フラウはシスターとして教会で働く事になりました。シスターの仕事は、身寄りのない子供たちに勉強を教えたり、食事を与えたりします。
「フラウが来てくれて本当に助かっています」
「いえ、神父様は覚えていらっしゃらないかもしれませんが、私は十年前にこの教会にお世話になっていた事があるのです…」
「はて?十年前ですか…。今までここで預かった身寄りのない子供は何百…いや、何千人もおりましたし、養子にもらわれて行った子供の名前を全て把握してはおらず、申し訳ございません」
「そうですか…。病気だった子供もいたと思うのですが、その子はどうなりましたか?」
「病気の子供も大勢おりましたが、亡くなってしまったのではないでしょうか…。医者にかかるにしても費用がかかりますし」
「私と仲良くしていた子供がいたのです。亡くなってしまったのですね…」
「教会の運営資金は貴族からの寄付金で賄われていますが、年々、寄付金の額も減っていますからね。こんなご時世ですし、仕方のない事ですが…」
フラウは教会の台所でポトフを作りました。野菜をスパイスで煮込んだシンプルな料理です。
「シスター!おかわり」
「人数分しかないの。私の分を食べても良いです」
「フラウ、それはいけません!」
「神父様、なぜです?」
「あなたの分はあなたが食べてください」
「でも、あの子はお腹を空かせています」
「あの子にあげたら、他の子も欲しがります。他の子が欲しがったら、どうするんですか?」
「はっ!そうですね…。私の考えが浅はかでした。申し訳ありません、神父様」
午後からは子供たちに勉強を教える時間です。
「今日は騎士道精神についてお話します。騎士とは弱きを助け、強きを挫くものです。貧しい者を保護して、女性や子供にも優しくします」
「シスター!騎士から酷い目に遭った貧乏人や友達がたくさんいるよー?」
「確かに、そう言う騎士が多いですね…」
「それに騎士は弱い者いじめばかりして、強い奴にはヘコヘコしてるよー」
「そうね、でも私は本当に立派な騎士様にお逢いした事があるの」
「そんな人いるのー?会ったことないよー!」
…つづく
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昔、書いていたオリジナル小説の第47話です。