No.957983

真・恋姫外史 がんばれ一刀お笑い道中~僕が外史に降りた理由~ 第二十一話

アキナスさん

一刀の説得・・・・・・?

2018-06-27 02:04:09 投稿 / 全5ページ    総閲覧数:3695   閲覧ユーザー数:3232

さて、まずは一刀が董卓軍内部に潜り込むまでの経緯を語ろう。

 

孫策軍では董卓軍に明命を送り込む事が決まりかけていたのだが、そんな中何か思いついた様子の一刀が

 

「俺も行きたいんだけど」

 

と言い出したのだ。

 

「理由は何だ?」

 

当然理由を訊ねる冥琳。

 

「確認したい事があるんだ。それに、俺にしか出来ない説得の方法も思いついた」

 

「一刀、分かってるの?敵の内部に潜り込むっていうのは大きな危険が伴う行為なのよ?」

 

雪蓮の言葉に頷く一刀。

 

「危険は承知。しかしそれでもやるだけの価値はあると思ってるんだけどな」

 

「怖気づいて辞めるつもりは毛頭ないらしいな」

 

「当然。だいたいこんな事で怖気づいてたら、親衛隊のみんなに笑われちまうよ」

 

もう完全に行く気でいる一刀。

 

「・・・・・・止めても無駄みたいね。分かったわ。行ってきなさい」

 

「おう!」

 

 

 

こうして一刀は、先の戦で雑兵を装い、明命と共に董卓軍へ紛れ込んだのであった・・・・・・

 

 

 

 

「孫策軍からやってきた・・・・・・と言う事は、寝返る者たちというのは」

 

「孫策、そして袁術だ」

 

「・・・・・・」

 

一刀の発言を受け、無言で何やら思案する陳宮。

 

張遼は腕組みしながら一刀を値踏みするように見ており、呂布も一刀の事をじっと見ていた。

 

「何故ですか?」

 

「寝返る理由か?」

 

一刀の言葉に頷く陳宮。

 

「簡単な事さ。悪逆非道でない董卓を討つ必要は無いからだ」

 

「「「!?」」」

 

一刀の発言に驚きの表情を浮かべる三人。

 

「何驚いてるんだ?そんな事はあんたらが一番よく知ってる事だろうに」

 

意外そうに目をぱちくりさせる一刀。

 

「・・・・・・どうして、我々が悪逆非道では無いと?」

 

「涼州にいた頃の董卓は善政を敷いていたと聞いてる」

 

「根拠はそれだけですか?権力の座に就いて、変貌したかもしれないではないですか」

 

「ねね、何を・・・・・・」

 

張遼の言葉を目で制する陳宮。

 

「まあ、他にもいくつかの根拠はあったが、正直な話、憶測の域を出てはいなかった。・・・・・・が、軍内部の様子をこの目で見て確信したよ。やはり、董卓は悪逆非道ではないとな」

 

「?」

 

「この軍の兵士たちはみんないい顔をしてた。董卓が悪逆非道の主だというなら、道徳心の低いならずもの崩れなどを除けばもっと暗い顔をしてるはずだ」

 

「それはここにいる将達への忠誠からかもしれませんよ?」

 

「だったらそんなあんたらの存在自体も根拠の一つになる。悪逆非道の主に仕える事を喜ぶ愚者にも、とても嫌々やってるようにも見えないがね」

 

「・・・・・・」

 

「ねね。もうええやろ?」

 

「霞」

 

「あっちにはあっちの思惑があるんやろうけど、今回の戦は絶対に負けられない戦や。味方が多いに越したことは無いやろ?」

 

「霞は単純でいいですね。この裏切りこそ、後々こちらを内部から崩すための策かもしれません」

 

「そうは言うけどなあ。違っとったら戦いを有利に進める材料をむざむざ捨てる事になるんやで」

 

「そんな事は言われずとも分かっているのです。しかし、軍師は常に最悪の事態を想定して動かなければいけないのです。この男の言葉が信用に足るかはまだ・・・・・・そもそも霞はどうしてこの男の言葉を信じるのですか?」

 

「ん~~、勘やな」

 

「か、勘って・・・・・・そんな曖昧な根拠で、この重大な選択に口出ししないでもらいたいのです!」

 

「ウチの勘は良く当たるんやけどな」

 

陳宮と張遼が話を続けている間、一刀は視線を呂布に向けていた。

 

「?」

 

一刀の意図が分からず、首を傾げる呂布。

 

「北郷一刀と言いましたね」

 

声と共に視線を陳宮に戻す一刀。

 

「お前の言う通り、ねね達は悪逆非道などではないのです。その上で聞きますが、本当の狙いは何ですか?まさか人道的観点からというお人好しな理由では無いでしょうね?」

 

一刀に鋭い視線を投げかける陳宮。

 

「そうだな。まあ、人道的な理由も無いとは言わないが、答えは単純。利だ。そちらについた方が見返りが大きいと判断した。それだけの話だ」

 

