見張りが誰もいなくなると、ピーターがどこからともなく現れて、ナタの手首を縛っている縄を噛み切りました。フラウの手首の縄も噛み切ります。
「ありがとう、ピーター」
ナタにお願いされてピーターは、守衛の腰にかけてあった牢屋の鍵を取って来ました。地下牢の階段を昇った出入口には守衛が立っていますが、フラウが背後から首を締め上げて気絶させました。
「お姉さんってものすごく強いのに、どうしておじさんとモンスター討伐行く時は、弱いフリしてたの?」
「男の人ってプライドが高いから、女が強過ぎると嫌われてしまうのよ…」
「おじさんはお姉さんが強くても嫌いになったりしないと思うよー?」
「そうね…。ゲイザー様なら私の全てを受け入れてくれるかもしれないわ」
ピーターが床をクンクンしながら、ナタの方を見上げます。
「おじさんはあっちにいるみたい!」
「早くしないと!拷問を受けて殺されてしまうかもしれないわ」
お屋敷の一番奥の部屋まで来ました。途中で守衛が何人か襲いかかって来ましたが、フラウが一瞬で倒してしまうので、すんなり辿り着いたのです。ピーターが扉を爪でガリガリしています。
「ピーター、ゲイザー様がこの部屋の中にいるのね?」
「もしかしてお姉さんっておじさんより強いんじゃ…」
フラウが扉を開けると、鎧の天使と鎧の獣人が立っていました。その後ろにローブを着たヒゲの男が立っています。
「来たな、侵入者?お前たち、あの二人を殺してしまえ!」
「申し訳ありませんが、私にはあのような婦女子を手篭めにする事は出来ません。こちらへ攻めて参りましたら、防衛します」
「ええい、口答えするとは…。役立たずめ!ゲイザー、お前の手で仲間を葬るが良い?」
「かしこまりました。ご主人様」
ゲイザーが剣を構えたので、フラウは突然、戦意喪失して身体から力が抜けてしまいました。
「そんな!ゲイザー様を傷付けるなんて私には出来ない…」
「お姉さん、心を鬼にして戦うんじゃなかったの?ジョルジュとは戦ってたじゃない!」
「無理よ!この世で一番愛する人を攻撃するなんて…」
「じゃあナタが心を鬼にしておじさんと戦う!最強の魔法を使って…」
ナタは呪文の詠唱を始めました。ゲイザーは剣を大きく振りかざして、ナタに一太刀を浴びせかけます。フラウは思わず、目を覆い隠しました。
…つづく
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昔、書いていたオリジナル小説の第25話です。