No.96674

真・恋姫無双~魏・外史伝43

 こんばんわ、アンドレカンドレです。
某コメントの期待に添うべく、頑張って書きました。
さて、いよいよ物語の真実に一気に近づく第十八章・後編!
最大限、分かりやすく書いたつもりですが、この辺分かりにくいなぁ~と思ったら、教えてください。最善を尽くして修正、説明いたします。
 ※ちなみに今回のサムネは前編で使用するはずだった没挿絵です。実は前編で・・・、一刀君と朱染めの剣士が戦うシーンを入れようとしたのですが、それを止めて逆に共闘するシーンに置き換えました。でも僕としては、やっぱり2人を戦わせたかったなぁ~と思っています。

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2009-09-22 00:23:54 投稿 / 全7ページ    総閲覧数:5253   閲覧ユーザー数:4288

第十八章~外史を喰らうもの・後編~

 

 

 

  成都の街を襲撃した謎の武装集団をようやく退けてから数刻後・・・、街の損害、死傷者の確認などを

 一通り済ませた頃。華琳、桃香、雪蓮を筆頭とした三国の重鎮達が成都の城の王宮内に集合していた。

  「これで全員でしょうか?」

  そして彼女達の中心には干吉が、貂蝉はそこから少し離れた場所から事態を見ていた。

 と、そこに足音が王宮内に響き渡ると、その場に蓮華が現れた。

  「姉様・・・。」

  「蓮華、寝ていなくていいの?」

  妹の身を案じる姉・・・。思春が見つけた時、ひどく衰弱していた事もあり、客室にて休ませていた。

  「私も知らなくてはいけない事があります故、呑気に寝ている訳にはいきません。」

  「・・・そう。でも無理はしないでよ。」

  「はい・・・。」

  そして蓮華もその場に居合わせる事となった・・・。

  「では、そろそろお話いたしましょう。」

  「頼む・・・。」

  一刀は縦に頷く。

  「はい、まず始めにこの世界についてあなた方にはお教えしなくてはいけません、そう外史について。」

  「外史・・・、左慈や伏義、女渦もそんな事を言っていたな・・・。確か正史に採用されなかった歴史

  って意味だけど、あいつらはそう言う意味で使っていたようには思えない・・・。」

  「如何にも、我々が使っている『外史』という言葉の概念は、少しばかり違うのです。ここで言う『外史』

  とは・・・、正史の中で発生した人の想念によって観念的に作られた世界を指します。」

  「何だって・・・いまいちよく分からないんだが?」

  「例えば、正史の中でとある誰かが物語を作ったとしましょう。」

  「作る・・・、小説みたいなものをか?」

  「そう、そしてそれこそが外史として正史とは違う形で発生。さらにその外史を見た人達が、そこから

  新たに創作したものもまた外史として発生する。」

  「要するに、商業誌と同人誌みたいなものか?」

  「外史は新たな外史を生み出し、そこから生まれた外史からまた新たな外史が生まれる・・・。その

  繰り返し、だが、中には人々から否定され、忘却されれば外史は消滅する。外史とはそういう存在なの

  です・・・。」

  「じゃあ、何か?この世界も・・・その正史から生まれた外史だって言うのか?」

  「如何にも。こうして私とあなたが問答しているのを別の場所から見ている者もまた、確かに存在する

  のです。」

  「そんな馬鹿な・・・!」

  「馬鹿な・・・とは?」

  「だってそうだろ。俺はこうしてこの世界にいるんだ。そして俺はこの世界を現実と認識している。

  それをまるで小説の読者のように見ている奴がいるはず・・・。」

  「がないと、何故あなたに言い切れるのですか?」

  「・・・・・・。」

  「現実と非現実とは、ある方向から見ればはっきりとした形で認識ができますが、また別の方向から見れば

  曖昧な抽象的な形として認識する事も出来る。つまり、必ずしも現実というものが一つとは限らないのです。」

  「何だか・・・、哲学的な話だな。」

  「でもね、だからこそこの世界は存在できるのよ。」

  と輪の外から離れた所から見ていた貂蝉が注釈を入れて来る・・・。

  「現実と非現実がどの方向から居てもはっきりとした形で認識が出来てしまったら、一刀ちゃんはこの世界に

  やってくる事は無かったのだから・・・。」

  「成程・・・。」

  「さて、外史という概念については大体説明したので、話を次の段階に引き上げましょう。」

  「ど、どうしよう・・・。まだ始まったばかりなのに、もうちんぷんかんぷんだよ~・・・。」

  「大丈夫よ桃香・・・。私もあなたと同じだから・・・。」

  「だよね、雪蓮さ~ん・・・。」

 

