No.967419

英雄伝説~灰の軌跡~ 閃Ⅲ篇

soranoさん

外伝~クロスベル双皇帝の宣戦布告~

2018-09-16 23:37:03 投稿 / 全2ページ    総閲覧数:1385   閲覧ユーザー数:1279

 

~星見の塔・屋上~

 

「し、信じられん……!あの”劫焔”が………!」

「まさか互角どころか、一方的な戦い(ワンサイドゲーム)でかの”劫焔”が滅されるとは………」

「そ、それにオルディーネが………!」

「………………あそこまで徹底的に破壊されたら、もはやオルディーネを直すことは不可能でしょうね……」

「……ええ。特に騎神の心臓部分であり、意志の部分でもある核(ケルン)があそこまで破壊されてしまえば、例え元の姿に直せたとしても2度と動くことはない――――つまり、”蒼の騎神”は真の意味で”死”を迎えたということよ。」

「姉さん………」

ヴァイス達の戦いが終わるとマキアスとシャロン、アリサは信じられない表情をし、複雑そうな表情で語ったセリーヌの言葉に続くように静かな表情でオルディーネの”死”を宣言したクロチルダの言葉を聞いたエマは複雑そうな表情を浮かべ

「――――これで、結社の残党は相当戦力が低下した事になりますね。」

「ええ、結社は”結社最強”の異名を持つ使い手達はこの戦いによって、完全に失った事になるのですから。」

「ハハ、あの火焔魔人殿をあっさり滅するなんて、さすがはセリカさんだね……」

「それにセリカさんという方と一緒に戦っていたロカさんという方も凄いですわ……女性の身でありながら、あのような凄まじい相手を圧倒するなんて……」

「まあ、ロカ様は何と言っても”神格者”――――それも、武闘派揃いの軍神(マーズテリア)教の”神格者”ですもの……」

セシリアとサフィナは冷静な様子で今後の分析をし、オリビエはセリカの圧倒的な強さに苦笑し、目を丸くして呟いたアルフィンの言葉にエリゼは苦笑しながら答えた。

「うふふ、セリカお兄さんたちのお陰で結社の残党で残っている厄介な戦力だった”劫焔”に加えて”何故か蘇った蒼の騎神”もここで退場してくれたわね♪」

「はい。ただ問題はヴァイスハイト皇帝陛下たちがあの仮面の男―――――”蒼のジークフリート”に対してどのような処遇をするかですね。」

「アリサさん達がまた悲しむような事にならないとよいのですが………」

意味ありげな笑みを浮かべたレンの言葉に頷いたリィンは複雑そうな表情を浮かべて心配そうな表情をしているセレーネと共に満身創痍の状態のジークフリートに視線を向けた。

「ま、まさかリセル教官があんな滅茶苦茶強かったなんて……それに、ヴァイスハイト皇帝陛下達―――――”六銃士”も結社の執行者や”騎神”みたいなあんなとんでもない存在を圧倒できるくらいとんでもない強さだなんて……”六銃士”が滅茶苦茶強い話は聞いていたけど、あんなとんでもない強さだなんて夢にも思わなかったわ………」

「まさにわたし達と同じ”人”とは思えない”化物”っぷりですね。」

「あれが”六銃士”の……”風の剣聖”―――――八葉一等流の”皆伝”の………そして”双界最強の剣士”の”力”…………ハハ、あんな”人”を超えた使い手達の戦いを間近で見れるなんてとても貴重な体験だったな…………」

一方信じられない表情をしたユウナの言葉に続くようにアルティナは疲れた表情で答え、クルトは呆けた後嬉しそうな表情をし

「クク……おい、白髪(しらが)魔女。まさかこうなることもテメェの”予知能力”とやらでわかっていたのか?」

「……………ヴァイスハイト皇帝達が戦い始めたあたりから、”この結果になる未来は視えていた”わ。」

「うふふ、さすがはゲルドさんですわね♪リーゼアリア先輩も、いっそゲルドさんの予知能力で愛しのリィン教官と将来結ばれる事を占ってみてもらってはどうでしょうか♪」

「もう、ミュゼったら………そんなあからさまな手には乗らないわよ。」

不敵な笑みを浮かべたアッシュの問いかけに静かな表情で答えたゲルドの説明を聞いたミューズはからかいの表情を浮かべてリーゼアリアに視線を向け、視線を向けられたリーゼアリアは呆れた表情で溜息を吐いた。

