翌朝、ゲイザーはナタに叩き起こされました。
「もう朝だよ?起きてー!」
「うーん、あと少しだけ眠らせてくれ…」
「おじさん、一番簡単なヒーリングの魔法を覚えたよー!」
「一晩で習得したのか?すごいじゃないか!」
「早くヒーリングの魔法、使って見たいなぁ」
「しかし今は誰も怪我はしていないからな…」
「でも今日もまたモンスターの討伐に行くんでしょ?」
「昨日は散々な目に遭ったからな…。今日は少し違うところに行こう」
街外れの丘の上に教会が建っていました。身寄りのない子供たちが教会の参列席に座って、ヴェールで頭を覆ったシスターが、祭壇で教鞭をとっています。褐色の肌をした銀髪のすらっとした美人でした。ゲイザーとナタも後ろの方の席に黙って着きます。
「私たちが住んでるアラヴァニア大陸のアラヴェスタ王国は大陸の中心地です。アラヴェスタ国王は獣人を滅ぼそうとしていますが、獣人の国・マルヴェールは護りがとても堅くて落とせません」
比較的身なりの良い少年が勢い良く手を挙げたので、シスターは少年の方を見て教鞭で指名しました。
「シスター!獣人は悪い奴らじゃないの?この前も獣人が暴れて怪我した人がいたんだって」
「いいえ、獣人は悪い人ではありません。もし悪い人なら、なぜアラヴェスタに攻めて来ないのですか?獣人の力があれば、人間などすぐに滅ぼせます」
「でも街の人はみんな、獣人は悪い奴らだって言ってるよ?人間を滅ぼそうとしてるって!」
「それは街の人の勘違いです。怪我をさせられた人たちは獣人に攻撃を仕掛けて反撃を受けただけでしょう。攻撃されれば獣人も反撃せざるを得ません」
ゲイザーは感心しながらシスターの授業を聞いていました。
「なかなか頭の回転の速そうなシスターだな。話が実に面白い。しかも美人だ。スタイルも良い」
「ふーん…。ナタ、あの人の話は難しくてよくわかんない。つまんないから帰ろうよ?」
ゲイザーは手を挙げてから、シスターに指名されたので質問をしました。
「シスター!獣人の国・マルヴェールはどこにあるのですか?」
「マルヴェールの場所は…それを聞いてどうするつもりなんです?」
「獣人と血の契約をした人間は獣人になれると言う話をシスターはご存知ですか?」
「知っています。しかしそれはとても危険な行為です」
子供たちはざわざわと騒がしくなりました。シスターは手を叩いて大声を張り上げます。
「皆さん、お静かに!今日の授業はこれで終わります」
祭壇の奥の部屋に向かったシスターを追って、ゲイザーも祭壇の奥の部屋に入りました。
…つづく
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昔、書いていたオリジナル小説の第8話です。