  「今度は、この外史が生まれるまでの過程をお話しいたします。」

  「この外史が生まれるまでの過程・・・?」

  「全ての始まりは・・・、正史の中で生まれたたった一つの外史。舞台は三国志の時代・・・、されど

  その世界の武将達は皆美少女として存在し、その世界に舞い降りた『北郷一刀』を主人公にし、その世界で

  最初に出会った関羽、張飛と共に・・・。」

  「ちょ、ちょっと待ってくれ!何だよそれは・・・。」

  「如何なさいましたか?」

  「だってそうだろ?北郷一刀って俺の事じゃないか!?」

  「如何にもあなたの事です。」

  「俺が最初にこの世界で出会ったのは華琳・・・、あぁいやその前に風と稟なのかな?兎に角俺が最初に

  出会ったのは関羽さんと張飛ちゃんじゃない!」

  「・・・北郷殿。あなたは何か誤解をしているようです。」

  「誤解!?何の事だ!」

  「私が言っている全ての始まりとなった外史とは、この世界ではありません。この世界が生まれるずっと

  前の事を言っているのです。」

  「・・・・・・?」

  「ふむ・・・、分からないという顔をしていますね。ならば、今は黙って私の話を聞いていて下さい。」

  「・・・・・・。」

  「話を戻しましょう・・・。北郷一刀は最初に出会った関羽、張飛と名乗る少女達と共に戦い、仲間を

  集め、その仲間たちと共に、乱世を一日も早く終わらせるため奮起する。これがこの外史の発端となった

  外史です。」

  「・・・・・・。」

  「しかし、その外史の存在を良く思わない勢力が存在した。私と左慈はその勢力の側としてこの外史の中

  を暗躍していました・・・。」

  「外史を良く思わない・・・って、どういう意味だ。それじゃあまるでお前達はその外史から見た正史の

  人間だっていうのか?」

  「いえ、我々は外史の管理人とでも言うのでしょうか?英傑や神仙といった名前を持たされた存在は

  その外史を消滅、もしくは定型という形を与え、観念的に正史と繋げる事でその存在を固定する。

  それが我々の役割であり、存在意義なのです。私と左慈は外史を消滅させる側としてこの外史の中で

  暗躍していた。そして我々と対になる存在として、彼・・・貂蝉が北郷一刀の側に立ち、外史の固定を

  進めた。」

  「そう・・・、私もまたその外史の登場人物として、外史の肯定をしたの。」

  「そして、我々の存在とその目的を知った北郷一刀は、外史の消滅を防ぐべく、我々の計画を阻もうとした。」

  「その結果は?」

  「結果的に言えば、外史の消滅そのものは免れなかったものの、外史の消滅・・・、終端を新たな外史の発端

  とする事が出来ました・・・。」

  「つまり・・・?」

  「この外史の終端から生まれたのが、この世界・・・。あなたはこの全ての始まりの外史の発端である

  『北郷一刀』が、終端と同時に分岐して生まれた新たなる存在なのです・・・。」

  「そ、そんな・・・。」

  「まだにわかに信じられないようですね・・・。ではあなたに聞きますが、あなたが初めてこの世界に

  舞い降りた時の事・・・、それより以前の記憶を持っていますか?例えば、この世界に来る直前まで何を

  していたのか、この世界にはどうやってやって来たのか?」

  「・・・いや、よく分からない。」

  「でしょう。それもそのはず、あなたという存在が・・・、この世界が・・・、その瞬間から生まれたの

  ですから。」

  「・・・・・・。一つ聞いていいか?」

  「何でしょう?」

  「外史って言うのは、人の想念の元に生まれるだよな。という事は想念の数だけ外史も生まれる。」

  「そう言う事です・・・。」

  「なら、その・・・全ての始まりの外史から生まれた外史ってこの世界以外にも存在するって言うのか?」

  「ふふふ・・・、何だかんだと言いながら、理解が早いようですね。」

  「じゃあ・・・。」

  「そう、外史はこの世界に限らず、多くの外史が新たに生まれました。同じ舞台、されどその上で繰り

  広げられる物語は似て非なるもの・・・。そういった世界がいくつも存在する。我々はそれを『並行外史』

  と定義しています・・・。」

  「パラレルワールド、並行世界ならぬ・・・並行外史か。それと後もう一つ。」

  「はい。」

  「その外史が消滅した後、お前達は・・・どうなったんだ?」

  「・・・私と左慈は結局の所を外史の消滅、無かった事にする事が出来ませんでした。その罰・・・、

  なのでしょうかね、私達は外史と外史の挟間を彷徨う事となり・・・。」

  「私は別の外史へと飛ばされちゃったわけ♪最も、その外史も消滅しちゃって、挟間を彷徨っていたのを

  干吉ちゃんに保護されたって訳・・・。その後、私はこの世界の貂蝉と融合して今ここにいるってわけ。」

  「・・・じゃあ、左慈が俺を殺そうとするのは、そこにあるって事か・・・?」

  「・・・・・・。」  

  「ねぇねぇ、真桜ちゃん・・・。隊長とあの人の話分かったの~?」

  「済まん、ほとんど分かってへん・・・。」

  「姐さんはどうですか?」

  「う、うちに聞くなやぁ・・・!」

  「なら、凪ちゃんはぁ・・・?」

  「何となく・・・、上手くまとめられてはいないが。話の流れは一応・・・。」

  「へぇ・・・、凪ちゃんすごいの~。」

 

