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真・恋姫無双~魏・外史伝40

 こんばんわ、アンドレカンドレです。
今後の投稿予定を大学の日程を考慮して見ると、何だかちゃんと投稿できるか不安なってきました。木金が実習が入り、挙句金曜日は実習が午前午後あるというハードスケジュール・・・。だからといって途中挫折する訳にはいかない!
そんなわけで皆さんの応援に応えられるよう、両立したいと思います。
 さて今回から第17章・・・。内容が長いので、三部構成で行きます。恐らくしばらくはそれが続くかもしれない・・・。1周間に1章の間隔で投稿する予定です。
 では、真・恋姫無双 魏・外史伝 第十七章~外史を喰らうもの・前編~をどうぞ!!

2009-09-13 21:20:30 投稿 / 全5ページ    総閲覧数:4153   閲覧ユーザー数:3306

第十七章~外史を喰らうもの・前編~

 

 

 

  俺達が意識を取り戻してから2日が過ぎた・・・。その間にも、俺の見舞に来てくれた人達がいた。

 劉備さんが関羽と張飛ちゃんと一緒に来た時は・・・。

  「北郷さん、本当にありがとう。あなたのおかげで、正和党の人達との戦いを終わらせる事が出来ました。」

  「俺、何かしたっけ・・・?」

  いきなりそんな事を言うもんだから、俺はポカンとしてしまった。そんな俺を見て、後ろの2人が苦笑していた。

  「自分がした事に自覚が無いとは、北郷殿も意外と抜けている所があるようだ。」

  「にゃはは~、北郷の兄ちゃんもお姉ちゃん並みなのだ♪」

  「う~ん・・・。そう言われても、俺はただ伏義の奴をぶちのめしただけで・・・。正和党の戦いをどうこう

  したってわけじゃないし・・・。」

  その後、ぶっ倒れて3日間も寝ていたわけだし・・・。

  「伏義の件もそうだけど・・・。でもそれ以上に、あの時、北郷さんが私に言ってくれた・・・。

  『あんたが王に相応しいかどうかは、俺には分からない!だが、今あんたがするべき事は逃げる

  事じゃないって事は分かる!!王として、あんたは責任を全うするべきなんじゃいか!?それが

  あんたを慕い、ついて来てくれた人達の信頼に応えるって事じゃないのか!!』って。」

  何か俺の真似のつもりなのか・・・、低い声を出してあの時俺が彼女に言った事をそのままオウム返しの

 様に言った。しかし、今こうして考えてみると、俺も好き勝手な事を言ったものだ・・・。

  「あぁ~、あの時は頭に血が上ってて・・・、俺もかなり興奮していたからな~。今思い出しても、

  随分好き勝手な事を言ったなって思うよ・・・。」

  後ろ頭を掻きながら、そう答えると、彼女は首を横に振った。

  「ううん、そんな事は無いよ。あの時の私は、自暴自棄になっていて自分しか見えていなかった。

  あなたの言葉に、私は覚ます事が出来た・・・。皆にただ甘えて、自分の理想に逃げ口にしていた私に

  それじゃ駄目なんだって、気付かせてくれたから。」

  そんな大それたことをしたんじゃないんだけどな~。俺は心の中で呟いた・・・。

  「まぁ・・・、俺の言葉で劉備さんの力になったって言うなら、俺も大言をほざいた甲斐があったって

  もんだよ。」

  俺がそう言った途端、どっと笑いが起こる。

 その後、劉備さんが俺に何か礼を言って来たが、丁重に断った。俺が伏義と戦ったのは、露仁の仇を取るためで

 彼女達のために戦ったわけじゃかったし、その上俺のためにこの部屋一室を貸してくれたから、なんて言ったら

 ・・・。

  「全く・・・、欲の無い御方だ。」

  と関羽に呆れていながら言われてしまった。だから俺はこう返した。

  「俺が欲しいものは、もう全部手に入れているからね。」

  って、ちょっときざっぽく言ってみたりした・・・。

 

