ナタはフォンを召喚すると、ついでにアークも召喚しました。アークは胸に手を当てて深々とお辞儀をします。
「フォン様もナターシャ様の使い魔になられたのですね。同じ主人に仕える者として、よろしくお願いします」
「うむ、カードに封印されたのは初めてだが、何か奇妙な感覚だな…」
「注意点としましては侍従関係にある者から、遠くに離れすぎると強制的にカードに封印されるのでご注意ください」
「そうなの?知らなかったー。アークはあの悪い魔術師のお爺さんが死んだ後にナタの使い魔に書き換えたの」
ナタがアークのカードに指を当てると、所有者欄には『ナターシャ』と象形文字で名前が浮かび上がりました。
「オズワルド様に封印された日に逃亡を企てたのですが、街を二つほど離れると引き戻されました。その後、折檻を受けたのです」
「街一つ分ならば大丈夫なのだな?」
「ええ、マルヴェールとアラヴェスタは近いので大丈夫ですね」
「目と鼻の先にあるのに、灯台下暗しでアラヴェスタ軍には、マルヴェールの場所は未だに知られていませんからね」
「強制的に呼び戻すことも可能なので、言霊を無視してもカードに引き戻されます。やはり折檻を受けたので逆らえませんでした」
「ナタ、呪いで痛い事なんかしないよー」
「ナターシャ様は使い魔を自由にさせておられますね」
「でもナタ、呪いの魔導書が欲しいのー」
「呪いの魔導書?そんなものがあるのか…。呪いなど覚えなくてよろしい」
ゲイザーが言うとナタは首を振りました。
「ううん、呪いの魔導書にね、呪いの解き方が載ってるから、それを知りたいだけー。ナタの魔導書は基礎的な魔法ばっかりなの」
「そうか、魔導書は高いからな…。私の貯金はほとんど残っていないし、アラヴェスタの通貨はもう手元にはないんだよ」
「また役所に行ってモンスター討伐したら稼げるよー」
「私自身が手配書にされているのに、役所に行ったら御用になってしまうよ?」
「そうなのー?じゃあナタとアークと王様でモンスター討伐行って来るよー!」
「アーク殿とフォン様がいれば、モンスター討伐は楽に終わりそうですね」
「明日から魔導書を買う為にモンスター討伐に行って参ります」
こうしてナタはアークと一緒にアラヴェスタの役所に通う事になったのです。役所にはナタの大人の姿の手配書も目立つ場所に張り出されています。
「おじさん、一億だね。すごーい!ナタとお姉さんは五千万だよー?」
「アラヴェスタ国王もゲイザー様を捕らえようと必死なのですね。人間の顔と獣人の顔、二つとも載っていますが、よく似ていますよ。絵師の方の腕には感服致しました!」
…つづく
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昔、書いていたオリジナル小説の第81話です。