ここ最近の皆の生活を振り返ってみよう。
華琳&桂花ペアは、あなたは20時間政務できますか?を、地でいっていたし。
春蘭&季衣ペアは、日夜兵相手に活を入れ、数多の精兵を揃えるために朝、昼、晩と武器を振り回しまくっているし。
秋蘭&流琉ペアは、連日の偵察に野宿そして討伐と、まぁ神経を磨り潰す毎日。
こんな日常を送っていた全員が、久方振りのお風呂をゆっくりと味わうということはそりゃあ必然的に気分も良くなるだろう。
人事の大刷新も一息ついたので、明日の午前は休みにして全員で酒盛りをしたいとの話になり、何故か皆が示し合わせたように一刀の部屋に集まっていた。
殴り飛ばされた挙句、湯にのぼせてしまった一刀が軽く夜の散歩をして自分の部屋に帰ってくると、勝手に部屋に入っていた6人は先にお酒を飲み始めていた(え? あれ? 鍵は……俺が持ってるんだけど?)
流琉が急いで作った夜食を肴にして酒は勧んでいく。
美女6人に男1人なんて妄想世界の住人のようだが、そんな世界で一刀はベッドの上で1人腰掛けている。
「ん? ……どうした北郷、お前は飲んでいないのか?」
気がつくと、そっと秋蘭が一刀の隣に座ってきた、表情は変わらないがよく見ると目がトロンとしている……かなり酔ってやがんな。
「……なぁ北郷?」
秋蘭の手が一刀の肩にのり体を寄せてくる。
__酒臭いぞー……
「お前は、どういった女が好みなのだ?」
「? なんだよ突然……ん~その人らしく生きている人が、好きかな?」
「ふふ……そうか、じゃあ私のようなものはどうだ?」
「……………………酔ってる、だろ?」
「どうかな?」
秋蘭の白くて細い手が一刀の頬を撫でる……ひんやりとした手が火照った頬に気持ちがいい。
「///あまりからかわないでくれないか?」
「ふふ……」
秋蘭はどうやらかなり悪酔いしているらしい。
__疲れた体なんかで飲むからだ!
まさか秋蘭がこんな酒癖だとは、チラリと横を見てみると顔を赤くした春蘭が一刀の方をキッと睨んでいた。
妹である秋蘭のこんなとこを見て、姉である春蘭はイラついてるのだろう……
そんなことを一刀は考えていたのだが、目が合った春蘭は視線を外してくれない。
__す、すわり心地が超悪い。
一刀が無理にフイっと視線を外すと、春蘭がグワッ! と襲い掛かってきた。
「ちょ、ちょっ春蘭?! イタタタ!」
一刀に覆いかぶさるように飛びついた春蘭は、その爪で一刀の顔を引っ掻く。
「ほんごうぅぅ! お前はわにゃしを避けているのかぁ~~!!」
「いててててっ! な、なんだよ春蘭。
避けてなんかいないって!」
「にゃあどうして私と手合わせしてくれにゃいのりゃ~!」
カリカリカリカリカリカリカリカリ
「手合わせぇ?
いきなり何言ってんの? そんなこと言われたことないじゃないか?」
「うぅぅぅう……いっりゅも、いっりゅもいっりゅもいっつも!
わたひにゃほんごうに会いに行りゅと、誰かといっしょにいるにゃりゃいか!!」
会話をしていてもひっかきを続ける春蘭。
__やべ、蚯蚓腫れどころで済むのかコレ? 血出てない?
「いっつもって、一体いつのイテテ! ことだよ?
