フラウは覚悟を決めたような険しい表情で言いました。
「私が女王に即位して、この国を変えます!」
「急にどうしたんです?あんなに女王になるのを嫌がっていたと言うのに…」
「女王になれば掟も変えられるでしょう?私が良いと判断すれば、ナターシャちゃんを人間のまま、マルヴェールに住まわせる事も出来るはずです」
「それは…確かに可能でしょうが、二人っきりでデートが出来なくなりますね」
「従者も女王の命令には逆らえないはず。デートに付いて来ないように言えば済むだけの事」
「しかし女王の身にもしもの事があったら困ります。護衛は付けた方がよろしいかと…」
「護衛ならあなたがいるじゃありませんか?私の勇者様が私を守ってくださいます」
「私一人で守りきれる自信はありませんが…」
「ふふ、私がなぜ時期女王に選ばれたかわかりますか?女性の獣人のみで開かれたマルヴェール武術大会で優勝しているのです。護衛など必要ありません!」
「やれやれ、とんでもないお転婆の女王様になりそうですね…」
「だから言ったでしょう?私には女王になれる素質はありません。ワガママばかり言って困らせる事になると思いますが、私が間違っていたらゲイザー様が叱ってください」
「かしこまりました。女王様…」
ゲイザーは跪いてフラウの手を取ると、騎士が姫君に忠誠を誓う儀式のように、手の甲に口付けをしました。数日後、戴冠式が厳かに執り行われ、フォンから王冠がフラウに授与されました。
「皆さん、今日は私の為にお集まりいただき感謝致します」
「フラウ様、バンザーイ!」
獣人たちは拍手喝采、会場はスタンディングオベーションが巻き起こります。
「私が女王に即位するに当たって、掟を二つ改正致します。一つは男女同権。結婚は女性の方にも相手を選ぶ権利を与えます」
会場がシーンと静まり返りました。まばらにパチパチと拍手する者もいます。女性の獣人が拍手をしているようです。
「そして、もう一つはマルヴェールへ移住を望む人間がいた場合、私の判断で許可致します。もちろん信頼出来る人間に限りますが…」
会場がどよめき始めました。フォンも表情を曇らせています。にわかに雲行きが怪しくなったまま、戴冠式は幕を閉じました。
…つづく
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昔、書いていたオリジナル小説の第41話です。