テオは昔話を始めました。ミネルヴァも騎士団の後ろからこちらを見ています。
「思い出すな…。お前とパートナーを組んでいた頃の事を」
「私はお前の事を尊敬していた。頭も良くて腕も立つ」
「お前とのパートナーを解消してから、他の傭兵と組んだが、お前より立ち回りが上手い奴はいなかったよ?」
「私もお前とパートナーを解消してから、一人だけでモンスターの討伐をこなすのは大変だった」
「こんな時、ゲイザーがいてくれれば…と何度も思った。パートナーを解消した事を後悔していたよ」
「お前が騎士団長に昇格していて驚いたよ?」
「単なる繰り上がりによる昇格さ?実力のある者が次々に首をはねられて、私にくじが回って来ただけだ」
「まさか最期に戦う敵が、かつての親友だった男とはな…」
「私はお前と戦う気はないよ?私がゲイザーをここにおびき寄せたのは、アラヴェスタ国王を倒してもらう為だった」
アラヴェスタ国王はテオの話を聞いて憤慨しました。怒りに任せて喚き散らします。
「おのれ!テオドール、余を裏切ったな?誰かテオドールを捕らえよ」
「無駄ですよ?騎士団員には全員この計画について話してありました。皆、ダークの正体がゲイザーだと知っていて、国王を倒してくれるのを今か今かと待っていたのです」
「なるほど、国王を味方する者はもう誰もいないと言う事か…」
「お前が誰も殺さずにいてくれたおかげで、騎士団員の説得は簡単だったよ?国王を倒してもらえれば我々はこの悪政から解放される」
「ミネルヴァ!余を助けてくれ」
国王はミネルヴァにすがりつきました。ミネルヴァは汚いものでも見るような目で国王を見ています。
「国王陛下、私はダーク様…いえ、ゲイザー様に付いて行きます。マルヴェールに寝返る事に決めました。私は獣人のユリアーノ様と婚約しております」
「はーい!私もマルヴェールに寝返りまーす」
若い侍女も口々に言いました。誰一人、国王を助けようとはしていません。
「国王よ?チェックメイトだ。降参するなら命までは取らないでおく」
「うぐぐ…!どうしてこんな事に…」
「国民や部下の気持ちを何も考えず、己の私利私欲の為だけに好き放題していたからだよ?」
「わかった…。降参するから命だけは助けてくれ」
「ゲイザー、甘過ぎる!殺しておかなければ、何をしでかすかわからないぞ?」
「これが私のやり方だ。気に入らないなら、お前が国王を殺せば良い」
テオが剣を国王に向けます。
「ヒィッ!ゲイザー、助けてくれ?」
「今まで命乞いをして来た者を何人殺した?」
「許してくれ…。どうか命だけは…。頼む!」
「今どんな気分だ?お前が殺した者たちも同じ気分だった」
「余が悪かった。反省しておる。だから殺さないで…」
…つづく
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昔、書いていたオリジナル小説の第132話です。