「・・・・・・なるほど。確かに分かりやすいですね。しかし、それほどの見返りを得られると本気で思っているのですか?」

 

「どういう事だ?」

 

「先の戦での我が軍の奮戦ぶりを見たでしょう」

 

「ああ」

 

「はっきり言って、袁術軍の加勢が無くてもこちらが負けるとは思っていないのです。別にこちらに寝返るなとは言いませんが、必要の無い寝返りに対して過度の見返りを用意する気は無いのです」

 

厳しい視線と言葉を投げかける陳宮に対し、一刀はそう来たかと言った顔で陳宮を見つめ返した。

 

「なるほど。今のままでも負けない戦いは出来るだろうな。だが、勝つ見込みはあるのか?」

 

「人の話を聞いていたのですか?先の戦を・・・・・・」

 

「見た。その上で聞いている」

 

堂々と言い放つ一刀の言葉に、言葉を詰まらせる陳宮。

 

一刀の言う通り、負けない戦い方は出来ると陳宮も思ってはいたが、勝つ事を念頭に置くと決定打に欠けていた。

 

先の戦いで連合軍に被害を与えたのは確かだが、多数の兵士を擁する袁家の軍は無傷なのだ。

 

籠城戦における優位を含めても、厳しいと言わざるをえない。

 

かと言って、もう一度打って出るのは愚策である。

 

先の戦で、呂布は多くの将達を相手に立ち回ってその強さを見せつけたが、最終的には止められた。

 

もしまた打って出た場合、連合軍は最初から呂布を足止めする事を念頭に置いて戦う事だろう。

 

呂布が早々に止められれば、兵数、将の数で劣っているこちらに勝ち目は無い。

 

これらの事を考えると、袁術達の寝返りはこの上なくありがたい提案だった。

 

だが、簡単に受け入れる事が出来ない理由が二つあった。

 

一つは先も言ったように、董卓軍を内側から崩すための奸計では無いかという疑念があったこと。

 

もう一つは現在、交渉の主導権を得られていない事だ。

 

陳宮は自分達の力を示した先の戦を用いて、交渉の主導権を握ろうとした。

 

だが、一刀には通用しなかった。

 

このまま寝返りを受け入れて勝利したとしても、袁術に対し相応の対価を払わざるを得なくなる。

 

後々の事を考えると、それは避けたい。

 

そんな考えを抱いていた陳宮は、ある手を思いついた。

 

袁術、孫策軍の寝返りを必要とせずに勝利するための方法。

 

目の前にいる男、北郷一刀を捕縛、あるいは殺害し、袁術、孫策軍の裏切りを連合軍に知らせる。

 

そうすれば、こちらには一切のリスクを負う事無く、連合軍に対して疑心を植え付けることが出来る。

 

上手くいけば袁術、孫策軍を孤立させ、戦いをさらに有利に運ぶ事が出来るかもしれない。

 

「・・・・・・ふふ」

 

「何がおかしい?」

 

「いえ、勝つ見込みがあるかでしたね。無論ありますとも」

 

「ほう?よければ聞かせてもらえないか?」

 

「いいでしょう。霞!恋殿!その男を捕らえるのです!いや、殺しても構わないのです!」

 

「ど、どういうこっちゃ!?」

 

「・・・・・・?」

 

陳宮の突然の発言に動揺する張遼と、何でと言わんばかりに首を傾げる呂布。

 

「ふうん・・・・・・そっちを選んだか」

 

対して、一刀は全く動揺していなかった。

 

むしろ、予測していたとばかりに悠然と構えている。

 

「その言い方、理由は分かってるようですね」

 

「ああ。俺を袁術、孫策軍の裏切りの証拠として使おうっていうんだろ?」

 

「その通りです。しかし自分の身が危険だと言うのに、随分落ち着いていますね。何か助かるあてでもあるのですか?」

 

「あいにく、死ぬのは怖くないんでな。むしろ笑って死んでやるさ。その後であんたらは、自分たちの行為の浅はかさを死をもって償うんだな」

 

「・・・・・・どういう意味ですか?」

 

一刀の態度に苛立ちを覚えつつ、訊ねる陳宮。

 

「簡単な事だ。対策は出来ているってことだよ」

 

「対策?」

 

「天の御使いって、聞いたことがあるか?」

 

「何です突然」

 

「聞いたことあるわ。流星と共にやってきて、乱世を平定する者・・・・・・やったっけ?有名な占い師が言うてたとか何とか」

 

「それが俺だ」

 

「へ?」

 

「何ですと?」

 

「・・・・・・」

 

鳩が豆鉄砲をくらったような表情を浮かべる張遼と陳宮。

 

呂布は表情を変えず、ただ一刀を見ていた。

 

