艶やかな黒髪を風に吹かれるままにして少年は縁側に腰掛けていた。紫水晶のような美しい瞳は庭の一点を一心に見つめている。視線の先には少年の兄弟たちと戯れている青年がいた。ひとつに結い上げられた美しい翡翠色の髪は体が動くたびに揺らめいた。
ふと二人の視線がからみ合う。青年、にっかり青江はその名の通りにっかりと笑って手を振った。少年、薬研藤四郎はやわらかく微笑み手を振り返す。
戦の合間の平和な時間。泡沫のような、夢のような。
やがて来るであろう別れを二人はしっかりと理解していた。だからこそ、この時間の眩しさも尊さも大切にできた。冗談を交わしながら、笑いあいながら、慈しみあいながら。いつ折れるとも知れない自分たちの定めを受け入れ、しっかりと今この時を生きていた。
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いつも素敵な作品を拝見させていただいているくるゆさんにお礼がしたい一心で15分で書き上げたにか薬SS処女作です。
うちの本丸のにか薬日常の一コマ。
2015年8月18日 01:09