鏡という虚像の世界。
そこでは仮面ライダーと呼ばれる戦士達が、己の願いの為に熾烈な戦いを繰り広げた。
1人は、全てのライダーの頂点に立つ為に。
1人は、戦いその物をゲームとして楽しむ為に。
1人は、超人的な力を手に入れる為に。
1人は、ライダー達の運命を変える為に。
1人は、自分の復讐を果たす為に。
1人は、鏡の世界を閉じる為に。
1人は、幸せを手に入れる為に。
1人は、英雄になる為に。
1人は、姉を蘇らせる為に。
1人は、永遠の命を手に入れる為に。
1人は、戦う為に。
1人は、死にたくないが為に。
1人は、ライダーの戦いを止める為に。
1人は、戦いの主催者の願いを叶える為に。
1人は、恋人を目覚めさせる為に。
しかし、生き残れたライダーはいなかった。
様々な意志が交差するこの戦いで、全てのライダーがその命を落とした。
最後はある兄妹がその世界から姿を消し、世界は粉々に砕け散り、世界は再生された。
この戦いに、正義はない。
あるのは、純粋な願いだけである。
その是非を問える者は、もういない。
しかし、一度砕け散った世界は、破片となりバラバラに散らばった。
そして異なる世界にて、再びライダー達の戦いは始まろうとしている。
ある一つの運命を変えたライダーが、その戦いに巻き込まれようとしていた……
次元世界ミッドチルダ。
魔法文化が大きく発達したこの世界で、ある事件が発生していた……
「はぁぁぁぁぁ……疲れた」
とある民家。
いつものように仕事を終えて帰宅したOLの女性は、汗だくな状態からサッパリするべく、スーツを脱いでから真っ直ぐバスルームに向かっていた。洗面所についた彼女は、まず履いていたスカートを脱ぎ、その次にYシャツのボタンに手をかけようとした……その時だった。
キィィィィィン……キィィィィィン……
「……?」
女性の耳に聞こえてきた、謎の金切り音。女性は何だろうと周囲を見渡すが、見渡す限りどこにも金切り音の発信源らしき物は特に見当たらない。女性は首を傾げつつも、気のせいだろうと思いYシャツのボタンを一つずつ外して脱ぎ去り、下着だけの状態になる。
キィィィィィン……キィィィィィン……
「……!?」
そんな彼女の耳に、再び金切り音が聞こえてきた。しかも今度は途切れる事なく、同じ金切り音が何度も繰り返されて聞こえてくる。
(何? 何の音なの……?)
さすがに違和感を感じ始めた彼女は、本当に何もないかどうか周囲を確認する。その過程で洗面台の鏡へと振り返ってみた彼女だが、その際にある事に気付く。
「……え?」
女性の首元には、いつの間にか白い糸が巻きついていたのだ。女性が恐る恐る白い糸に右手で触れてみると、白い糸は彼女の右手にもくっ付いた。
「何、これ……」
その白い糸は洗面台の鏡まで続いている。女性は両手で白い糸を少しずつ引っ張ってみるが、白い糸は長く伸びていくばかりだ。不思議そうに思う彼女だったが……
『キシャァァァァァァ……』
「!」
謎の唸り声。女性が洗面台の鏡を見てみると、そこには人間の体型をした、蜘蛛らしき緑色の怪物が立ち、女性を睨みつけていたのだ。女性の首に巻きついている白い糸は、その蜘蛛らしき怪物の口元から伸びている。
「ひっ!?」
怪物の存在に気付いた女性は悲鳴をあげ、すぐに後ろを振り返る。しかし、彼女の後ろには何もいない。
(あ、あれ……?)
