ゲイザーが女物の服を売っている店に入ると、若い女性店員が話しかけて来ました。
「いらっしゃいませー!恋人へのプレゼントですか?」
「いえ、知り合いの女の子にプレゼントしようと思いまして…」
「どんな感じの女の子なんです?似合いそうな服をコーディネートしますよー」
「金髪のツインテールで背の高さは…。あの、子供用と大人用の二枚買いたいのですが、コーディネートお願いできますか?」
「あっ、奥さんとお子さん用かな?」
「えっと…まあ、身内用ですね」
ゲイザーは嘘がつけないので、どう説明すれば良いかと悩みます。嘘をつかずに店員を上手くごまかすのに苦労していました。
「フリーサイズだとワンピースがオススメですね。奥さん用にはこれなんてどうです?」
「うーん、これはちょっと…地味かな?」
「あー、奥さんまだお若いんでしょ?じゃあ、これ!」
「これは良い感じですね。これにします」
「お子さん用はお揃いで、似たような感じのワンピース選びましょうか?」
そこに偶然、フラウが通りかかりました。
「ゲイザー様、そんなところで何をしておられるのです?」
「あっ!もしかして、この人が奥さんですか?綺麗な人ですね」
「いえ、この人は違います!ただの知り合いです」
女性店員が勘違いしているので、ゲイザーは慌てて否定しました。フラウはとても悲しそうな表情を浮かべています。
「そうですよね…。シスターは恋愛禁止でしたっけ?」
「はい、結婚したらシスターの職を辞めなくてはいけません。神に仕える事が許されるのは、純潔の乙女だけと決まっております」
「私もシスターに憧れてたんだけど、彼氏と別れないとなれないって言われて、諦めたんですー」
ゲイザーはとりあえず白いフリルの付いた可愛いワンピースを、大人用と子供用の二枚購入して店を出ました。
「ゲイザー様、ちょっとお話があるのです…。お時間をいただけますか?」
「ではどこか適当な店にでも入りましょうか?ナターシャが宿屋で待ってるので、あまり遅くまでいられませんが…」
二人は小さなバーに入りました。カウンター席に座ります。
「先ほど買われた服はどなたにプレゼントする物ですか?」
「あれはナターシャの為に買いました。変な魔法で服を破ってしまったので…」
「大人用の服も買っておられたようですが…」
「あれもナターシャ用です。大人の女性に変身する魔法を覚えたらしくて…。しかし魔法使いと言うのは本当に恐ろしいですね。大人の女性だと思っていたら、実際は年端も行かない子供の可能性もあるわけですから…」
それを聞いて、フラウはホッとした安堵の表情を浮かべました。
「恋人を作ると言う、フォン様の試練は達成出来そうですか?期限はあと僅かですが…」
「ナンパと言うのは難しいものですね…。その気になれば私にも出来るはずだ!と思っていたのですが、仲良くなろうとしても世間話で終わってしまいます」
「フォン様の試練はただの嫌がらせだと思います。わざと無理難題を吹っかけて、ゲイザー様を困らせるのが目的ではないかと…」
「私はそうは思いません。フォン様には何か深いお考えがあるのではないかと思っています」
「いいえ!あの人は何も考えてなどいません」
普段、冷静なフラウが声を荒げたので、ゲイザーは驚きました。
…つづく
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昔、書いていたオリジナル小説の第19話です。