 

「………………ぐっ……………」

「いたた…………4人がかりで本気で殺しに来るなんて、噂以上に容赦無さすぎだよ、”六銃士”は…………って、それよりも”蒼”とマクバーンは――――――え。」

ルイーネ達との戦いでオルディーネを失ったジークフリートは地面に跪いてうめき声をあげ、カンパネルラは何とか立ち上がった後急いで周囲を見回したが、ルイーネ達との戦いで無残な姿となったオルディーネやマクバーンが見当たらず、マクバーンと戦っていたセリカとロカが無事の様子である事に気づくと呆けた声を出し

「!!馬鹿な………生身でオルディーネ――――騎神をここまで破壊するとは………」

「うふふ、貴方にとってご自慢の”オルディーネ”とやらは見ての通りよ♪」

「騎神を生身で撃破する方法等、騎神(ヴァリマール)を所有しているリィンがメンフィルに所属しているのですから、メンフィルやリィンの協力を得て既に研究済みです。」

「ま、あんな鉄屑、対処方法がなくてもあたし達ならガラクタにできたけどね!」

(これがクロスベルをイアン先生達とは違うやり方で独立させる所か”覇道”へと歩ませた”英雄”達の”力”、か…………)

オルディーネの成れの果てに気づいて呆然とした様子でいるジークフリートにルイーネは微笑み、エルミナは冷静な様子で答え、パティルナは勝ち誇った笑みを浮かべ、アリオスは静かな笑みを浮かべてヴァイス達――――”六銃士”を見守り

「フハハハハハ!わらわ達の力、思い知ったか!わらわ達からすれば、騎神とやらもただの図体のでかい鉄屑じゃ!」

「わたしたちの……勝ち………ブイ………」

「ま、あれなら”はぐれ魔神”の方がよっぽど手強かったわね。」

レシェンテは胸を張って勝ち誇り、ナベリウスは静かな笑みを浮かべて片手の指で勝利のピースサインをし、マリーニャは苦笑しながら答えた。

「――――ご無事ですか、ご主人様、ロカ様!」

「サリア達、勝ちました~!」

一方セリカ達の身を心配したシュリはサリアと共にセリカ達に駆け寄り

「ああ、奴(マクバーン)についてはリウイから予め聞いていたお陰もあって、特に苦戦することもなく無傷で滅した。」

「そちらも問題なく”騎神”とやらを撃破できたみたいね。」

シュリの心配に対してセリカは静かな表情で答え、ロカは微笑みを浮かべてシュリ達を見つめた。

 

「全く………セリカ達を援軍によこすんだったら、最初から寄こしなさいよね。お陰で、ノイアスクラスの厄介な”魔人”と戦う羽目になったじゃない………」

「フフッ、すみません。過去の経緯からエルファティシア様達にセリカ様達が加勢している事を知った結社の残党が撤退する可能性も考えられましたので、セリカ様達の加勢はギリギリまで伏せて置きたかったのです。」

「昔はノイアスにも果敢に戦っていましたけど、今ではそんなことを言うなんて、もしかして年ですか?」

「ちょっと、アル~?私はまだ………え~と、何百歳か忘れたけど、まだ年寄り扱いされる程衰えていないわよ!」

無事な様子のセリカ達がいて、マクバーンが見当たらない事からマクバーンが滅せられた事を悟ったエルファティシアは呆れた表情でリセルとアルに文句を言い、文句を言われたリセルは苦笑しながら答え、アルは口元に笑みを浮かべてエルファティシアをからかい、アルのからかいに対してエルファティシアはジト目で反論し、エルファティシアの口から出たとんでもない事実にアリサたちは冷や汗をかいて表情を引き攣らせた。

