚式場だった。

 大きさは少し小さいけれどおしゃれで綺麗な所だと思った。

 

「さぁさぁ、中に入ろう」

 

 コウちゃんは私の手を握ってどんどんと中へと入っていく。

私はこういう場所が慣れていないからか緊張していた。

コウちゃんの手を握っていると少しは安心するけど、やはり落ち着けない。

 

 ここに何しに来たのかと思ったけれどコウちゃんの連れてきた先でコウちゃんから

告げられた言葉に私は驚いた。

 

「今日はここで二人きりの結婚式をしよう」

「ええ!?」

 

 いきなり何を言い出すのかと思ったら。でもコウちゃんの目は本気でとても

冗談だとは思えなかった。

 

「いつも不安そうにしているりんに私の…その…愛…を感じてもらうためにね…!」

「コウちゃん……!」

 

 恥ずかしい言葉を顔真っ赤にしながら私に言う姿が可愛くて私もつられて熱くなる。

そして連れてこられた所はウェディングドレスが数種類あってメイクをしてくれる人も

部屋で待っていた。

 

「もう…りんを寂しくさせたりしないよ…」

「ありがとう…」

 

 もう既に涙目になりそうだったのを拭いて誤魔化すとコウちゃんとどれを着るか

楽しく話をしながら決めて、お化粧をして…ゆっくりとその場所へ向かった。

テレビや雑誌等で見かける結婚する二人がお互いに誓いを立てるあの場所に。

 

 そして急いでいたからか、神父様もいない中で。

お互いを見つめあいながら、二人でゆっくりとうろ覚えの誓いを立て、そしてキスをした。

本格的なものではないけれど、それでも綺麗なドレス姿をしたコウちゃんとこうして

一緒になれる時間が愛おしくてたまらなかった。

 

「綺麗だよ…りん…」

「もう…コウちゃん…」

 

「ほんとだって…」

「それならコウちゃんだって…」

 

 誰にも聞こえないような小さな声を漏らして私はコウちゃんの体に頭をすり寄せた。

そんな私をコウちゃんは優しく抱き寄せて包み込んでくれる。

 

 どれくらい時間が経ったかわからないくらい二人の世界に浸り、気づいたら外が暗く

なりはじめていた。名残惜しいけれど、そろそろ戻らないと。

 

 私は笑顔を作ってコウちゃんにそう言って離れると、一瞬だけ私の手を強く握り。

 

「今度は日本で…ちゃんとした式を挙げよう」

「コウちゃん…。うん…」

 

 そういえばだいぶ前に女性同士で結婚式を行っていた記事があった。

当時、コウちゃんとそれを見た時はそんなに強く意識していなかったけれど。

今は…。

 

「うん…。そうね…」

「もう…泣くなよ、りん…」

 

「しょうがないじゃない…。嬉しいんだから…」

 

 声に出さずに涙だけあふれ出る。いつ止まるかわからないその涙が止まるまで

コウちゃんは優しく私を抱きしめてくれていた。

 

***

 

「おかえりなさい!どうでした、フランスは!」

 

 日本に帰ってきてから翌日。私が向こうへ行っていたことを知っていたキャラ班では

青葉ちゃんがきらきらと綺麗な目をしながら真っ先に聞きにきて私は言葉を詰まらせた。

 

 まさか二人だけの結婚式をしていたとは言いにくい。なので、仕事の様子をまとめて

みんなに伝えると。みんな楽しそうにどんなゲームになるのかという話をしていた。

 

「こら、休憩はいいけど。ちゃんと仕事もしなさい」

「はーい」

 

 まるで子供のような返事が来て私は思わず笑ってしまった。

式のことを話してもこの子たちは祝福してくれるだろうけれど、まだ私の中だけで

余韻を味わいたかった。

 

 今度、日本でする時にはちゃんとみんなには言おうと私はこのことを胸の中にしまい、

いつもの仕事へと戻るのだった。今度は不安になることはない。

 

 コウちゃんのあの表情と言葉が私を支えてくれるだろう。

私が歩いているとスマホの着信音が鳴り見てみると、コウちゃんから送られてきていて。

中を見た私は暖かい気持ちに包まれて自然と笑顔になっていた。

 

 私に向けた、私へだけの言葉。これこそ誰にも教えられない。

 

 本当に、貴女を好きになって良かった。

 

お終い


 
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