痛いって!」
「初めに行ったにょきは季衣が居にゃ! 次はりゅりゅがいた! 次に桂にゃとなんか話してにゅし! 秋蘭とでかけりゃら帰ってこにゃかった~!」
春蘭のひっかきはここでようやく止まってくれたので、漸く一息つけた一刀なのだが、冷静になるとこの体勢は非常に不味いことに気がついた。
いつの間にか一刀は布団の上に仰向けで寝転がっており、その上で春蘭が寝そべりながらぐずり顔なのだ。
「「「「「…………」」」」」
__他の皆の視線がイタイ!
「随分と見せ付けてくれるじゃない? ……一刀」
華琳がニヤニヤしているのだが……
__あれ? なんか額に血管が……
「あぁ、姉者かわいいなぁ」
__秋蘭、悦ってる場合じゃないよ。
「兄ちゃん! ボクも~~!」
季衣は一刀と春蘭の間にグイグイと潜りこんでくる。
「わ、私も!」
出遅れるわけにはいかないと流琉も季衣を押して、ググイっと入ってきた。
__流石に……3人は重いんだけどな……
そう思っていると、春蘭がまたぐずりだす。
「ううぅ~……またそうにゃってほんにょうはわらひを放っておくのりゃ?!」
ボス
__お、重い。
ってか俺と春蘭の間にいる2人は大丈夫か?
顎を下げて自分の胸の方を見ると、季衣の満点の笑顔と流琉の照れくさそうな笑顔が見えた。
__まぁいいけどさ、それにしても春蘭がまさかの絡み酒……しかも猫化かよ……
姉妹揃って酒癖は良い方ではないようだ。
「ふむ……一刀、明日の午前中に春蘭と手合わせをなさい」
「にゃあ?!」
「はぁ? ……なんで?」
一刀と春蘭は体を勢いよくおこすと、華琳の提案に驚いていた。
「そうでもしないと春蘭は治まらないわよ?
それに私も見てみたいわね」
そう言ってお酒を優雅にコクリと飲み干す華琳。
「北郷! 明日の朝! 中庭にゃで待っているからりゃ! かなりゃずこい!」
春蘭はそういって一刀の襟首を持つと、ブオンブオンと揺すりまくる。
__うぇぇ……季衣や流琉が俺の下半身をがっちり固めているので身動きがとれない~~……
「姉者、そろそろ放してやらないと北郷が明日に響くぞ?」
秋蘭が優しく姉を諭すと、春蘭はパッと手を放して一刀から飛び降りる。
「華琳さみゃ! 私はこれで失礼しにゃす、部屋に戻って明日にそりゃえます。
いくに! 秋蘭!」
華琳にそういい残すと、春蘭は秋蘭を掴んで自分の部屋へと走り去っていった。
「おいおい……俺は嫌だぞ?