  次に来たのは孫策だった・・・。

  「よっ!見舞いに来てあげたわよ、少年!」

  春蘭ほどではなかったけど、勢いよく扉を開けて入って来た彼女。見た所、一人の様だ。

  「一人で・・・来たのか?」

  「え?蓮華達も連れて来た方が良かった?」

  「いやそう言う意味で言ったんじゃなくって・・・!付き人無しで来るなんて少し不用心じゃないかって話だよ。」

  「えぇ~、だって何かたるいじゃない?一人の方が好きに出来るし♪」

  「一人の時に、命を狙う敵が襲ってきたらどうするんだ?」

  「返り討ちにしてやるわよ。だって私、強いもの♪」

  悪びれた感じが微塵も無く、ケラケラと笑う孫策。何という自由人だ・・・と感心してしまう。

  「呉の王様がそんな事言ってたりするから、孫権や周喩が苦労するんだよな・・・。」

  「ちょっと~、折角見舞いに来てあげた私に一体どの口が言ってんのかしら~!」

  そう言って、孫策は俺の口を引きちぎる勢いで横に引っ張ってくる。

  「ひたたたたたたたた・・・!!ひたひ、ひたい!!」

  会ってまだ日が浅いって言うのに、この人は・・・遠慮が無いな、本当。

 ほんの少ししか会っていなかったのに、どっと疲れる俺・・・。孫権や周喩の苦労が目に浮かぶ・・・。

 あ、そうだ。孫権と言えば・・・。俺はひりひり痛む自分の口を手で擦りながら孫策に尋ねてみた。

  「孫権は俺の事で何か言っていなかった?」

  「蓮華が・・・?私は別にこれと言って聞いていないけど・・・。はっ・・・!まさか、うちの妹に

  手を出す気じゃ・・・!」

  「そういう話に持って行こうとしなくていいから。」

  俺は強引に逸れそうになった話を戻した・・・。

  「ひょっとしてあの時の事を気にしているの?」

  あの時・・・、俺と華琳が孫策と話をしていた時だ。孫権は孫策の後ろから、俺を睨みつける様に見ていた。

 彼女、俺に何か言いたそうな感じだったが・・・結局、聞けずに終わった。

  「・・・・・・。」

  「・・・?」

  そして急に黙って俺の顔をじーっと見てくる孫策。

  「あなたが蓮華に会ったのは、あの時が初めてなのよね?」

  「ああ、そうだけど・・・。でもそれが何だって言うんだ?」

  「じゃあ、あなたに兄弟は?」

  「俺は一人っ子だ。ついでに言えば、俺の身内はこの世界にはいない。天の国にいるって言えば、

  わかるかな?」

  「ふ~ん・・・。」

  孫策の質問に答えると、不敵な笑みをこぼす。一体何だって言うんだよ・・・。

  「なら、きっと他人の空似なんでしょうよ。」

  「何だその、空似って・・・?」

  「言葉通りよ。あの子は彼とあなたの姿を重ねていたのよ。」

  「だから、誰のことだ・・・。」

  いまいち孫策が言おうとしている事が分からない・・・。孫権は一体誰の姿を俺に重ねているっていうんだ?

  「別に気にする事は無いわ。少なくとも、あなたを嫌っているって事は無いから。」

  何だ、その取って付けたような・・・。結局、詳しい事は聞けず、孫策ははぐらかすように部屋を出て行った。

  

