ゲイザーが客室から出ると、ツインテールをドリルのようにクルクルとカールさせた、大人の姿のナタが駆け寄ってきました。
「おじさーん!見て見てー?髪型変えたのー」
「ナターシャ様!今までどこに行っておられたのですか?」
「それとね、おじさんにもらったワンピースだと手配書と同じだから、新しい服を魔法で作ったのー」
ナタは花柄の可愛いワンピースを着ていて、クルリと回って見せました。
「とてもよくお似合いですよ。ナターシャ様はどんな服でも着こなされますね」
「これでおじさんの恋人に見えるかな?」
「ナターシャ様が私の恋人になってくださるなんて、まるで夢のようです」
「じゃあマルヴェールに行って恋人を作るって言う試練の達成の報告が出来るねー」
「フォン様との約束の日は明日でしたね。さっそくマルヴェールに向かいましょう」
フラウは複雑な心境で、ゲイザーと腕を絡めるナタを見つめていました。
「ゲイザー殿、アーク殿、ジョルジュ、ルーシーにかけられておった、呪いはほとんど解除したのじゃが、魅了の術だけはわしにも解除できんので、あとは任せましたぞ?フラウ殿」
「私に魅了の術を解除出来るのでしょうか…」
「昔、一国を乗っ取ったと言う極悪非道な魔女を倒した剣士は、真実の愛によって魅了の術を打ち破ったと妖精の国では語り継がれておりましてな」
「真実の愛ですか…。なぜ、妖精の国で語り継がれているのです?」
「その剣士の旅について行った妖精の話だそうですじゃ。人間の世界では極悪非道な剣士と呼ばれておった者が、愛する者の為に悪を砕いたのじゃとか」
「私にはゲイザー様に愛されていると言う自信がないのです…」
「ナターシャを見て見なされ?愛されているかどうかなど気にせずとも、自らが愛すれば良いだけなんじゃよ。あなたはゲイザー殿に愛されなければ愛したくはないのですかな?」
「いいえ、例え愛されなくとも、私はゲイザー様を愛し続けます!」
「それで良いのじゃ。愛は相手に求めるものではない。自らが与えるものなのじゃからな?」
ユリアーノの言葉で吹っ切れたフラウは、ルーシーの背中でイチャイチャしている、ナタとゲイザーの隣に乗り込みました。
…つづく
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昔、書いていたオリジナル小説の第32話です。