女性の後ろには何もいない。しかし、白い糸は未だに女性の首に巻きついたまま。
その時点で、彼女は気付くべきだったのだ。
警戒しなければならないのは他でもない、その“鏡”の方である事に。
『シャアッ!!』
「え……きゃあっ!?」
女性が後ろを振り返った隙を突き、蜘蛛らしき怪物―――“ソロスパイダー”は上半身だけ鏡から飛び出し、両腕の鉤爪で抱き着くように女性を捕縛。そのまま鏡の中へ彼女を引き摺り込んでいく。
「い、いや!? 誰か……いやぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」
助けを求める女性だったが、時既に遅し。ソロスパイダーはあっという間に彼女を鏡の中に引き摺り込み、その場には女性が先程まで着ていたYシャツやスカートだけが遺されてしまうのだった……
「……はぁぁぁぁ」
「……はやてちゃん、もしかしてまた……?」
「せや、なのはちゃん。これでもう何件目やろうなぁ」
ここは時空管理局、古代遺物管理部機動六課の本部。課長及び総部隊長の座に就いている茶髪の女性―――“八神はやて”は新聞を広げて頭を悩ませていた。髪をサイドテールに結んだ女性―――“高町なのは”も、はやてが頭を悩ませているのはその新聞に書かれた記事が原因である事に気付く。
「N社の女性社員、夜中に謎の失踪……か」
「昨夜、隣の民家から女性の悲鳴が聞こえたという通報があったみたいでな。けれど、部隊が駆けつける頃には民家には誰もいなくなってたそうや」
「一体、消えた人達はどこに……」
「私にもわからへん。この連続失踪事件、いろいろと奇妙過ぎるんよ」
連続失踪事件、それが現在のミッドチルダにおける大きな事件の一つだった。民間人が突如として姿を消して行方不明になるという謎の事件。最初は誘拐犯による犯行かと思われたが、現場にはいつも手掛かりらしい手掛かりが存在せず、未だ真相に辿り着けていないのが現状である。
「おかげで、管理局のお偉いさん達もかな~りピリピリしとるで。皆、早く事件が解決しないかと不安なんやろうな」
「うん。管理局の中にも、何人か行方不明者が出てるみたいだし……私達も他人事じゃいられないね」
「ホンマや。正直、早く事件が解決して欲しいのは私も同じやし……あれ、そういえばフェイトちゃんは?」
「フェイトちゃん? 今日は確か、執務官としての仕事を終えてからこっちに合流するって……」
「はぁ、やっとこっちの仕事にひと段落ついたよバルディッシュ……」
≪お疲れ様です、マスター≫
一方、大急ぎで車を走らせている人物がここにはいた。金髪の女性―――“フェイト・T・ハラオウン”は執務官としての仕事を終えてから機動六課の方に向かう予定だったのだが、例の連続失踪事件に関する書類をまとめ上げるのに予想以上の手間がかかり、合流時間が予定よりも大幅に遅れてしまったのである。それだけ、この連続失踪事件が非常に解決の難しい事件である事を物語っている。
≪予定の時間を30分超えています。お急ぎを≫
「うぅ、こんな時に限って信号には何度も足止めされちゃうし、今日は何だか散々だよぉ……って、あれ?」
フェイトの相棒と言えるデバイス―――“バルディッシュ”に急かされ、焦りに焦るフェイト。しかしその時、フェイトはたまたま公園の近くを通りかかった際にある事に気付いた。フェイトはジーっと公園の方を見据え、すぐに表情が真剣な物に切り替わる。
≪如何なされましたか?≫
「あそこ……人が倒れてる、大変!」
フェイトはすぐに車を停車させ、車から降りて公園まで走り出す。彼女が向かっている先には、公園の滑り台のすぐ近くにうつ伏せで倒れている、若い青年の姿があった。
「大丈夫ですか? しっかりして下さい!」
「……ぅ、う……」
≪息はあるみたいです≫
「ほっそれなら良かった……じゃなくて、すぐに病院に運ばないと!」
≪ここから近いのはシャトリア医院ですね。すぐに連絡します≫
「うん、ありがとうバルディッシュ!」
バルディッシュが病院に連絡を取る中、フェイトはある物が視界に入った。それは、倒れている青年の服のポケットからはみ出ている、赤紫色のカードデッキ。
(これは……?)
フェイトは思わずそれを手に取る。本当なら無暗やたらに人の所有物に触れるべきではないのだが、彼女は不思議とそのカードデッキに意識が向いてしまっていた。フェイトはカードデッキに刻まれている金色のエンブレムに注目する。
「これって、確か海の生き物の……エイ?」
場所は変わり、とある高層ビル。
キィィィィィン……キィィィィィン……
『キュルルルルル……!!』
ビルの窓ガラスに映る虚像の世界。その中を、1体のエイの怪物が泳ぐように飛び去っていく。ビルの近くを歩く通行人達は、誰一人その事には気付かなかった……
To be continued……?
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ハーメルンにて【ロンギヌス】というユーザー名で連載中の作品です。
こちらには最初の第1話だけ載せてみました。
続きが気になる方はハーメルンの方で続きを御覧下さいませ。
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