「な、”何百歳か忘れた”って………」

「フフ、それでいてあの若々しいお姿。異種族の方々は相変わらず年齢とは釣り合わない容姿をしていらっしゃいますわね♪」

「あの口ぶりだとあのエルフ、ひょっとしたらロゼよりも年寄りなんじゃないかしら?」

「セ、セリーヌ!エルファティシア皇妃陛下にもそうだけど、婆様にも失礼よ!」

「君達も何気にとんでもない事実をさりげなく口にしないでくれ……」

我に返ったアリサはジト目でエルファティシアを見つめ、シャロンはからかいの表情を浮かべ、アリサと共にジト目でエルファティシアを見つめて呟いたセリーヌの推測を聞いたエマは慌てた様子で指摘し、二人の会話を聞いたマキアスは疲れた表情で溜息を吐いた。

「ハッハッハッ!エルファティシアが今でも若々しい事は、エルファティシアの素晴らしい身体を数えきれないくらい味わっているこの俺が一番良くわかっている。だからエルファティシアを年寄り扱いしてやるなよ、アル。」

「ちょっと、ヴァイスハイト!?みんなのいる前で、そんな恥ずかしい事を言わないでよ!」

「ヴァイス様……少しは場所を考えて発言してください………」

「ギュランドロス様がクロスベル一のバカだとすれば、ヴァイスハイトはクロスベル一の恥さらしです………」

声を上げて笑った後に答えたヴァイスの発言にその場にいる全員が冷や汗をかいて表情を引き攣らせている中エルファティシアは顔を赤らめて文句を言い、リセルとエルミナはそれぞれ呆れた表情で呟き

「こんな所であのような発言をするなんて、不埒過ぎます。」

「ううっ、あのエロ皇帝を見直したあたしがバカだったわ………」

アルティナはジト目で呟き、ユウナは疲れた表情で溜息を吐いた。

「クク、おしゃべりはそこまでにしておけ。まだ肝心な事が残っているぜ?」

「そうだな…………」

そして不敵な笑みを浮かべたギュランドロスの指摘に頷いたヴァイスは表情を引き締めてカンパネルラとジークフリートへと視線を向け

「さてと。――――クロスベルに手を出せば、かつての”鉄血宰相”の二の舞になることを身をもって思い知っただろう、結社に地精共。」

「ああ、まさに言葉通り身をもって思い知らされたよ………まさかマクバーンが滅されるなんて、完全に想定外だよ……だから、”嵐の剣神”に挑むなってあれ程言ったのに………」

「クク、ご自慢の”騎神”が同じ騎神どころか、生身のルイーネ達にぶっ壊されて、何か感想はないのか、そこの仮面野郎?」

「………………」

ヴァイスの問いかけにカンパネルラが疲れた表情で答えている中、ジークフリートはギュランドロスの問いかけに対して何も答えなかったが内心悔しさを感じているのか、それぞれ銃を持っている手を僅かに震わせていた。

 

「――――さてと。本来ならクロスベルで”特大のヤンチャ”をした貴方達は”劫焔”の後を追わすべきなのだけど………」

「ご、”劫焔の後を追わすべき”って、まさか……!?」

「………ヴァイスハイト陛下達がその気になれば、満身創痍のあの二人に”止め”を刺す事も容易いでしょうね。」

「そ、そんな……!?」

「ま、待ってください……!二人には私達も聞きたいが事がたくさんありますし、二人は陛下達にとっても有用な情報を持っていると思われますから、そんな簡単に命を奪わないでください……!」

「皆さん………」

「………………」

「…………アンタは”六銃士”の連中にあの二人の命乞いをしなくていいのかしら?”道化師”もそうだけど、あの仮面男もアンタにとっては他人事じゃないないでしょう?」

「あら、カンパネルラを滅してくれるのだったら、私としてはありがたいわよ?さっきも説明したように今の私は結社から離れて、むしろ追われている側なのだから。それと”蒼のジークフリード”、だったかしら。確かに彼は私にとっても興味がある人物ではあるけど、今の私にとってはそれよりも興味がある人物がいるのよねぇ。」

ルイーネが呟いた言葉を聞いてヴァイス達がカンパネルラと共にジークフリートを殺そうとしている事を察したマキアスは表情を青褪めさせ、重々しい様子を纏って呟いたシャロンの言葉を聞いたアリサは悲痛そうな表情でジークフリートを見つめ、エマはヴァイス達に嘆願をし、アリサ達の様子を見たアルフィンは辛そうな表情をし、オリビエは重々しい様子を纏って黙り込み、セリーヌに話を振られたクロチルダは意外そうな表情で答えた後怪しげな笑みを浮かべてセリカに視線を向け