  「私からもいいかしら?」

  今まで沈黙を通していた華琳が口を開く。

  「並行外史・・・、この世界と似てい非なる世界が存在するって事は分かったわ。

  でも、具体的にどういうものがあるのかしら?」

  「そうですね・・・。例えば、『もし北郷一刀を拾ったのが曹操でなかったら』劉備であったり、

  孫策であったり、はたまた別の誰かに拾われたという外史、他にも『もし定軍山の戦いで夏侯淵が死んで

  いたら』という、この世界からそういう形で新たに分岐する外史、さらには『外史の主人公が北郷一刀で

  なかったら』、別の人物が北郷殿に代わって舞台に立つ外史もあれば、そういった存在がおらずその世界

  の登場人物のみで綴られる外史・・・。」

  「・・・ちょっと待て!そんな事を言っていたらきりがないでは無いか!」

  だらだらと喋り続ける干吉に、横から口を挟む愛紗。

  「そう!全く以てその通り・・・!きりがなくなってしまったのです。」

  「んにゃ、どういうことなのだ?」

  干吉の言葉に、鈴々が尋ねる。

  「先程も北郷殿が言ったとおり、外史は人の想念の数だけ存在する。では人の想念とはどれだけの存在する

  のでしょうか?恐らく、答えは無限大です。」

  「無限大・・・?」

  干吉が言った事をそのままに口に出す蓮華。

  「そう無限大です。そしてそれは同時に、外史もまた無限に広がっていくという事です。」

  「それって、何かまずいのか?」

  それが何だって言うんだという顔をする翠。

  「外史は無限に広がる・・・。しかし、その外史達が存在出来る空間には限度があります・・・。つまり

  外史が無限に増え続ければ、あっという間にその限界を越えてしまいます。」

  「空間、限度・・・。いまいちピンと来ないの~・・・。」

  首を捻る沙和・・・。

  「・・・あ!そういう事か!」

  「え!どういう事なの隊長!」

  「例えばだ・・・、腹が減ったから飯を食べに行く・・・。その飯を外史とするぞ。」

  「うんうん。」

  「その外史を腹が満たされるまで食べ続ける。でも・・・腹が一杯になった状態で無理やり食べ続けたら

  どうなる・・・?」

  「そんな事をしたら、腹が破裂したまうやろ~。」

  「・・・あ!そういう事か!」

  「成程なぁ~、一刀の例え話は分かり易いなぁ。」

  「かなり乱暴な理論ではありますが、まぁ大まかに言えばそう言う事です。外史の数がその空間に存在できる

  限界数を超える事を『外史の飽和化』と言います。」

  「外史の飽和化が起きると、どうなるんだ?」

  「生憎、私はまだそれをこの目で見た事が無いので何とも言えないのですが・・・、強いて言うのであれば、

  『正史と外史、外史と外史の境界の完全なる消失』とでも言っておきましょう・・・。」

  「少なくとも、いい事が起こる感じは微塵も無いようだな。」

  「ええ。外史の飽和化が正史にどれだけの影響を与えるのか、測り知れません。そこで登場するのが、

  通称『外史喰らい』です。」

  「『外史喰らい』・・・、左慈もそんな事を言っていたな。一体何だそれは?」

  「『外史喰らい』とは外史の飽和化を未然に防ぐために『南華老仙』が作った並行外史管理調整システム

  ・・・。」

  「『南華老仙』ってその人もあなた達と同じ側の存在なのかしら?」

  華琳は南華老仙という人物について干吉に聞いた。

  「如何にも。最も、彼はどっちつかずの中立の立場として外史の行方を見届けていましたが・・・。

  北郷殿は、すでに彼と接触しているはずです。最も彼は自分の事を『露仁』と名乗っていたようで