春蘭とやりあうなんて……」
「あら、あんなに喜んでいるのだから付き合いなさいな。
それに貴方の力量は私も以前から興味があったわ、丁度いい機会じゃない。
季衣や流琉も見てみたいと思わないかしら?」
「ハイ!」
「兄ちゃんと春蘭様……どっちが強いのかなぁ」
2人はどっちが強いかで盛り上がっているようだが、一刀はどうしてもやる気が出ない。
「俺はやる気ないんだけど……」
「…………どうしてかしら?」
「………………」
「春蘭が、女だから?」
その言葉と共に華琳の目が、かつてないほど鋭くなる。
「そう考えているのなら春蘭……いえ、ここにいる全員への侮辱よ。
もし明日手を抜いてでもごらんなさい。
あなただろうと、その場で頸を刎ねるわ」
場の空気が一瞬で凍りつく。
体感温度が10℃位下がる感じがした、それだけに華琳が本気だということがよくわかる。
「……さて、今日はこれまでにしましょうか、桂花。
部屋に戻るわよ、今日は閨に来なさい」
「はい! 華琳様!」
桂花に尻尾があるならば、きっとフリフリしているに違いない。
夜を誘われた桂花は上機嫌に華琳とともに部屋を出て行った。
部屋に残されたのは一刀と季衣と流琉のみとなる。
「……兄ちゃん……」
「兄様……」
心配そうに見上げる2人だが、一刀は2人を見ることができなかった。
__どうしよ……
明日の朝まで後9時間ちょい。
女だから……それもあるんだけど……それだけってわけでもないんだけどな。
深いため息をつかざるを得ない一刀だった。
「北郷! 遅いぞ!」
昨夜あんなに酔っていた春蘭は、元気ハツラツで中庭の訓練場で刃を潰した模擬大剣をブンブンと振り回していた。
既に華琳と秋蘭、桂花はよく見えるところに座っている。
季衣と流琉も一刀の手を握っていたのだが、秋蘭に手招きされるとチラチラと一刀の方を伺いながらも走っていった。
ザッ
訓練場に入ると、体を温めるために準備体操をして、鉛で重さを調整した木刀を軽く振るう。
春蘭も体を動かし続けていたが、既に準備はできているらしく一刀の様子を見ながら無駄に体力を消耗しないようにしていた。
「もういいだろう?」
「……あぁ」
体を適度に動かした一刀は場の中央に移動して春蘭へと向き直ると、木刀を正眼に構え精神を戦闘へと向けさせる。
__!
辺りの空気が一変した……どうやら春蘭も戦闘態勢に入ったらしい。
猛獣の檻に投げ入れられる感覚といえばいいか。
なんとも原始的な恐怖を呼び起こされてしまう。
2人はそのままお互い向かい合ったまま、動きを止めた。
既に2人とも、お互い以外に意識できない状態に入っている。
離れてみていた華琳達も、2人から吹き荒れる緊迫感に息を止めてしまう。
ヒュー
一陣のささやかな風が、吹いた。
息をのむ一同はこのまま硬直が続くのかと思われたのだが、春蘭はそこまで我慢強いほうではない。
”機”を力でねじ伏せるのが彼女だからだ。
「……ッハァ!!」
合図もきっかけもなく、ダッ! と文字通り駆け出す春蘭。
その脚力は恐ろしく、十分な距離を保っていたはずなのだが一瞬で間合いを詰められてしまう。
「ッ……!」
予想の一回り上まで備えていた一刀だが、更にそれをも上回る速度にただ驚くしかない。
「ダァァ!!」
常人であれば視認すら難しいであろう一撃。
だが、慌ててはいたが一刀は最小限の動きでそれをかわす、まさに絶妙なボディバランスだ。
「アァァアアアアアア!!!!」
二、三、四……都合六合。
攻撃自体はいたってシンプルな斬撃であるが、暴風の如き連撃。
豪撃の連続で剣風が舞い上がる訓練場。
ブブブブオン
__チッ、やっぱりかよ……
一刀は心の中で舌打ちをする、この展開自体は予想通りなのだ。
反撃のきっかけがこれでは掴めない。
「どうした北郷!!」
春蘭の発する怒号。
__なんつうプレッシャーだ。
春蘭から発せられる裂帛の気迫に、体が悪戯に硬直しないように気をつける。
既にかわした攻撃は10を超えた。
ただ押されるだけの一刀であるが、それでも観察をし続ける。
そして14撃をかわした時、一刀は初めて自発的に行動を起こした。
「……フッ!」
ガギャイン
それまでほとんど積極的な動きが無かった一刀の突然の動き。
勢いに乗っていた春蘭は、そのまま斜めに振り下ろされる大剣の側面に木刀を当てられ、大幅に軌道をずらされた。
離れて見ている者達からしても明らかに致命的な隙。
華琳達は一刀の反撃に目を見張る……が……
……スタッ
全員の、それこそ春蘭でさえ一撃がくると思っていたのだが、一刀は後ろへ下がった。
唖然とした場が止まる。
「ふ、ふざけてるのか? 北郷」
俯いた春蘭の声が震えている。
「…………」
一刀からの返答は無い。
春蘭は俯いていた顔を上げると、普段からは信じられない程の獰猛な顔へ変わった。
口を大きく開け歯を食いしばり、目は猛禽の如く鋭くなる。
「ガあああァァァァアアアア!!!!!!!」
城が震えたかのような咆哮とともに、春蘭は大地を蹴り飛ばす。
さきほどよりも更に早い、信じられないような剣速。
だが、どれほどの剣を振るっても、一刀は冷徹なまでの瞳でかわしていく。
「……兄ちゃん」
「にい……さま」
2人はその光景を心配そうな眼差しで見る、これは本当に訓練なのだろうか?