「………俺に何の用だ。」

クロチルダの視線に気づいたセリカ警戒の表情でクロチルダに問いかけ

「フフ……セリカ、だったかしら?あのマクバーンどころか、アリアンロードすらも足元にも及ばず、そして私どころか、私やエマ―――――魔女の眷属(ヘクセンブリード)の”長”を遥かに超える霊力(マナ)の持ち主である異世界の魔剣士…………私のものになってくれるのなら、貴方の知りたいことは何でも話してあげるし、私の”全て”を貴方にあげてもいいわよ?勿論、貴方の周りにいる貴方を慕っている女性達との関係も許容するわ。」

「ね、姉さん!?」

「アンタ……本気?」

「な、なななななななっ!?」

「まあ……」

「ほほう……?」

「うふふ、中々大胆な告白ね♪でも確か深淵のお姉さんはレーヴェにご執心だったらしいけど、そんな告白をするということはレーヴェからセリカお兄さんに乗り換えるつもりなのかしら♪」

クロチルダのセリカへの告白同然の言葉にエマは驚き、セリーヌは困惑し、マキアスは混乱し、シャロンは目を丸くし、オリビエは興味ありげな表情を浮かべて状況を見守り、レンは小悪魔な笑みを浮かべてクロチルダに問いかけた。

 

「ええ、レオンも捨てがたいけど、貴女も知っているようにレオンには既に想い人がいるから、かつてレオンを心から想っていた女として潔く身を引いて、新たな恋に挑むつもりよ。」

「やれやれ、あれほど熱を上げていたレーヴェよりも魅力的な男性が現れると、そっちに目移りするなんて、結社を離れてもそういう所も相変わらずだねぇ。というか”嵐の剣神”は貴女が忠誠を誓っていた”盟主”を討った人物――――つまり貴女にとっての”仇”の一人だけど、そこの所はどう考えている訳さ?」

クロチルダの答えを聞いたカンパネルラは苦笑した後口元に笑みを浮かべて指摘し

「あら、敵討ちなんて私の柄じゃないし、そんな下らない事に拘るよりもあの盟主(マスター)を討つ程のとてつもない男をものにする方が魅力的でしょう?」

「うわ~…………まさに”魔女”ね。」

「何だかルイーネやフェルアノがもう一人増えたみたいに感じますね。」

「フフ、アルちゃんったら、失礼ね。私はギュランドロス様、フェルアノさんはヴァイスさん一筋よ?」

「アルちゃんはそういう意味で言った訳ではないと思いますよ………」

「まあ、実際アルの言う通り腹黒い事に関しては同じだよね~♪」

「……パティ、貴女も時と場所を考えて発言しなさい。」

クロチルダの答えを聞いたエルファティシアはジト目でクロチルダを見つめ、アルの感想を聞いて微笑みを浮かべて反論したルイーネにリセルは疲れた表情で指摘し、口元に笑みを浮かべたパティルナの言葉を聞いたエルミナは静かな表情で注意した。

「セリカは誰の”もの”にはならないし、そもそもセリカには心から愛する女性がいるわ。」

「貴女……セリカ………選ぶ資格……ない………むしろ………セリカ……選ばれる資格……取るため……努力……必要………」

(フン、この我を差し置いてセリカを”もの”にする等1億年早いわ、小娘が!セリカ、ああいう輩はしつこいのが相場だから、この場でハッキリと断れだの!)

