男はしつこくデートに誘って来ましたが、フラウは丁重にお断りしていました。寄付金をもらっているので、邪険には出来ず、嫌な事を言われても我慢しています。
「なあ、一回で良いからさー?ちょっとお試しで、デートしないか?」
「教会の仕事があるのでデートしている暇などありません」
「あんただって本当は人肌が恋しいんだろ?」
「男の人には興味ありませんので…」
「こんないい身体してるのにもったいない…」
「な、何をなさってるんです?」
フラウの背中に男の手が回り、だんだん下へと手を滑らせました。フラウは男の脇腹に肘鉄を食らわせて、手刀で男の手を振り払いました。男は脇腹を押さえながら、激痛に苦しんでいます。
「なんでぇ!ちょっとケツ撫でたくらいで…」
「私は娼婦ではありません」
男は怒って帰って行きました。それ以来、教会に寄り付く事は二度とありませんでした。
「神父様、申し訳ありません。せっかくの寄付金が…」
「寄付金よりあなたの身の方が大事です」
「私のような者はシスター失格でしょうか…」
「いいえ、ところであなたは何か護身術でも習っておられたのですか?」
「ええ、育ての親から武術を少々、仕込まれておりました」
「大の男を女の手で軽くいなすのを見ていましたが、驚きました…」
「神父様に見られていたのですね…。じゃじゃ馬でお恥ずかしい限りです」
「いえ、頼もしいですよ?」
フラウがお使いを頼まれて、街に来た時のことでした。騎士団の豪華なパレードが街道を行進しています。
「どうせまた全滅するんだろ?国王は何度やってもわからないのかねー。志願する奴もバカな奴らだが…」
「しっ!そんな事、言ってるの騎士団の奴らに聞かれたら首をはねられるぞ?」
「獣人にはかなわねぇって早く気付けば良いのに」
「獣人討伐隊に志願すれば、俺たち庶民の一年分の稼ぎより多く貰えるんだ。腕に自信があれば俺だって志願するさ」
「そんな事に税金使うくらいなら、もっと税金を安くしてくれねぇかなぁ」
「あの…このパレードはなんなんでしょう?」
「おや、シスターは初めて見たのかい?獣人討伐隊の行進だよ」
「あっ…あれは!あのお方がいるわ。やっと…やっと見つけた」
フラウはお使いを忘れて、騎士団の跡をつけて行きました。
…つづく
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昔、書いていたオリジナル小説の第49話です。