  すがね。」

  「・・・!露仁が・・・!?」

  「そしてこの外史喰らいによって、無限に広がる外史が飽和化しないよう、管理されていました。」

  「管理って具体的に何をするんだ?」

  「システムの主な働きは、外史の削除による数の削減。そして削除した外史を元に無双玉を作り出すこと。」

  「無双玉だって?」

  「無双玉とは、この外史での呼び名。目玉程度の大きさのただの入れ物です。重要なのはその中身、

  『外史の情報』です。」

  「外史の情報・・・ってどういうものなんだ。?」 

  「ここで言う情報とは、物語の土台となるもの・・・、物語の背景、登場する人物達の設定、といった

  ものです。」

  「外史喰らいによって削除された外史は情報に変換され、次に生まれるであろう新たな外史の誕生の火種

  として、再利用されるのです。そうする事で、効率よく外史が必要以上に誕生させる事無く、常に一定の

  数を保てると言う事です。」

  「じゃあ、何か・・・。今、この世界はその外史喰らいに削除されようとしているのか?」

  「結論を言えば・・・。しかし、事態はそれ程単純では無いのですよ。」

  

  「外史から生まれた外史には大きく分けて二種類に分類する事が出来ます。敢えて言葉にするならば、

  『本家』と『分家』といったところでしょうか?・・・『本家』は外史から正統的な形式で派生した外史、

  『分家』は外史から非正統的な形式で勝手に派生した外史。(ここでいう『本家』はbasesonの恋姫無双

  真・恋姫無双、『分家』はtinamiのような二次創作や同人誌と解釈出来る)ちなみにこの外史は本家の

  外史に分類されます。(無論、この作品は立派な二次創作であり、『分家』であるが物語の設定上、

  『本家』と勝手に設定しています。ご了承下さい・・・。by アンドレカンドレ)」

  「『本家』と『分家』で何か変わるのか?」

  「『本家』があっての『分家』・・・。『本家』となる外史が存在するからこそ、『分家』も存在できるの

  です。先程も言った様に全ての始まりのとなった外史はすでに消滅し、あるのはその消滅から新たに生まれ

  た無限に広がる並行外史。この状態で、『本家』の外史が削除された場合、『分家』の存在も消滅する事に

  なります。当然の事ですね。」

  「そうだな。」

  「外史喰らいはやみくもに外史を削除している訳ではありません。外史喰らいが削除するのは飽くまで

  『分家』の外史・・・。外史が無限に広がる原因はまさにこの『分家』にありますから。『本家』の外史を

  削除する事はまずありえないのです。システム上で言うならば・・・。そしてそれは忠実に機能し、外史

  の数は上手く調節されていました・・・。」

  「いました・・・?今はされていないって言うのか・・・。」

  干吉はゆっくりと歩きながら喋り出す・・・。

  「・・・ある時を境に、外史喰らいに異変が生じました。その時は南華老仙も気に止めなかった・・・。

  しかし、その異変はやがて大きなモノへと変貌した。外史喰らいは本来の自分使命を忘れ、削除した外史

  情報を意図的に自分の中に蓄積、自分の糧に変換するようになっていきました・・・。」

 そしてその歩みを止める・・・。

  「外史喰らいが、暴走を始めたのです。」

  「外史喰らいの暴走・・・。」

  「その暴走はさらに過激さを増し、片端から外史を削除していきました。その勢いは外史が新たに生まれる

  速さをも凌駕するようになりました・・・。外史の飽和化ならぬ、外史の過疎化とでもいうのでしょうか?