「(いわれなくてもそのつもりだ。)―――――断る。お前のような腹に一物を抱えた魔女は碌な女でないことは過去の経験からよくわかっているし、そもそも魔女もそうだが魔術師という存在は自身の欲望の為ならば、どのような外道を犯すことも躊躇わない者が多い事はわかり切っている。いつ寝首をかくかわからない女等、願い下げだ。」

一方ロカはクロチルダを睨み、ナベリウスは静かな表情で呟き、不愉快そうな表情で鼻を逸らしたハイシェラの念話に頷いたセリカはクロチルダを睨んで断りの答えを口にし、セリカの口から出た断りの理由を聞いたその場にいる多くの者達は冷や汗をかいて表情を引き攣らせた。

「ア、アハハ………(ご主人様の話に出てきた”腹に一物を抱えた魔女”は間違いなくウェンディスさんの事でしょうね……)」

「へえ?中々人を見る目があるわね。まさにアンタの推測通り、その女は碌な女じゃないわよ。」

「セ、セリーヌ。」

シュリは苦笑しながらある人物を思い浮かべ、納得した様子で頷いているセリーヌの言葉を聞いたエマは冷や汗をかき

「まあ~、実際あたし達が今まで会った魔術師や魔女って、碌な奴じゃない人達ばかりでしたものね~。」

「うむ。ブレアードにアビルース、ラプシィア、そしてウェンディス………どの魔術師や魔女も碌な連中ではなかったな!」

「ふえ~?でも、ウェンディスさんは、ご主人様やサリア達を手伝ってくれましたよ~?」

マリーニャもシュリのように苦笑しながら今まで出会ったある人物たちを思い浮かべ、レシェンテが納得した様子で頷いている中サリアは不思議そうな表情で首を傾げた。

 

「フフ、つれないわね。でも、そういう所もレオンと似ていて、増々貴方のことが気に入ったわ♪」

「やれやれ、”蛇の使徒”すらも惹きつけるとはさすがはセリカと言うべきか。――――さてと。話を戻させてもらうが、結社に地精。本来ならここで纏めて討ってやってもいいが、”今回は”そこの”神機”を代償に勘弁してやろう。」

「へ―――――って、『そこの神機を代償に勘弁してやろう』って、まさか……!?」

躊躇うことなく断られたにも関わらず未だセリカに興味を持ち続けているクロチルダの意志を知ったヴァイスは苦笑した後不敵な笑みを浮かべてカンパネルラとジークフリートを見つめ、ヴァイスの答えを聞いてあることに気づいたユウナは信じられない表情をし

「クク、当然そこのガラクタもオレサマ達の国の新たな戦力に組み込むに決まっているじゃねぇか!」

「1年半前の動乱時と今回のヴァリマール達との戦いで見せたスペックを考えれば、我が軍にとって十分戦力になります。むろん、元々結社によって作られた人形兵器ですから改良は必須ですが、幸いにも今のクロスベルにはそこの神機の改良を任せられる者がいますから、何の問題はありません。」

(お兄様、エルミナ皇妃陛下が仰っている”神機”の改良ができる人物は………)

(恐らく”ローゼンベルク工房”のヨルグさんに依頼するつもりなんだろうな……)

ユウナの疑問に対してギュランドロスは不敵な笑みを浮かべて答え、エルミナの説明を聞いてあることに気づいたセレーネはリィンと小声で会話をしていた。

「………………」

「…………神機をクロスベルの戦力に組み込む、ですか。」

「確かにあのような存在を戦力に組み込めば、間違いなくクロスベルが持つ”力”は上がるだろうな………」

「実際かつてあの神機はクロスベルを占領しようとした旧共和国軍を一機で壊滅に追いやったことがありますから、あの神機一機で最低でもエレボニアの機甲師団一つに相当するかと。」

ヴァイス達が神機を奪ってクロスベルの戦力にすることを知ったユウナは驚きのあまり口をパクパクさせ、ミューズは真剣な表情で呟き、クルトは重々しい様子を纏って推測を口にし、アルティナは冷静に分析していた。

「なるほどね………確かにあの人なら、その”神機”の改良もできるだろうね………その”神機”は”実験”が終われば元々処分するつもりで奪われた所で今後の計画の支障にはならないから、そちらの好きにしてもらっても構わないけど、どうして結社(僕達)と敵対している地精の彼までその”神機”と引き換えに見逃してくれるんだい?」

一方カンパネルラは冷静な様子である人物を思い浮かべながらつぶやいた後、一瞬ジークフリートに視線を向けてからヴァイス達にある疑問を問いかけた。

「クク、決まっているじゃねぇか。テメェ等は結社と地精に対する”伝言役”として、わざと生かしてやったんだよ。」

「何………?」

「へえ?君達は僕たちに何を伝えるつもりなのかな?」

ギュランドロスの答えを聞いたジークフリートが困惑している中、カンパネルラは興味ありげな様子で問いかけた。

 