  2日後の、昼も近い頃・・・。

  「何かこうして3人で歩くのも久しぶりだな。」

  「そうですね~。洛陽じゃ、落ち着いて話せなかったですしね~。」

  「しかし、一刀殿。もう体の方は宜しいのですか?あなたに無茶はさせるなと

  華琳様は仰っていましたが・・・。」

  「部屋の中で横になっているばかりじゃ、そっちの方が体に悪いって。それにこうして少し体を

  動かしておきたかったからな。」

  街に出ていた俺は偶然出会った風と稟と一緒に街の散策をしていた。

  「そうだな、兄ちゃん。体がなまったままじゃあ、いざって時にあんたの息子が役立たずに

  なっちまうからなぁ。」

  「こらホウケイ!こんな真昼間の道のど真ん中でそんなはしたない事を言うんじゃありません。」

  ほうけいの下ネタ発言に突っ込みをかます風。そんな彼女を見て、俺は少し安著していたりする。

 趙雲さんの事で沈み気味かな、なんて思っていたが・・・。いや彼女の事だから俺にそんな姿を見せてない

 だけなのかもしれない・・・。

  「それで一刀殿が街へと赴いたのには何か用事があっての?」

  隣の稟が俺に街に出てきた理由を聞いて来る。

  「用事・・・といえば、用事かな。ちょっと確認っていうか、見たいモノがあったから・・・。」

  「見たいモノですか?」

  「そうそう。この通りを右に曲がった先に・・・。」

  そう言いながら、俺は通りを右に曲がると、そこに俺が見たかったモノがあった。

 もっとも既に修復作業が開始されていたようで、それは本来の姿を取り戻しつつあった・・・。

  「ああ・・・、やっぱり派手に壊れちまったようだな。」

  俺が見たかったのは城壁・・・。あの時、最後に見た光の柱に巻き込まれた城壁の状態を確認したかったんだ。

 伏義に左拳を鳩尾に喰らわせて、派手に吹っ飛んでいった奴は城壁にぶつかって、その後、奴を包み込むかのよう

 に光が奴の体から溢れ出した・・・。その光が柱となって、天高く昇っていった所で、俺は気を失ってしまった。

  「稟、ここの城壁って最初どんな風に壊れていたのか、知っているか?」

  「真桜達の話では、城壁の一部がごっそりと無くなっており、その地面もだいぶ抉られていたようです。

  しかも、不思議な事に、その切断面は研磨された様に、とても綺麗なものだったそうですが・・・

  それが何か?」

  「・・・・・・。」

  稟の説明で、大体のイメージが浮かぶ。となると、あれは全ての物質を飲み込んだって言う事か・・・。

 幸いあの周辺は人がいなかったからあれに巻き込まれた人はいないはず・・・。もしあれを街中でやっていたら

 なんて、想像しただけでもぞっとしてしまう。

  「お兄さんが気に病む事は無いと思いますよ~?お兄さんは、悪い人をやっつけたんですから、むしろ胸を

  張ってもよろしいかと。」

  「風・・・、お前。俺の心、読んだのか?」

  「おや?何のことですか~?」

  俺の問いに対してとぼける風。風の奴、絶対俺の心を読んでいたに違いない!・・・俺って思っている事が

 顔にでやすいのか?

  「隊長~~!!」

  そんな事を考えていると、作業場の方から、聞き憶えのある声が聞こえて来る。俺は声の主を探した。

  「真桜。」

  真桜の姿を見つけた俺は、近づいてくる彼女に手を振った。

  「何や隊長ぉ、もう体の方はええんか?」

  「俺はもう大丈夫だ。それより、お前はどうしてここに?」

  「うち?うちはそこの作業場の監督しとるからに決まっとるやろ。隊長がぶっ壊したっていうから、華琳様が

  率先して直すようにーって。」

  「・・・そうか。それは悪かったな。」

  俺は真桜に謝ると、彼女はケラケラと笑いだした。

  「まぁえぇんやないか?華琳様も別に怒っとったわけやないし?それにうちも好きでやっとる事やしな。」

  「・・・そう言ってくれると、俺も少しは報われる。」

  「真桜、作業の方は如何ですか?」

  横から稟が口を挟んで来る。

  「こっちの方は割と順調やでぇ。でも他の所じゃあ、蜀と正和党とで揉め事が起きとるみたいで凪と沙和が

  愚痴っておったで?」

  そう言えば、来る途中でも喧嘩しているのを見たな・・・。

  「そうか・・・、まだ蜀と正和党との間に出来たわだかまりは、取り払えていないんだな。」

  「まぁ・・・、しゃーない事やないのかなぁ?事情が事情なわけやし。」

  「考えの行き違いがきっかけで起きた戦いですからね~。戦いが終わったからと言って、考えの行き違いが

  なくなったわけでは・・・ないですから。」

  「「「「・・・・・・・・・。」」」」

  急に重くなる空気・・・。

  「ってちょっと何やねん、この辛気臭さは!?止め止め!」

  と言いながら、手で空気を払い除けようとする真桜。

  「それより隊長。うち腹が空いとるんやぁ、どっかで飯を食べに行こや?」

  「・・・そうだな。昼も近い事だし、何処かで食べて行こうか?」

  「そんじゃ、ごちになりまっせ隊長♪」

  にやにやとにやけながら、そう言ってくる真桜。

  「ちょっと待て真桜。何勝手に俺にたかろうとしているんだ!!」

  「おやお兄さんも気前が良いですね~、では風も甘えましょうかね~♪」

  「では私も♪」

  「っておい!お前等も話に乗るなって!?」

  「さすがうちらの隊長!よっ!魏の種馬!」

  「全然嬉しくない!そんな事言われても全然嬉しくないから・・・。」

  真桜のボケに突っ込みを入れる俺だったが・・・。

  「・・・・・・。」

  「ん?どうしたんや隊長・・・そんな怖い顔して?」

  俺は腰に帯刀していた刃に手を掛けた。

  「!一刀殿!?」

  「!お兄さん!?」

  「う、ええええ!!ちょ、ちょ、ちょっ!!隊長待ってや!今のは単なる冗談や無いか!?」

  俺は刃を鞘から逆手に抜き取ると同時に地面を力一杯に蹴る。

  「ひ、ひええええええっ!!」

  

  ブォオウンッ!!!