「信じる信じないは自由だが、ある程度はそう知れ渡ってる。で、説得に失敗した場合、俺は董卓軍に無益な争いを止めるように使者として赴いた聖人になる予定だ」

 

「・・・・・・」

 

「さて、そんな聖人を殺したりしたらどうなるでしょう?董卓が悪逆非道という嘘が本当になり、こんな悪を許すわけにはいかないと、連合軍の先の戦で下がってた士気はむしろ上がるだろうな」

 

「む・・・・・・」

 

「特に孫策軍は天井知らずだろうさ。孫呉の熱い血は油より良く燃えるからな。身内が殺されれば相応の血の代償を払わせるのが彼女らの流儀だ。あんたらはもちろん、主である董卓も地の果てまでも追い詰めてその首を落とそうとするだろうな」

 

「むむむ・・・・・・」

 

「何がむむむだ。ともかく、こっちはそれ相応の準備が出来てるんだ。それを知ってなお、俺を殺ろうっていうなら好きにすればいい」

 

「くっ!」

 

一刀を睨みつけ、歯ぎしりをする陳宮。

 

もはや交渉の主導権は完全に一刀の手に握られていた。

 

陳宮に残された手は、先の発言をハッタリと断じて一刀を捕縛、あるいは殺すか。

 

疑惑を抱きながらも袁術、孫策の寝返りを受け入れるか。

 

二つに一つであった・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

「ウチらの負けやな。ねね。受けようや。あちらさんの寝返り」

 

「霞!」

 

「そう怒らんでもええやん。そもそもこの兄さん、一刀はウチらと敵対するために来たんとちゃうやろ?」

 

「ですが、それが虚言だったとしたら」

 

「なら、どうするんや?殺すんか?一刀の言ってることが本当やったら、殺しても不利になるだけやで?」

 

「しかし!」

 

その後も、張遼と陳宮の主張は平行線を辿った。

 

「埒があかんな・・・・・・そや!恋に手伝ってもらおうや」

 

「恋殿に?」

 

その場にいたものの視線が、呂布に集中する。

 

「・・・・・・?」

 

急に自分に話題を振られて、目をぱちくりさせる呂布。

 

「そうは言いますが霞。恋殿は策略などに考えを巡らすのが得意では・・・・・・」

 

「そやな。けど、忘れたんか?恋の持ち味を」

 

「持ち味?」

 

「あるやないか。恋にはアレが」

 

「・・・・・・ああ、アレですか」

 

納得したとばかりに手をポンと打つ陳宮。

 

「そう。アレや。ええやろ?」

 

「そうですね。そういうことなら」

 

「決まりやな。一刀」

 

「ん?」

 

「ちょっと腹ごしらえしたいんやけど、ええか?」

 

「あ、ああ」

 

「恋も腹減ったやろ?」

 

「・・・・・・こくっ」

 

頷くと共に、呂布のお腹が鳴った。

 

「よう働いたからなあ。兵士に握り飯でも持ってこさせるわ」

 

そう言って張遼は部屋を出て行った・・・・・・

 

 

 

 

 

しばらくして、皿に山のように積まれた握り飯が持ってこられた。

 

そして・・・・・・

 

「さあ、さっさと吐くのです」

 

「だから言ってるだろうが!俺は嘘なんか吐いちゃいねえよ!」

 

「その頑張りがいつまで持つでしょうね・・・・・・恋殿。あ~ん」

 

「はぐっ・・・・・・もきゅもきゅ」

 

陳宮が差し出した握り飯を幸せそうに頬張る呂布。

 

そのあまりの可愛らしさに陳宮はデレデレ。

 

張遼も頬を緩ませながら呂布に対して握り飯を差し出している。

 

一刀はその様子を、羨ましそうにただ眺めていた。

 

「くそ。これがお前たちのやり方か!」

 

「何とでもほざくがいいのです。さあ。恋殿にご飯をあげたければ正直に話すのです。寝返りは我らを陥れるための策略ではないのですか?」

 

「違うって言ってるだろうが!寝返りは正真正銘のマジだ!正直に言ってるんだから、俺もその輪に加えてくれ!」

 

「ねね、どないする?」

 

「まだ分からないのです。お前。恋殿のお腹がいっぱいになるまでに白状しないと、至福の機会を逃してしまうのですよ?」

 

「だから本当だって言ってるのに・・・・・・これじゃ拷問だ」

 

涙目になりながら言う一刀。

 

 

 

 

結局、寝返りが虚偽ではないと言う事は信じてもらえたものの、一刀は最後まで呂布にご飯を食べさせてあげる事は叶わなかったのだった・・・・・・

 

 

 

 

 

どうも、アキナスです。

 

どうしてこんなに投稿ペースが安定しないんでしょう?

 

最初に投稿しはじめた時は、毎日のように投稿出来ていたのに・・・・・・

 

いつかあのスピードを取り戻す事を夢見つつ、とにかく続けていこうと思います。

 

では、また次回・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 
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