ナタとアークが夜遅くに帰宅すると、フラウが玄関の前で待っていました。
「誰かと思ったら…アーク?その派手なファッションはどうしたの?」
「これには色々と事情がございまして…話すと長くなるのです」
「ピーターが…。ピーターいないとお家の中で一緒に遊べなくなるからつまんない」
「あら、ピーターがいないって…どうして?」
「ピーター、売っちゃったの…」
「えっ…、売っちゃったって何を?」
「私の考えが浅はかでした…。路上ライブではお客様一人当たり、五百から多くても五千が良いところなので、一晩では衣装代と楽器代くらいしか稼げなかったのです」
「私には何の事を言ってるのかサッパリわからないのだけど…」
「早くしないとピーターは誰か別のビーストテイマーに買われてしまいます。そうなると取り返すのは非常に困難です…」
アークは家の中に入ってから、順序立ててフラウに何があったか説明しました。
「そう…、そんなに苦労したのね…」
「ゲイザー様がおられれば、このような事にはなりませんでした。私にはゲイザー様のような智謀を巡らす能力は持ち合わせていないようです」
そこにゲイザーが帰宅しました。
「ナターシャ、随分と帰りが遅かったのだな?心配でアラヴェスタの近くまで探しに行ってしまったよ?」
「すみません、全て私の責任です…」
「その声はアーク殿か…。見たことない客人だと思っていたが…」
「髪型まで変わってるから、別人よね…」
「ナタの魔法で変えて見たのー」
「なんだか爆発したみたいな髪型ですね」
「アイドルっぽくして見たんだけど、ヘアーアレンジメントの魔法だよー」
「ナターシャの髪をクルクルにカールさせていたアレか?」
「うん、それと同じ魔法!」
「その魔法で私も変身させられないか?人相書きと違えば街を歩けるかもしれない」
「うーん、多分出来ると思うけど…。おじさんが獣人から人間に戻らないと、髪型は変えられないかも?それに眼は変えられないよー」
「実は少しまずい事になっている…。神父様がアラヴェスタ城の前で生きたままで縛り付けられて晒し者にされていた。衰弱していたので、早く救出しないと、命を落としてしまう可能性が非常に高い…」
「えっ!神父様が?早くお救いしなくては…」
「城の前には騎士団の見張りの者が大勢いたので、とりあえず一旦、マルヴェールに帰って来たのだが…」
「そのまま救出に向かっていたら、ゲイザー様は捕らえられていた事でしょう」
「私もそう思った。私一人では分が悪い」
「やはりゲイザー様は冷静に状況を把握しておられますね」
「フォン様やアーク殿が助太刀してくれれば、あの厳重な警備を突破して神父様をお救い出来るだろう…」
「神父様がいなくなったら、教会の子供たちはどうなるのでしょう?」
「おそらくは奴隷商に連れて行かれて、王侯貴族に売られて、奴隷としてこき使われる事になりますね…」
「奴隷になると、どうなるのです?」
「虐待を受けます。性的ないたずらもされるでしょう」
「そんな!子供を虐待するなんて酷い…」
「まずは子供たちから先に避難させましょう」
…つづく
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昔、書いていたオリジナル小説の第90話です。