  そして外史喰らいが次に狙った標的は『本家』の外史でした。無論、南華老仙もこの事態に対処するべく

  外史喰らいのこの暴走を食い止めようとしました・・・。」

  「結果はどうだったんだ?」

  「・・・・・・。」

  干吉は首を横に振る。

  「もし、そこで何とか出来たのであれば、このような事態には至らなかったでしょう。すでに外史喰らいは

  南華老仙の手に負えなくなっている程まで強大化してしまった。そして返り討ちにあった。そして挙句には

  彼の力の殆どを奪われてしまった・・・。彼の元に残ったのは、外史の情報が詰め込まれた無双玉三個のみ。」

  「一刀ちゃんが出会った老仙ちゃんはよぼよぼのスケベなお爺ちゃんのようだけど、それも自分の存在が

  外史喰らいに悟られないようにするための演技だったわけ。お爺ちゃんの姿は外史喰らいによって力を奪わ

  れた結果、だから分からなかったでしょうけど、老仙ちゃんって本当はとても色男で、使命感の強い熱血漢

  だったのよ。」

  露仁の事について補足を入れる貂蝉・・・。

  「南華老仙という抑止から解放された外史喰らいの勢いが止まるはずもなく、優先的に『本家』の外史を

  削除、いえ・・・厳密には『北郷一刀』を殺害していきました。外史の削除は言うなれば副次的な事・・・。」

  「・・・?俺の殺害って・・・、何でわざわざ俺を殺す必要があるんだ?」

  「外史喰らいが『本家』の外史を狙った目的は、あなた・・・外史の発端である『北郷一刀』にあるのです。

  外史喰らいにとって『北郷一刀』は危険なファクター以外の何者でもないです。」

  「それって、俺のこの力とも関係があるのか?」

  「勿論・・・、あなたの異能の力・・・。それはあなたの体に埋め込まれた『無双玉』によるもの。」

  「っ!?俺の体に、そんなモノが!?一体どうして!それって外史の発生に必要な火種になるモノ

  なんだろ!!」

  「それは飽くまで使用手段の一つです。無双玉に詰め込まれた『外史の情報』はいうなれば、エネルギー

  そのもの・・・。使い様は様々なのです。あなたはそのエネルギーを使って、身体能力を極限まで高める

  事も、あなたがその気になれば超常現象さえ起こす事が出来るのです。」

  「そ、そうだったのか・・・。」

  「しかし、それは誰にでも為せる事ではありません。無双玉に詰め込まれた『外史の情報』は外史一個分

  …膨大な量です。それを常人が使えばたちまちその量に体が耐えられず、跡形もなく消滅するでしょう。

  ですから、それを利用できるのは極一部の存在・・・。外史喰らいと我々・・・。」

  「そして俺・・・なのか?」

  「『本家』の外史の発端であるという条件付きですが。『分家』の外史のあなたは対象外です。」

  「もしかして左慈も・・・?」

  「ええ・・・、彼の体にも無双玉が。しかし、まさか彼がその力をあなたを殺す事に利用するとは思って

  もいませんでしたが・・・。」

  「・・・・・・。」

  「つまりはそういう事です。南華老仙と接触し、北郷一刀がそのような力を手に入れたのならば、それは

  外史喰らいにとって大きな障害となる。だからこそ、あなたを殺害するべく、外史喰らいは外史に自分の

  『分身』を送り込んだ・・・。伏義と女渦・・・。彼等こそ、外史喰らいが生み出した『分身』なのです。」

  「分身・・・?それって一体どういうものなんだ?」

  「分身とは・・・、外史喰らいが今まで取り込んできた外史の情報を元に新たに作られた存在・・・、

  いわば情報集合体の事を言います。」  

  「・・・!?」

  干吉の口からでた言葉に、雪蓮ははっとする。

 

