No.954817

ビーストテイマー・ナタ89

リュートさん

昔、書いていたオリジナル小説の第89話です。

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2018-06-03 06:23:56 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:83   閲覧ユーザー数:83

青いリュートを買ってから、メンズショップに行きました。

 

「このお兄さんに似合う服、お願いしまーす」

 

「わぁ!あなたのお兄さん、すごくカッコ良いわねー」

 

「でも鎧がダサいでしょ?」

 

「鎧姿も素敵ですよー」

 

「鎧のままじゃ街で歌っても、地味過ぎて売れないと思うのー」

 

「お兄さん、ストリートミュージシャンをされてるんですか?」

 

「これからやってみようと思っているのです」

 

「えーっ、どこでやるんですか?私、あと少しで仕事、上がれるので絶対、見に行きます!」

 

「街の中央の噴水広場で路上ライブをやろうと思っています。コーディネートをお願い出来ますか?」

 

「それじゃ売れそうな服をコーディネートしますね!」

 

ナタが気に入るまで試着を繰り返し、アークは別人のようなファッションに身を包みました。

 

「これなら道行く女性の心を鷲掴みですよ?」

 

「私がすぐ売れると良いのですが…。ピーターが売れてしまう前に買い戻さないといけませんし」

 

「ピーターさんもアイドル目指してるお友達なんですか?きっとイケメンなんでしょうねー」

 

「いえ、こちらの話です。すみません…」

 

「お買い上げは服を上下セットと靴の三点で、合計は三万五千になりまーす!」

 

「服って結構高いんだね…。おじさんにもらったナタのワンピースも高かったのかな?」

 

少し薄暗くなりかけた噴水広場の前にやって来ると、噴水は街灯でライトアップされて、幻想的な雰囲気に包まれていました。カップルが噴水の周りでイチャ付いています。

 

「では、まずアップルパイの歌を演奏します」

 

「アーク、頑張ってねー!」

 

アークは青いリュートを手に持ち、激しくかき鳴らします。この世のものとは思えない澄んだ歌声で、即興なのに歌詞をスラスラと間違えず唄いました。

 

「一目見た瞬間から、恋に落ちたんだー。その曲線が美しいボディー。君を急いで家に持ち帰りー。シナモンの香りを身にまとったー。熟れて艶やかで美味しそうな甘い果実ー。僕は君にかぶりついたのさー。ああ、なんて素晴らしい初恋の味ー。僕の大好きなアップルパイー! 」

 

歌詞は微妙でしたが、なぜか足を止めて聴き入る女性が大勢いて、演奏後は拍手が巻き起こりました。ナタはいつもかぶっている魔女のトンガリ帽子をひっくり返して、観客に向かって大声で叫びました。客の中にはさっきのメンズショップの店員もいます。

 

「お金はここに入れてくださーい!」

 

女性たちはおひねりを奮発してくれたので、アークは全員に握手をして軽いハグをすると、女性たちは大喜びで拍手喝采、黄色い声援を送っていました。魔法屋に来ると店仕舞いしようとしていたので、店の外から見えるガラスケース越しに、ピーターの値札だけ確認します。

 

「ピーター、千五百万だね…。一千万だと思ってたのに…。お金が全然、足りない」

 

「一晩では思ったほど稼げませんでしたね。明日また出直しましょう?新曲の歌詞を考えなくては…」

 

…つづく


 
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