夜になって子供たちが寝静まると、懺悔の部屋に向かいます。ここでは信者たちが日頃の行いを懺悔して行くのですが、秘密厳守なので決して口外してはいけません。カーテン越しに相手の姿は見えず、声だけが聞こえて来ます。
「神父様…。俺はなぜ結婚出来ないんでしょうか?恋人が出来ても、上手く行かないんです」
「神父様は今用事でおりませんので、私がお話をお伺いします」
「若い女の声!この教会にいるシスターは年増のヨボヨボ婆さんばかりだと思っていたが…」
「恋人と上手く行かないと仰いましたが、その女性とどのような事があったのでしょうか?」
「浮気されたんだ!俺に内緒で他の男と密通してやがった…。あの女、許せねぇ!」
「そうですか…。私にはその女性の気持ちはわかりません」
「シスターは男とやった経験はあるのかい?」
「ありません。シスターになる為には純潔の乙女でなくてはなりませんので…」
「へぇ、じゃあ他の婆さんたちも経験がないのか?まあ、不細工揃いだから男に相手されそうもないが…」
「昔は若くて美しかったのでしょう。私も老いればいつか美しさを失うと思います」
「シスターはどんな顔してるんだ?ちょっと見せてくれよ」
男は懺悔の部屋の仕切りのカーテンを無理やり開けました。
「いけません!カーテンを閉じてください…」
「こりゃ、驚いた!かなりの上玉じゃねぇか?こんなべっぴんさんがこの教会にいたなんて、今まで知らなかったぞ」
「私はつい最近ここに就職しました。まだ新米のシスターなので、わからない事も多いです」
「なぁ、シスター。寄付金はたんと弾むから、俺と仲良くしないか?」
「寄付金は有難く受け取らせてもらいますが、私は男性とお付き合いする事は出来ません。シスターの戒律なので…」
「よし!いつもの二倍、いや五倍寄付するぞ」
「ありがとうございます。きっと神父様もお慶びになるでしょう。子供たちにもお腹いっぱいご飯を食べさせてあげたいです」
この後、男は足しげく通うようになりました。
…つづく
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昔、書いていたオリジナル小説の第48話です。