ミネルヴァとユリアーノは二十歳になったばかりの頃に出逢いました。二十歳から参加出来るミスコンでミネルヴァは優勝して王宮に入り、同じくユリアーノも二十歳で受験出来る第一級魔術師試験に、一発合格して王宮に入ったのです。
「おはようございます、ミネルヴァ」
「ユ、ユリアーノ様!おはようございます…」
ミネルヴァは赤面して逃げるように去って行きました。
「うーん、私はミネルヴァに嫌われているのかな?なぜ避けられているのだろう…」
物陰でミネルヴァはまだ動悸がおさまらない胸に手を置きます。
「ユリアーノ様に話しかけられちゃったわ…。近くで見るとますます素敵」
ユリアーノの姿を遠くから眺めるのだけが、ミネルヴァの楽しみでしたが、目が合うと逃げ出すので、ユリアーノはミネルヴァに避けられていると感じていました。
「ちょっと!あんた一体、何をユリアーノ様から話しかけられてたのよ?」
侍女たちの控室に行くと、侍女仲間から周りを取り囲まれます。
「ただ挨拶をしていただけです。特に話はしておりません」
「良いこと?ユリアーノ様は絶滅危惧種の天然記念物なの!手を出してはいけない尊い存在だから、私たちも遠くで見てるだけなのよ」
「ミネルヴァったら、国王様に気に入られてるからって調子に乗り過ぎなんじゃない?」
「気に入られたくて気に入られたわけじゃありません」
「とにかく!ユリアーノ様には手を出さないでちょうだい?ユリアーノ様はみんなの王子様なんですから」
「王子ならちゃんといるじゃありませんか?国王のご子息が…」
「あんな豚の子供が王子だなんて鼻で笑っちゃうわよ?ユリアーノ様こそ本当の王子様だわ」
ミネルヴァが掃除をしているところに前国王の息子である、王子が通りかかりました。まだ十二歳の子供でしたが、ミネルヴァの尻を撫で回します。
「おやめください!殿下…」
「良いではないか、良いではないか」
そこへ、ユリアーノが通りかかり、当時王子だった現国王の手を掴んでやめさせました。
「殿下、おイタが過ぎますよ?」
「其の方!余にこんな事をして、タダで済むと思うなよ?父上に言い付けてやる…」
ユリアーノは前国王に呼びつけられました。
「ユリアーノよ、余の大事な愛息子に手を上げたと聞いたのだが?もしそれが事実ならば、其の方の首をはねなくてはならぬ」
「殿下は侍女の尻を撫でておりましたので、やめさせようとしただけです。侍女は嫌がっておりましたので…」
「それは誠か?我が子ながら、この歳で女癖が悪くて困った子じゃ…」
「父上!この男が侍女の尻を撫でようとしていたのです。嘘をついて余のせいにしています」
「ミネルヴァよ、ユリアーノがそなたの尻を撫でたと言うのは事実と相違ないか?」
「いえ、ユリアーノ様はそのような事はなさいません」
「ふむ、では王子が嘘をついたと申すのか?」
「父上!余は嘘など申しておりません。ユリアーノは、この侍女にイヤラしい事をしていました」
「何!それは誠か?余の寵愛しているミネルヴァに手を出したと言うならば、拷問して城門の前で晒し者の刑であるぞ?」
「余は見ておりました。今朝この侍女にユリアーノがキスをして、侍女が逃げて行くのを…」
「ユリアーノ!貴様という奴は…許せん」
「お待ちください!ユリアーノ様はそんな事なさっていません」
「ミネルヴァはユリアーノの罪をかばうと言うのか?それはミネルヴァがユリアーノに好意があると言う証拠だな!」
「私はユリアーノ様には興味などありません。好意など持った事は一度もないです」
ミネルヴァの言葉を聞いて前国王は満足したような笑みを浮かべます。
「実は侍女たちからの密告でお前たちが付き合っていると言われてのぉ。どうやら余の寵愛を受けたいが為の嘘だったようじゃな」
「ユリアーノ様とはお付き合いなどしておりませんし、私の愛するお方は国王陛下ただ一人でございます」
ミネルヴァはユリアーノを助けたい一心で嘘をつきましたが、ユリアーノはミネルヴァに嫌われていると思い込んでしまいました。
…つづく
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昔、書いていたオリジナル小説の第118話です。