ガドッ
また一刀が春蘭の剣を逸らした。
先程より勢いも早さもあるが、それはより隙も大きくなるということだ。
だが……退がる。
「! ……ぁぁああアアアアアアアア!!!!」
もはやこれは訓練などではない。
春蘭は2度、一刀が下がったことによりキレた。
先程の気迫の嵐に殺気が入り混じり、一刀の肌を突き刺していく。
だがそれでも一刀は一切の情を棄て、一分の隙も無く冷静に攻撃をかわす、かわしていく。
こんな攻撃、いくら刃が潰れていようと当たれば死にかねない。
それにこの状況……果たして一撃で済むかどうか……
どれほどの時間が経ったのだろう?
荒れ怒り猛る春蘭だが、もう4度攻撃を逸らされ退がられている。
「ガアアアアアアアア!!!!」
春蘭の体力に限りはないのか?
そう思わせる程に、勢いが止むどころかどんどんと増していく。
……ギリッ!
流琉はそのイヤな音がした方を向くと、華琳が目を見開きながら怒っていた。
その鬼気迫る程の覇気に押される流琉だが、なんとか秋蘭に助けを求めようと彼女をみる……けれど。
秋蘭も目を限りなく細め、見るもの全てが凍りつくかのような無表情をしていた。
ガギャイイインン
重い音が響き渡る訓練場で、流琉は恐怖で思わず視線を逃がす。
それほど、彼女達の怒りは凄かった。
流琉は視線を訓練場に戻すと、自分の敬愛する兄が5度目の後退が終わったところ。
駄目……そう流琉が思った瞬間。
「止めなさい!!!」
訓練場に怒声が響く。
その言葉に全員の動きが止まった。
「これほど不快な気持ちにさせられたのは久しぶりだわ。
北郷一刀! 覚悟はできているだろうな!」
華琳の本気の声。
普段、万の軍勢に勇気を奮わせる勇ましい声は、ただ1人の男を糾弾するために場に響く。
隣に供えている秋蘭も、視線で殺せるならば人一人十分に殺せるほどの鋭さを有していた。
「………………」
一刀が構えを解いて木刀を下ろす。
すると、一刀の前で俯いていた春蘭はきつく目を瞑り、ブルブルと震えながら何かに耐えていたようだが……やはり耐え切れなかったのだろう。
カラン カラン
乾いた音を立てる大剣を残し、後ろを向いて駆け出していく。
その背中は、泣いているかのようだった。
「秋蘭!」
その声にハッとした一刀は華琳を見ると、隣の秋蘭が既に愛弓・餓狼牙に矢を番え構えていた。
「その無礼者を消しなさい!」
その一声に秋蘭の手が矢から離れる。
弓が悲鳴を上げそうになるほど引かれていた矢は、ただ真っ直ぐに、そして正確に一刀に吸い込まれていく。
季衣と流琉が一刀へ向かって飛び出したが、当然矢のほうが早いに決まっている。
横顔だけ向けていた一刀は、その向かってくる矢は何もしなければ、自身の眉間を貫くことを理解していた。
だから……
バキッ
素早く振るわれた木刀が矢を叩き落す。
その光景を見ていた華琳は一層視線を鋭くさせ、秋蘭に次射を要求しようとするが、一刀が止めた。
「…………勘違いするな、華琳」
この場に初めて、一刀の声が響いたのだ。
華琳は秋蘭にいつでも打てるよう備えさせながら、どういうつもりかと問いただす。
「だから、勘違いしないでくれ華琳。
……俺は本気で闘っていたよ」
「本気……ですって?