 ―――正確に言えば、彼女は・・・祭さんは『蘇った』んじゃぁない。僕達が今まで取り込んできた『情報』

  の中から『黄蓋公覆』に関するやつを元にして、僕が新しく『作った』んだよ。

  

  「・・・そう言う事かぁ・・・。」

  「何か思い当たる節が御有りのようですね。孫策殿?」

  「・・・・・・。」

  「彼女もまた、伏義、女渦と同様、外史喰らいが『彼女』に関する情報を元に作り出した情報集合体。

  今なら、その意味も分かるでしょう?」

  「・・・そうね。」

  「雪蓮・・・。」

  「姉様・・・。」

  「・・・とにかく、外史喰らいはそうやって『本家』の外史と俺を消してきたって事か?」

  「そう言う事ですね。」

  「だが、わざわざそんな事しないで外史自体を消せばいいんじゃないのか?」

  「外史の削除が即ち北郷一刀の死に繋がるとは限らないのですよ。外史を削除しても、その発端である

  北郷一刀はまた別の新たな外史の発端となる。ですから、外史に侵入し、直接殺害する必要があると言う

  訳です。そして『本家』となる外史は今やこの世界のみとなってしまいました。」

  「なら・・・、外史喰らいは今この世界を消滅させようとしているのね?」

  と、華琳は聞くと干吉は縦に頷く。

  「しかし、外史喰らいはこの外史を他の外史同様に、削除する事が出来なかった・・・。」

  「どうしてだ・・・。」

  「その理由は大きく分けて二つ、一つは・・・北郷殿、あなたです。」

  「俺がどうかしたのか?」

  「あなたがこの外史からその存在が消えていたと言う事です。」

  「あ・・・っ!」

  「確かに・・、一刀は二年前にこの世界から消滅したわ。それが外史喰らいにとって思わぬ事だったと

  いうのかしら?」

  「死んでいる訳でも、別の並行外史に飛ばされた訳でも無く、違う次元の世界に飛ばされてしまった。」

  「違う次元の世界?あぁ・・・、天の国の事を言っているのかしら?」

  「そう・・・、この外史と北郷殿が本来存在していた世界は完全に別次元。そのため外史喰らいは北郷殿を

  殺害する事が不可能となってしまった。そんな状況下でこの外史を削除してもあまり意味がない・・・。」

  「・・・だそうよ、一刀。」

  「何だよ、華琳・・・。その言い草は?」

  「私を泣かせてまであっちの世界に戻ったのも、一慨に間違いでは無かったって事よね?」

  「間違いって・・・、別に好き好んで戻ったわけじゃぁ・・・。」

  「はいはい、夫婦喧嘩は犬も何とやらよ、お二人さん・・・?」

  一刀と華琳の間に割って入って来る雪蓮。

  「「・・・・・・。」」

  「それともう一つ、この外史を削除すれば、完全に並行外史が完全に消滅すると言う事です。『本家』

  の外史が一つ残らず消えると言う事は、その外史が無かった事になる、つまり『分家』の外史も存在し

  ない事になる。力を蓄える為に外史を削除している外史喰らいにとってはそれはあまり美味しくない。

  そのため、敢えてこの外史を削除せず、泳がせていたのです。」

  「じゃあ何か!うちらは向こう都合で生かされとるっちゅう事かいな!?冗談やないで!」

  干吉に向かって怒鳴り散らす霞・・・。

  「霞の怒りはもっともだ。我々はそのような勝手な都合に生かされるつもりなど毛頭無い・・・!」

  霞の怒りに呼応する愛紗・・・。

  「だが干吉・・・。俺は今ここにいる。どうして何だ?」

 

