ゲイザーが戸惑いを隠せずにいるのを、ナタは気にも留めず話し続けます。
「勇者の波動を持つ者はね、どんなピンチに陥っても、必ず助けてくれる人が現れるのー。魔力の波動に惹かれて、強い人が集まってくるからだよ」
「確かに私は悪運が強くて、何度も死にかけていたが、なぜかいつも助かっているな…」
「お姉さんがおじさんを助けたのも、勇者の波動を感じたからだと思う。この人は死なせちゃダメだ!って思うの。ナタもそうだったから。勇者の波動を感じ取れる人は勇者の事、出会った瞬間に好きになっちゃうんだよ?」
「私は人に嫌われやすい。足を引っ張られてばかりいたよ?何かの間違いだろう…」
「それはその人たちには才能がないからだよ。才能のある人は勇者を見るとすぐ好きになるけど、才能のない人はなぜか才能のある人を見たら、足を引っ張ろうとするのー」
すると、それを聞いたアークが頷きながら言いました。
「私もナターシャ様を初めてお見かけした時、オズワルド様以上の魔力を感じましたので、反射的にお救いしなければ…と思いました。今思えば、あれは運命だったのかもしれませんね」
「アークはなんであの悪い魔術師の仲間にされちゃってたの?アークの方があのお爺さんより強いと思うんだけど…」
「オズワルド様は呪いのスペシャリストでしたからね。流石の私もあの呪いの魔法には勝てませんでした。一度ビーストカードに封印されたら、もう逆らう事は出来ませんし…」
「あのお爺さん、全然強くなかったし…。スライムのビーストテイマーの方が強かったよ?」
「それはオズワルド様の兄上だったようです。私もお会いした事が何度かありますが、兄上の方が魔力は上でしたね」
「でもおじさんはそのビーストテイマーに勝っちゃったでしょ?獣人の王様にも勝てたし、おじさんは勇者だから、どんな強い相手にも勝てるのー」
「たまたま運が良かっただけだよ。相手の方が私よりも格上だった。私を見くびってくれていたのが、勝因だと思う」
ゲイザーが謙遜すると、アークがこう言って諌めます。
「運も実力のうちですよ?油断大敵です。獅子は兎を倒すのも全力を出すと言います。相手が格下だからと言って油断して負けるのは、実力があるとは言えません」
「わかった…。仮に私が勇者だとして、世界を救う使命があるなら、一体何をすれば良い?」
「それはナタにもわかんない…。でもいつかその日が来るから、ナタはおじさんと一緒にいなきゃダメなのー」
…つづく
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昔、書いていたオリジナル小説の第40話です。