ならば何故反撃しなかった!!?」
華琳の叫ぶような怒声。
でも一刀は揺すぶられない。
「反撃?
……反撃なんてできないよ」
「貴方は幾度か春蘭から隙を作っていたでしょう?!
どうしてその時反撃をせずに退いたのかを聞いているのよ!」
「隙を作った……ね。
やはりそう見えるか……秋蘭もそう思うのかい?」
矢を番えたままの秋蘭は視線を一切緩めない。
「……あぁ」
__はぁ、怒ってるなぁ……
一刀はまた深い溜め息をつく。
残念ながらこうなることも予想済みだったのだ。
だが、口でいくら説明しても彼女達は納得しないだろう。
何より春蘭に対して申し訳ないという罪悪感が、一刀の中に渦巻いていた。
「華琳、1週間くれないか?」
「…………なんですって?」
「1週間後の夕方、俺はここに来る。
そこで春蘭ともう1度勝負をしたい。
……それで納得してもらえると思うんだ」
一刀は冷静に、そして努めて誠意を込め真剣に頼む。
その目は本気以外の何者でもなかった。
「……いいでしょう。
ただし1週間後、私達全員が納得ができなかった場合、私は兵を動かしてでも貴方を殺す」
「あぁ、その時は君の手で俺の頸でも刎ねてくれ」
その言葉を残して、北郷一刀はその場を後にした。
後をついていこうとした季衣だが、流琉に引き止められる。
兄の背中は、誰もついてくるなと言っているかのようだった。
「……グゥゥ、フグ……ウゥゥ……ヒグ……」
逃げ出すように訓練場を後にした春蘭は、自分の部屋の布団で泣いていた。
北郷を気に入っていた、だからこそ許せない。
手を抜かれたと感じた春蘭は自分の力の無さに泣いた。
__あのように手を抜かれるなど!
武人としての恥……
そう初めは考えていたのだが、時間が経つにつれ少し違和感があることに気づいた。
__違うんだ……自分が認めた北郷に認められない自分が恐いんだ。
春蘭の頭はお世辞にもよくはない、だからこそ物事をシンプルに捉える傾向がある。
そんな彼女だからこそ、その違和感の正体に早く気づけたのだ。
普通の人ならば、もっと時間がかかる解答だろう。
だが人より早く自らの心の機微に気づいたとしても、悲しさは何も変わらない。
「…………エグッ……クゥゥウ…………」
悲しかった。
あの日、季衣達の村で自分の絶対な自信の体現である武を防いだ彼を、たった一瞬でしかなかったあの刹那を、互いに目線を交叉したあの時間を。
春蘭はあの時、北郷一刀の剣を受けてそれを認めたのだ。
そんな一時で互いの何がわかるといわれそうだが、達人が拳で語りあうのと同様、それほど濃い瞬間であった。
__自分の武が未熟だというのか?
だから認めて貰えないのか?
女だから?
弱いから?
