No.955885

ビーストテイマー・ナタ129

リュートさん

昔、書いていたオリジナル小説の第129話です。

登録タグはありません

2018-06-10 16:54:39 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:93   閲覧ユーザー数:93

ゲイザーはミネルヴァが一人で掃除をしているところに背後から近づいて、口を手で押さえて物陰に引きずり込みました。

 

「手荒な真似をして申し訳ありません。話がしたいので、騒がないでいただけますか?」

 

ミネルヴァが震えながらコクリと頷いたので、ゲイザーは手をミネルヴァの口から退けます。

 

「実はある人からあなたの話を聞いて、あなたとその人を会わせたいのです。その事を伝えたくて、このような非礼を働いた事はお詫びします」

 

「ある人とは誰ですか?私は成人してから王宮を出た事がありませんので、王宮の外の人とは知り合えません」

 

「この店に行ってください。俺の行きつけのバー『ソレイユ・ルナ』と言う店まで行く地図です。そこに今夜、その人が現れると思います」

 

ゲイザーはアラヴェスタ城からバーまでの地図を書いたメモを、ミネルヴァに手渡しました。

 

「一体、誰なんです?こんな私にわざわざ逢いたいだなんて…」

 

「逢えばわかりますよ?ミネルヴァさんもきっと覚えておられるはずです」

 

ミネルヴァは何食わぬ顔で仕事に戻りました。ゲイザーは控え室に戻るとピーターの首に手紙を括り付けます。

 

「ピーター、大至急この手紙をナターシャに届けてくれ?」

 

ピーターはコクリと頷くと、猛スピードで走り出しました。城の前には寝袋を並べてファンたちがキャンプをしています。

 

「あっ、ピーターだ!」

 

ナタはピーターの首に括り付けてある手紙を読みました。物陰に移動してユリアーノを召喚します。ユリアーノはまだ人間の姿をしていました。

 

「お師匠様、これ読んでー」

 

「ん?何々、この『ソレイユ・ルナ』と言うバーに行けば良いんじゃな?」

 

「よくわかんないけど、おじさんから来た手紙なのー」

 

「ゲイザー殿には何か策があるんじゃろか?わしだけで行けと書いてあるのぉ」

 

「ナタは行っちゃダメー?」

 

「お酒は二十歳になってからじゃよ?大人になったら連れてってやるわい」

 

ユリアーノは尖った耳を隠す為に、ローブを深くかぶって夜の街へ向かいました。夕暮れ時に『ソレイユ・ルナ』は開店のプレートを入口に掛けます。ユリアーノは中に入るとカウンター席に着きました。

 

「マスターのおまかせをお願いする」

 

「かしこまりました」

 

バーテンダーのマスターはシェイカーをシャカシャカ振っています。そこへミネルヴァが入って来ました。とりあえずカウンター席に着きます。

 

「こんな店に来るのは初めてだわ…」

 

「お客様、マルガリータです…」

 

「えっ、私はまだ何も注文していませんよ?」

 

「あちらのお客様からです」

 

ユリアーノがミネルヴァの方を見て手を振っています。

 

「あなたは一体、誰なんです?」

 

「わしは一目でわかったが、ミネルヴァにはわしの事がわからんか…」

 

「もしかして…ユリアーノ様?」

 

…つづく


 
このエントリーをはてなブックマークに追加
 
 
0
0

コメントの閲覧と書き込みにはログインが必要です。

この作品について報告する

追加するフォルダを選択