アークはまた上空を旋回します。ゲイザーはレイピアを左手に持ち替えてブーツに仕込んであるナイフに右手を伸ばし、ゲイザーが投げたナイフをアークはひらりと躱すと、槍を突き出しました。
「先取ポイント!ゲイザー」
ゲイザーの左手のレイピアが、アークの右翼に突き刺さっています。アークの純白の翼は、真っ赤な血で染まっていきました。
「そんな…、ゲイザー様は右利きでは?」
「すまない、私は左利きだったのだが、子供の頃、親に矯正されて、普段の生活では右利きのフリをしていた」
「そう言えば、ナイフを投げる時はいつも左手を使っていましたね…。レイピアを左手に持ち替えた時に違和感を持ちました」
「試合を続行しますか?それともリタイアして手当てを受けますか?」
審判が試合を一時中止にして、アークに尋ねます。
「私はまだ負けていません!負けを認めるわけにはいかないのです…」
翼からポタポタと血を流しながら、槍を構えます。
「試合を続行します。両者構えて…、始め!」
アークは先程までの勢いがなくなり、弱々しい突きを繰り出しました。
「アーク殿、もう負けを認めてください…。私はこれ以上、戦いたくありません…」
「負けを認めさせたければ、完膚なきまでに叩きのめしてください!」
「翼を狙ったのは空を飛ばれると厄介だからです。地上に降りたあなたは手足を捥がれたも同然」
「真剣勝負に情けなど無用です。私はまだ戦えます!」
ゲイザーはアークの槍を左手のレイピアで振り払いました。
「私がレイピアを左手に持ちかえるほど追い詰められた相手はあなたが初めてです」
「先程投げたナイフは囮だったのですね」
「ナイフが躱されるのは予測済みだった」
アークはまた槍を構え直します。右翼はだらんと垂れ下がって、血で真っ赤に染まっていました。空が曇って雨が降り始めます。アークはそれでも槍を突き出し続けました。
「コールド勝ちだ。もうこの試合は終了にしよう」
「いいえ、勝負はこれからです!これを喰らいなさい」
アークが槍を天にかざすと雷が鳴り響き、槍に電撃が落ちました。その槍をゲイザーに突き出すとゲイザーは感電して、その場に倒れます。
「私にも奥の手の言うものがあるのです」
「こ、これは…。天候を操ったと言うのか?」
「はい、私は雷を操る事が出来ます」
「ふむ…。では勝者、アーク!」
審判はアークの方に手を挙げて勝利を宣言しました。気絶しているゲイザーは救護班に運ばれて行きます。
「剣士のゲイザー様を相手に魔法を使うのは卑怯かと思いましたが、私もここまで追い詰められた相手はゲイザー様が初めてでしたので…」
「アーク、おじさんに勝つなんてすごーい!」
ナタはアークに抱きつくと、ほっぺにキスをしました。
おしまい
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ビーストテイマー・ナタの完結編です。