「――――結社に地精、それぞれの関係者共に伝えておけ。貴様等の愚かで下らん計画に俺達クロスベルを巻き込んだ以上、貴様等はクロスベルに仇名す”敵”と認定して貴様等結社と地精、そしてその関係組織を纏めて徹底的に叩き潰す!」

「オレサマ達の国に手を出した以上、タダですむと思うなよ………テメェ等の計画は叩き潰して、全員纏めて、オレサマ達がブッ殺す!これは俺達”六銃士”のテメェ等に対する”宣戦布告”だ!」

「な――――――」

「け、結社と地精に対する”宣戦布告”って………!」

「クク……ハハ………ハハハハハハッ!噂以上に相当イカれた連中だな、”六銃士”は!」

「フフ、”彼ら”からの話に聞いていた通りまさに大胆不敵な方々ですわね。」

「む、無謀ではないかしら……?あんなとてつもない存在を所有している組織を同時に相手にしなければならないのだし………」

「………………”六銃士”の場合はその普通に考えれば”無謀”と思えるような出来事―――――自治州であったクロスベルを帝国化するという出来事を実現しましたから、本当にやりかねないかと。」

「フフ、クロスベルの人達は幸せね。あんなにも民思いの王様が二人もいるのだから。」

ヴァイスとギュランドロスはそれぞれの武装をカンパネルラとジークフリートに突き付けて”宣戦布告”をし、二人の”宣戦布告”にクルトは驚きのあまり絶句し、ユウナは信じられない表情をし、アッシュとミューズは興味ありげな様子でヴァイス達を見つめ、不安そうな表情で呟いたリーゼアリアの言葉にアルティナは静かな表情で指摘し、ゲルドは微笑みながらヴァイス達を見つめた。

 

「……………」

一方ヴァイスとギュランドロスの宣言にカンパネルラは呆けた様子で黙り込んだが

「――――アハハハハハハッ!まさか、僕達結社が一国家に堂々と”宣戦布告”をされるなんてね。僕達にとってもそうだけど、地精(そっち)にとっても初めての出来事じゃないかい?」

「………ああ。フッ、まさかこのような想定外(イレギュラー)まで起こるとは、”長”も想定していなかっただろうな。」

やがて声を上げて笑い始め、カンパネルラに話を振られたジークフリートは同意した後口元に笑みを浮かべた。

「フフ、いいだろう。君達クロスベル―――いや、メンフィル・クロスベル連合かな?君達の”宣戦布告”、結社”身喰らう蛇”の執行者No.0”道化師”カンパネルラが亡き盟主の代理人として、確かに聞き届けたよ。」

「同じく地精の”長代理”として、確かに聞き届けた。――――――今回受けた”借り”はいずれ、何倍もの”利子”を含めて返してやるから、期待して待っているがいい。」

カンパネルラとジークフリートはそれぞれ静かな表情で答え

「今、転移妨害装置の機能を切ってやった。俺達の用もすんだのだから、とっとと消えろ。」

「ご親切にどうも。……そうそう、だったら僕の方もやらせてもらうよ。幸いギャラリーも多いからいい機会だしね。執行者No.0”道化師”―――これより亡き”盟主”の代理として『幻焔計画』奪還の見届けを開始する。」

「俺もこれで失礼させてもらおう。―――灰の起動者、それにトールズ”Ⅶ組”にメンフィルの”特務部隊”だったか。次に相まみえた時、どれほど腕を磨いているのか、楽しみにさせてもらおう。」

そしてヴァイスが転移妨害装置を切るとカンパネルラとジークフリートはそれぞれ宣言をした後転移術や魔導具で転移した。

 