 

  真桜に向かって飛び上がった俺は、真桜の背後から飛び出してきた影に向かって、刃の斬撃を放った。

  「・・・!!」

  「・・・!!」

  丁度、真桜の頭上で交差した俺とその影はそのまま入れ替わるように着地した。俺は真桜の背後に、そして

 その影は真桜の真正面に・・・。奴から受けたのか、俺の右頬に一筋の血が流れる。奴も俺から受けた斬撃で

 奴が身に付けていた服が斬れていた。そして何より、俺が斬撃を放った相手は・・・。

  俺は立ち上がると、奴の方に体を向ける。一方で真桜は腰を抜かしたのか、尻餅をつきながら、目を丸くして

 俺と奴を交互に見ていた・・・。

  「・・・左慈だな?」

  俺は奴の名前を呼ぶと、左慈は鼻で笑った。

  「俺の事は覚えていたか。」

  「2度も殺されかけたんだ、忘れたくても忘れられないさ。」

  そう・・・、この男、左慈が真桜の背後に隠れていた事に、俺は咄嗟に気付いた・・・。

  「ふん、それは良かったな。殺される相手が分からぬまま死んでは、貴様も死んでも死にきれんだろうしな。」

  「・・・悪いが、俺は死ぬ気は無い。」

  「その気が無くとも俺は貴様を殺す。」

  「露仁はお前の事を知っていた。そしてお前も露仁の事を・・・。」

  「露仁・・・?南華老仙の事か・・・。奴も馬鹿な男だった。使命だの運命だのと、無駄にこだわったり

  しなければ、死ぬ事も無かっただろうに・・・!」

  「お前は何を知っているんだ?」

  「・・・少なくとも、貴様が知りたいと思っている事は知っている。」

  「なら、それを全部教えてもらう・・・。」

  「俺がそんな事を教えるとでも?」

  「その気が無くとも俺は力づくで聞き出す。」

  「ふん、手の早い事だな。」

  「今まで問答無用で襲いかかって来たお前が言える事か?」

  「・・・そうだな。」

  俺と左慈の視線がぶつかり合う。二人の間に火花が散るっていうのはまさにこう言う事なのだろう。

  「ここは街の中だ。外に出るぞ。」

  「良いだろう。何処でやろうがやる事は変わらん。」

  そして、俺は街の外へと出て行った。気が付かなかったが、いつの間にかあの力が俺を支配していた。

 いつから・・・、きっと左慈の気配?を感じ取った時にはすでに発動していたんだろう・・・。

 

  「・・・・・・。」

  「大丈夫ですか~、真桜ちゃん?」

  唖然としている真桜の傍に駆け寄って行く風。

  「お、おう・・・。」

  我に返った真桜は慌てて立ちあがると周囲を見渡す。

  「・・・隊長は?」

  「一刀殿なら、左慈という男と一緒に街の外へと出て行ってしまったと思います。」

  真桜の疑問に稟が淡々と答える。

  「思いますって・・・?」

  「・・・気付いた時には既に二人の姿が無く・・・。二人の会話から推察して、街の外に

  出て行ったものかと。」

  「そうか・・・。いやぁ、しかし驚いたで~。いきなり隊長が剣を抜き取るもんやから殺されるんかと

  思ったで・・・。」

  「風も驚いたのですよ。お兄さんもしばらく見ない間に随分と好戦的になったようで・・・。」

  「そら確かに、あの左慈っていう奴と対峙しとった隊長の姿も格好良かったと思うけど・・・。

  でも隊長ってあんなん強く無かったと思うんやけどな~。あれも天の国の技術ってやつかいな?」

  「少なくとも武の面において、私と風が最初に会った時の一刀殿に、あのような力があった様には

  見受けられませんでしたが・・・。」

  「実際、お兄さん本人もよく分かっていない様ですしね~・・・。」

  「「「ふ~む・・・。」」」

  三人揃って、頭を傾ける。

  「ってそんな事している場合やないで!早いとこ隊長を助けに・・・、いやぁ先に華琳さまに報告する

  べきか?」

  「それがいいと思います。」

  「なら、早く華琳様を探し・・・!!」

    

  ドゴゴゴゴゴゴゴゴッ!!!