  「南華老仙にとってこの外史、そしてあなたは唯一の可能性でした、外史喰らいの暴走を止めるための。」

  「可能性・・・。」

  「外史喰らいの暴走を止められなかった南華老仙は私と左慈に接触し、無双玉を託しました。その後、

  あなたに接触するべく、この外史に存在する、この外史とあなたのいた世界を繋ぐ不変存在・・・を探し

  ました。」

  「不変存在・・・って何だ?」

  「銅鏡の事です。」

  「あ、あれかぁ・・・!」

  一刀は聖フランチェスカ学園の歴史資料館にあった銅鏡を思い出した・・・。

  「あの銅鏡こそ不変存在、それを使えば、本来ならば行き交う事の不可能な別次元の外史へと移動する

  事が可能になる代物・・・。だからこそ、南華老仙を銅鏡を探しました。しかし、またしても後手に

  回る事となってしまった。彼よりも先に外史喰らいが銅鏡を回収してしまったのです。」

  「なら、俺があの時出会った白装束は・・・。」

  「えぇ・・・、外史喰らいの分身です。しかし、あの分身はあなたの世界に移動する際に大量のエネルギー

  を消費していたため、あなたをその場で殺害する事は出来なかった。そこで銅鏡の力であなたをこの世界に

  再び招き入れたのです・・・。」

  「そして俺はこの世界に戻って来れた。」

  「ですが、ここでも我々にとって有り難い誤算が生じた。銅鏡の力であなたをこの世界に招き入れる事が

  出来ましたが、時間系列にずれが生じ、その時点より一年先へと飛んでしまった・・・。」

  「・・・俺があっちで過ごしていたのが1年だったのに、こっちでは2年って妙にズレていたのは

  そういう訳だったのか。」

  「この空白の一年は、我々と外史喰らいにはまさに冷戦状態でした・・・。来るべき一年後備え、我々は

  北郷殿の落下地点の予測、その周囲に結界を張るなどを、向こうよりも先に北郷殿に接触できるように、

  様々な工作を施してきました・・・。一年後、この外史に北郷殿が降り立った。そしてあなたに最初に

  接触したのは・・・。」

  「左慈・・・ってわけか。」

  「そう彼、外史喰らいよりも先にあなたに接触し、南華老仙の元へと連れて来る・・・、それが彼の仕事

  でした。」

  「だが、あいつは俺を谷底に突き落としたぞ。」

  「それはさすがの私の予想外の行動でした。思えば、あの時に対処すべきだったと後悔しています。

  ・・・そして川に流れされ、呉の建業付近の河原・・・。そこでようやくあなたは南華老仙と接触できた。

  もっとも、あなたは気を失っていたので分からないでしょうが、その時にあなたの体に無双玉が埋め込ま

  れたのです。」

  「・・・・・・。」

  「そんなあなたを外史喰らいが放っておくはずがない。最悪の事態を避けるべく、南華老仙は露仁という

  しがない武器商人としてあなたの側に付く事にした・・・。あなたが無双玉の力を使いこなせるように。

  しかし、南華老仙はその前に死んでしまいました・・・。」

  「あいつに、伏義に殺されたからな・・・。」

  「ですが、あなたはその伏義を倒した、その力で・・・。結果的に見れば、あなたは南華老仙の思惑通りに

  動いているのですよ・・・。そして北郷殿・・・、その力を以てこの世界に存在する残りの『分身』を倒し、

  外史喰らいの暴走を止める。それこそがあなたに託された使命なのですよ。」

 

―――いいか・・・。・・・北郷、・・・ここから先は、お前一人だ・・・。お前に・・・全てを託し・・・

  済まない。だが・・・、お前でなくてはいけなかっ・・・た。・・・その力で、守れ・・・この外史・・・

  を!人の・・・想念・・・を!

  

―――頼む・・・、北郷!!わた・・・しの・・・、私の・・・過ちを・・・、た、たの・・・ん・・・。

 

  「・・・要するに、露仁の尻拭いをしろって事か?」

  「身も蓋も無い事を言えば、そうですね。」

  一刀は自分の胸に手を当てる・・・。ようやく露仁の言っていた事が今、全て理解出来た。

 