様々なことが頭を巡るが碌に考えがまとまらない。
ただただ悲しかった。
嗚咽を零しながら泣いていると、部屋に秋蘭が入ってきた気配がする。
秋蘭は春蘭の頭に手を置いて優しく撫でてくれる。
しばらくそうされていたが、我慢しきれなくなって妹の胸に飛び込んで肩を震わして泣いた。
部屋に嗚咽が流れる中、妹は優しく姉を抱きしめ、その黒くて美しい長髪を撫でている。
そして……しばらく時間が経ち、春蘭は少しだけ落ち着いてきた。
その機を見計らって秋蘭は、姉の耳元に口を寄せてあの後のことを伝える。
__1週間後?
妹の口から伝えられる事実。
__1週間後に再戦を北郷が希望している?
ガンガンとする頭で初めはよくわからなかった春蘭だが、徐々にその意味を理解すると秋蘭に感謝をして部屋を後にした。
春蘭は誰にも見られないように急いで水場に向かうと、冷水が溜まった桶に自分の頭を突っ込んで息を止める。
キンキンする刺激に頭がクリアになっていった。
ザバァ
顔を上げた春蘭は、水が滴る長い髪を手で後ろ手に流し、犬のようにブルブルと奮って水切りをした。
「……ハァ…………ハァ……」
春蘭自身は気づいていないが、その姿はとても健康的な色気に満ち溢れていた。
__グイ……
「ん?」
服の裾が引っ張られているので目線を落とすと、今にも泣きそうなのを必死に我慢している季衣が、手に”たおる”を持って自分に差し出している。
「……ありがとう、季衣」
季衣から”たおる”を受け取った春蘭は髪を拭き終わると、目を瞑る。
パシーン
傍から見ているとこっちが痛くなりそうな程の勢いで、自分の頬を両手で叩き、気合を入れた。
__1週間だ。
春蘭は季衣を連れて訓練場へと走った、自らを鍛え上げるために。
「へえ……それはできますが……この材質になりますかね?」
「う~ん、もうちょっと軽くならないかな?」
「ですが、そうしますと用途を成さないですよ?」
「ん? ……あぁ。
大丈夫だよ、俺は普通とは違う使い方だしね。
耐久力は求めていない形でいい。
自分の身を自身で傷つけなければ、それで構わないんだ。
だから軽くて体の動きを制限しないのをお願いしたい」
「はぁ、そうでしたら……このような形でいかがでしょう?」
「……うん、いいね。
これで頼むよ、御代は前金でこれで」
「! ……こ、こんなにですかい!?」
「その代わりに、1週間以内で頼めないだろうか? できれば調整もしたいから5日がいい」
「5日、ですかい? そんなんだと碌なものができませんよ?」
「いいんだよ、極端な話なんだが……一週間後に間に合えばそれでいいんだ」
「何やら事情があるようですなぁ……わかりました。
今している仕事を後回しにしてでも全力でやらせて頂きますよ」
「すまないな」
一刀は頼みごとを済ませると、外に出て1つ伸びをした。
__1週間、か……
ならばしっかりと勘も取り戻さなくてはいけない。
一刀は刀を1つ手にすると、城外へと歩き出すのだった。
どうもamagasaです。
とりあえず初めに言いたいことですが……ぁありがとうございます!!!!!!
”お気に入り”に登録して頂けた方が100人を超えていました!
これも応援して頂いた皆さんのおかげです! ありがとうございます。
(お気に入りランキングに乗っててビックリしました。 何回か見直してしまいましたよ、テンション激上がりです)
皆さんコメントをいつもありがとうございます!(前回季衣のコメントがあってホント嬉しかった……)
一刀君をどの役割にさせるかですが……三羽鳥の関係もありますので難しいところです、考え中ですね。
今回の話ですが、一刀君と春蘭の対決になっています。
この組み合わせにした理由は次のあとがきで書きますが……いかがでしたでしょうか?
キャラに違和感がないか心配です。
次話は勿論この続きになります。
あ……後、”春一番!”は春蘭の拠点も兼ねています。
それでは春一番! 後編でまた……
一言
二回連続でガンダムはどうかと思うのですが……
先日ゲーセンでガンダムをやったのですが……ユニコーンはガンダムですか?(特に目が……)
バーチャロン、ヴァルキリー、アーマードコアに見えてしまった……バンダイさんごめんなさい。(自分の愛が足りないんですね、わかります)
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季流√の”強さ”に関するバロメーターの話になります。
いつも応援ありがとうございます! コメントもこんなに頂けて……有難いです。
これからもよろしくお願いします。