時間は少し前に遡ります。ナタは牢の外に出ると、ピーターとアークを召喚しました。ピーターはナタの肩によじ登り、アークはナタの後ろからついて来ます。地下牢から階段を昇って出入口から覗くと、看守たちがトランプをしているようです。
「うーん、逃げられそうにないなぁ」
「とりあえず一旦、先ほどの場所に戻りましょう。ゲイザー様に指示を仰ぐのです」
「でも、お話の邪魔したら、おじさん怒らないかな?」
「少しだけお話を聞いた感じでは、どうやらあの女性はゲイザー様の昔の恋人のようですね」
「えっ!あのお姉さん、おじさんの元カノだったの?」
「今は再会を喜んでいる場合ではないので、状況を説明して、ここから脱出してから、ゆっくりとお話を続けていただきましょう」
ナタとアークが地下に引き返すと、ゲイザーはサラと積もる話をしていました。
「ゲイザー様、出入口には見張りが数名おりますので、強行突破するのは難しいかと…」
「そうですか…。アーク殿に一つお願いがあるのですが…」
「はい、なんでしょうか?」
「あなたには我々と別行動してもらいます。私は以前、騎士団にいましたので、この城の事は大体、把握しております。国王の寝室が城の最上階にあるのですが、ここから出たら城の一番上にある窓の前で待機してください」
「わかりました。ナターシャ様をお守りするのは、ゲイザー様にお任せします」
「私は顔が割れているので、カードに封印してナターシャに持ち歩かせます。何かあったら、すぐ私を召喚するんだよ?」
「うん、わかった!でも、連れて行かれた獣人のお姉さんはどうするの?」
「それとサラにも一つお願いがあります」
「はい、なんなりとお申し付けください」
「あなたの侍女服をナターシャに貸してやって欲しいのです。修道服のままでは目立ち過ぎますから」
ゲイザーとアークが少し離れた場所に移動した後、サラは牢の中で侍女服を脱いでナタの修道服を着ると、牢の中に残りました。ナタはサラの脱いだ侍女服に着替えて牢から外に出ます。
「では、これから私一人で出入口を強行突破致します。あとの事はお任せしました」
アークが出入口を飛び出すと、看守たちはトランプをやめて襲いかかりましたが、アークは軽く槍で薙ぎ払い、城の外へと脱出に成功しました。
「ゲイザー様、ご武運を祈ります…」
看守がアークを追いかけて行った後を、メイド姿のナタが出て来ました。肩にネズミを乗せ、胸の谷間に剣士のカードを差し込んでいます。
「お姉さんを探しに行かなくちゃ!」
フラウが窓から飛び降りた後、国王は慌てて寝室の前で待っていた指揮官の男を呼びました。
「女が身を投げた!あの女はゲイザーの妻だと言っていた」
「ゲイザー?あの裏切り者め…」
…つづく
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昔、書いていたオリジナル小説の第56話です。