  「・・・おっといけない、いけない。もう一つ言っておかなくてはいけない事がありました。」

  と言って、改め直す干吉。

  「実は私・・・、すでに削除されてしまったとある一つの『本家』の外史において、削除される寸前に

  奇跡的にその外史の発端である『北郷一刀』を救いだす事が出来たのです。」

  「・・・!」

  それを聞いた蓮華は目を丸くして驚いた・・・。

  「何ですってぇ・・・、本当なのそれ?」

  妹の代わりに確認する雪蓮・・・。

  「えぇ・・・、といってもすでに死体となっていましたがね。それでも外史喰らいに悟られず、

  『北郷一刀』の死体をその外史から運び出した私は・・・、一か八かの賭けで彼の体に『無双玉』を

  埋め込んだのです。無双玉の力によって、再び息を吹き返すのではないかと淡い期待を抱きながら・・・。」

  「それでどうなったの・・・?」

  「彼は私の期待に応えてくれました。恐らく彼には死んでも死にきれない想いを抱いて死んだのでしょう。

  再び生を得た彼はしばしの間、私と行動を共にしていました。そしてこの外史に女渦がいると知った彼は、

  女渦の行方を追ってこの外史に降り立った・・・。」

  「ま、まさか・・・。」

  その彼の姿を頭に思い描く蓮華。

  「あなた方もすでに彼に何度か出会っているはずです。・・・巷では、彼は『朱染めの剣士』などと呼ばれ

  ているようですが・・・。」

  「「「「えぇ・・・!!」」」」

  驚愕真実に王宮内にいた者達は皆驚きの声を上げる・・・。

  「じゃあ、俺はもう一人の俺と一緒に戦っていたのか。・・・道理で戦い易いなぁと思ったわけだ。」

  うんうんと一人納得しながら、頷く一刀

  「それはそうでしょう~。だって、同一人物なんですからね~。」

  と、付け加える貂蝉。

  「・・・さて、私が皆様方にお話しするべき事は大体にしてこれでお終いです。兎に角、まだ敵

  は女渦を含め後三人残っております・・・。まずは、彼等を倒す事が最優先として為さねばならぬ事。」

  

  「軍議中、失礼します!!」

  干吉が一区切りつけたのと同時に、一人の兵士が王宮内に入って来た。

  「あなたは確か小蓮の親衛隊の兵士ね。こんな所へ一体どうしたのかしら・・・?また小蓮が問題を

  起こしたの~?」

  雪蓮を姿を見つけた兵士は雪蓮の前まで行くと一礼する。

  「それならばまだ幾らか良かったのですが・・・。」

  「・・・で、何があったの?」

  「はっ!我等が首都・建業が数日前、謎の武装集団の襲撃に遭い・・・、街全域が占拠されました!!

  そ、それと・・・、その・・・、じ、実は・・・その中に・・・。」

  最後の方で口篭もる兵士・・・。それを見た雪蓮は一つの可能性を口にした。

  「・・・祭がいたのね?」

  「っ!!」

  それを聞いた兵士は言葉を失くす・・・。

  「・・・やっぱり、そうなのね?」

  「・・・は、はい。恐らく黄蓋殿が・・・、敵の総大将かと・・・!」  

  「・・・姉様!!」

  「えぇ・・・分かってる。冥琳!」

  「・・・言われずとも、すぐに建業に戻る準備をする。」

  そう言い残し、王宮を後にする冥琳。

  「雪蓮さん!どういう事ですか・・・!黄蓋さんは、生きていたんですか!?」

  「いいえ、そういう訳では無いのよ、桃香。私が言っている祭は・・・祭では無いのよ。」

  「え・・・?」

  雪蓮の言っている事が分からず、ぽかんとしてしまう桃香。

  「色々と複雑な事情が御有りの様ね?」

  「そう言う事よ、華琳。」

  

  「軍議中、失礼します!!」

  とそこにまた別の兵士が王宮内に入って来る。今度は魏軍の兵士であった。

 それを見た華琳は溜息をついた・・・。

  「どうやら、私の国の方もまた一悶着が起きたようね。」

  「それを何とかするのが、王の仕事だろう?」

  そう言って、不敵な笑みを華琳に見せる一刀。

  「あなたに言われなくても分かっているわ!」

  「はいはい・・・♪」

  「全く・・・。」

  「(まだ俺の戦いは終わっていない。露仁・・・、俺は戦うぜ!あんたに言われたからじゃない、俺だって

  守りたいんだ・・・、この世界を、華琳達のために、そして何より俺自身のために・・・。)」

 

  その揺ぎ無い、新たな決意を胸に秘め、握られた拳に力が入る一刀。しかし、まだ一刀は知らなかった、

 それが同時に避けようの無い、過酷な運命を背負う事になる事を・・・。


 
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