「フフ……それでは私も失礼するわね。グズグズしてたらカンパネルラに捕まりそうだし。」

「ま、待って姉さん!」

「アンタねえ、今のを見て何も話さずに行くつもり!?それに”結社”に追われてるなら少しくらい協力しても――――」

二人に続くようにクロチルダの幻影も消えようとしたが、エマとセリーヌが呼び止めた。

「フフ……協力者もいるから心配ないわ。それと、しばらくこの地で幻獣や魔煌兵は出現しないでしょう。プレロマ草の”芽”は私が一通り潰しておいたから。」

「………!」

「ええっ!?」

「………プレロマ草の件については感謝するが………――――”蒼の深淵”。お前やお前の”協力者達”は結社や地精のようにクロスベルに仇名すつもりか?」

クロチルダが語った驚愕の事実にリィンとユウナが驚いている中アリオスは静かな表情で呟いて真剣な表情でクロチルダを見つめて問いかけた。

「フフ、まさか『碧き零の計画』の主犯格の一人である貴方から、そのような言葉が聞けるとはね。―――いえ、むしろ当然と言うべきかしら?”六銃士”や”特務支援課”と方法は違えど、貴方は”クロスベルの守護者”として『碧き零の計画』でクロスベルをあらゆる勢力から守ろうとしたのだから。」

「………………」

「アリオスさん………」

怪しげな笑みを浮かべたクロチルダの言葉に対してアリオスは目を伏せて黙り込み、アリオスの様子をセレーネは心配そうな表情で見つめ

「まあ、マクバーンとオルディーネを滅してくれたお礼にそのくらいの事は答えてあげるわ。私もそうだけど、私の協力者達もクロスベルもそうだけど、メンフィルと敵対するつもりはないわ。――――いえ、むしろ将来はメンフィル・クロスベル連合と協力関係を結ぶ事も希望しているわ。」

「ええっ!?」

「へえ?」

「まさか、”盟主”に忠誠を誓っていた”蒼の深淵”が”盟主”を抹殺したメンフィル・クロスベル連合との協力関係を結ぼうとされているとは………一体どのような心境の変化があったのか、個人的には気になりますわね。」

クロチルダの口から語られた更なる驚愕の事実にその場にいる全員が血相を変えている中アリサは声を上げて驚いてヴァイス達に視線を向け、レンは興味ありげな笑みを浮かべ、シャロンは驚きの表情で呟いた。

「メンフィル・クロスベル連合との協力関係を望んでいるのはどちらかというと”協力者達”の方で、私はあまり興味がなかったのだけど…………どうやらセリカもメンフィル・クロスベル連合側のようだし、私もメンフィル・クロスベル連合との協力関係を結ぶ為に動くつもりよ。だから、私の事を知ってもらうのはいつか訪れる私と貴方との共闘まで待っていてね、セリカ。」

「………何か勘違いしているようだが……俺がヴァイス達に手を貸しているのは結社や地精の存在は、俺にとっても滅すべき存在だから手を貸してやっているだけだ。――――俺の剣は誰の為でもなく、俺自身の為だ。例えその剣を振るう相手が”国”であろうと”神”であろうと、俺の”敵”になるのであれば迷う事無く全て”斬る”。―――――それだけだ。」

クロチルダにウインクをされたセリカは静かな表情で答え

「フフッ、ますます気に入ったわ。――――でも、一つ忠告してあげる。既に”物語”は始まっている。私が結末をすり替えようとして失敗してしまった”真なる物語”が。エレボニアを、クロスベルを――――世界を巻き込む”終わりの御伽噺”が。くれぐれも気をつけることね、エマ、リィン君、Ⅶ組や特務部隊のみんなも――――」

そしてリィン達に対する忠告をしたクロチルダの幻影はその場から消えた。

 

その後、デアフリンガー号から第Ⅱの教官や生徒たちが駆け付け―――――”星見の塔”周辺に徘徊していた結社の人形兵器も一通り掃討された。飛行型神機やオルディーネの残骸はクロスベルの空挺軍が回収し………結社がどんな”実験”をしていたのか第Ⅱ分校が推測するのは困難と思われた。

 

そして――――

 

 

という訳でセリカ、マクバーンを滅したことで相変わらず厄介な女性に目を付けられました(ぇ)なお、ヴァイス達が宣戦布告をするあたりからのBGMは魔導巧殻のOP”月女神の詠唱 ~アリア~”のフルVERだと思ってください♪


 
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