 

  「「「っ!?!?」」」

 

  遠くの方から聞こえる轟音と地面の揺れ・・・。そして街の中央でここから見える程の砂煙が立ち込めて

 いた・・・。

  「な、何やねん何が起きたんや!!」

  「おう!お前等、こんな所におったんか!?」

  そこに馬に乗った霞が大急ぎで三人の元に駆け寄って来た。

  「霞殿、街の方で何かあったのですか?」

  「何もへったくれも無いで!大変やで!!」

  「大変って、また蜀軍と正和党の連中が揉めとるんですか、姐さん?」

  「それやったら、まだ可愛いもんやで!?敵や敵ぃ!!前に洛陽で暴れていた連中と同じ恰好した連中が

  いきなり現れて街や人間を襲ってるんや!!!」

  

  一方、成都の街の郊外・・・、開けた大地にて。

  「はぁああああああッ!!!」

  ブォウンッ!!!

  「でやぁあああああッ!!!」

  ブォウンッ!!!

  俺が左慈に向かって斬撃を放つと、それに合わせて左慈もあの強烈な蹴りを放って来た。

  「うおおおおおッ!!!」

  ブォウンッ!!!

  振り上げた刃を左慈に振り下ろすが、奴はステップを踏むように軽やかに横にかわし、俺の懐へと入り

 込んで来る。

  「くぅ・・・!」

  俺は強引に体を捻って、左慈の一撃を避け、距離を取った。

  「やっぱり・・・、お前も俺と同じような力を・・・。」

  「ふん!何も分からない風に言っていても、その程度は理解出来るようだな。」

  そう言いながら、左慈は攻勢の構えを取る。

  「お前が南華老仙から受け取ったその無双玉の力・・・、何も貴様だけの専売特許という訳では無いのだ!!」

  「無双・・・玉?」

  確か前にも露仁がそんな事を言っていたような・・・。

  「お喋りはお終いだッ!!死ねええええ!!」

  ブォウンッ!!!

  ブォウンッ!!!

  ブォウンッ!!!

  俺は左慈の連続の蹴りを回避していく・・・。が、その速さに体が対応して切れず、紙一重で回避するのが

 精一杯だった。おかしい・・・、伏義の時は、もっと早く動けたはずなのに。俺がこの力を使いこなせていない

 からなのか?

  「くっ・・・!!」

  左慈が放って来た左蹴りを後ろに避けず、体に右回転を加えながら奴の右脇をすり抜けると同時に、回転の

 勢いを乗せた刃の横薙ぎを左慈の背中に叩きつけた。

  「なっ・・・!ぐぅううおおおおおーーーー!!!」

  左慈はその斬撃をまとも喰らい、俺の後ろへと吹き飛ぶ。奴の体は地面を跳ね返りながら、受け身を取りつつ

 体勢を整える。勢いが止まった左慈は、突然地面に正拳を叩き込み、その拳は地面に埋まる。

  「ふんッ!!!」

  勢いよくその埋まった拳を引き抜くと、その周囲の地面も一緒に持ちあがった。

  「なっ!?」

  持ち上げられた地面の一部を、左慈は強烈な回し蹴りを放つと、地面の一部がいくつかに砕けながら、俺の方

 に飛んできた。

  「・・・ッ!!」

  俺に飛んでくる地面の塊達を避けて行く俺・・・。だが、俺の正面に一番大きい塊が襲いかかって来た。

  

  ブゥオウンッ!!!

  

  バッゴオオオッ!!!

 

  その塊を縦に一刀両断する・・・。

  「ッ!?」

  縦に綺麗に両断された塊の隙間から左慈が突っ込んで来る。意を突かれた俺は急ぎ対応しようとしたが、

 先に奴の直蹴りが俺の腹にめり込む。

  「ぐほぅッ!?」

  だが、奴の攻撃は終わらなかった。そこからさらに俺の横顔に回し蹴りを放つ。

  「・・・ッ!!」

  そして回し蹴りを放った奴の体は宙を舞い、さらに直蹴りを放った足で踵落としを俺に放った。

 人間技とは思えないその連続攻撃に、俺は受け身とる事もままならず、地面に叩きつけられた。

  「・・・!」

  うつ伏せの俺に追い打ちをかける様に、背中を踏みつける左慈。体を起こそうにもそのせいで起こす事が

 出来ない・・・。

  「・・・ぐ、ぐぅ・・・。ぐおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッ!!!」

  「何ッ!?ぬおおおッ!!!」

  突然宙に吹き飛ばされた左慈。俺が何かしたのだろうが・・・、肝心の俺は何をしたか分からなかった。

 俺は急いで立ち上がり、刃を構え直す。左慈は宙で体勢を整え、地面に着地しようとする、俺はその隙を狙った。

  「うおおおッ!!!」

  ブォウンッ!!!

  「ぐぅ・・・!!」

  俺の斬撃をかわした左慈だったが、着地して間もないせいで体勢を崩した。

  ブォウンッ!!!

  ブォウンッ!!!

  俺はこの機を逃すまいと、追い打ちする。

  ガギィイイイッ!!!

  「ぐぅ・・・ッ!」

  「ぬう・・・ッ!」

  俺の一撃を足で受け止める左慈。そして刃を踏み台にして後ろに宙返りする。

  「はぁああああああッ!!!」

  「でやぁあああああッ!!!」

  互いに距離を詰めて行き、ほぼ同時に一撃を放つ。

  ガギィイイイイイイッ!!!

  刃の斬撃と左慈の足蹴りがぶつかる瞬間・・・、突然発光し俺達を包み込む。

 拡散した光が収束、そして再び弾かれるように拡散した光と一緒に俺達も弾き飛ばされる。

  「うわぁっ!?」

  「うおおっ!?」

  弾き飛ばされた俺は、地面に足を付けながらその勢いを削いでいった。

  「一体何だ、今のは・・・?」

  あれはまるで伏義の時の・・・。

 そんな事を考えながら、ふと街の方を見た・・・。

  「・・・!!」

  街の方から黒い煙が上がっている・・・。何かあったのか?くそ、嫌な予感がする・・・。こいつと

 戦っている場合じゃないぞ!俺は左慈に目をやる事無く、街の方へと駆け出した。

  「待て、北郷!!また逃げる気か!?」

  俺の後ろから左慈が追いかけて来る。

  「お前の相手をしている場合じゃなくなったんだ!」

  「ふざけるな!!死ねぇえええ!!!」

  「ッ!?」

  俺に向かって蹴りを放って来た。

  

  ブォウンッ!!!

  

  ・・・だが、その蹴りは俺に届く事は無かった・・・。

 

  ガシィイイッ!!!

 

  「ふぅ・・・、間一髪って感じかしら?」

  何故なら、何処からともなく現れた貂蝉が左慈の蹴りを足で受け止めていたからだ。

  「貂蝉!!どうしてお前がここに!?」

  「貂蝉!!貴様、またしても俺の邪魔をする気か!?」

  「行きなさい一刀ちゃん!ここは私が引き受けてあげる♪あなたは早く曹操ちゃん達のもとへ急ぎなさい!」

  「だが・・・!」

  「一刀ちゃん?あなたが守りたいものは・・・、何処にあるのかしら?」

  左慈を牽制しながら、貂蝉は俺の方を見る。そして俺は貂蝉のその目に牽制され、それ以上何も言えなくなる。

 こんな顔をした彼女?は初めてだ・・・。

  「・・・分かった。なら、ここはお前に任せる!!」

  「合点承知よ~ん!」

  俺はこの場を貂蝉に任せ、急いで成都の街に向かった・・・。華琳、皆・・・無事でいてくれ!!

 

  「・・・貴様にしては、やけに控えめな態度だな。北郷にはもう愛想尽かしたのか?」

  「うふふ・・・。ま・さ・か・・・、私は一途なのよん?しばらく会えなかったからって、その程度で

  ご主人様への思いが薄れるはずがないわよ~。でも・・・この外史のご主人様の心に私が入り込む隙間が

  無い・・・。ただそれだけの話・・・。」

  「ならば、どうして奴の味方をする!?」

  「そうね、言うなれば私は日陰にさり気なく咲く一輪の花として、ご主人様を支えたいのよ。」

  「・・・それでも自分を花と例えるのだな。ならば、その花・・・、俺が散らしてやる!!!」

  「あなたにできるかしら?」

  「・・・良いだろう。ならば、この力・・・、少しばかり多目に使ってみよう・・・。」

  「あ、あらら・・・、こんな事なら卑弥呼も呼んでくれば良かったかも・・・?」


 
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