ゲイザーは討伐の証として、ローブの男の身に付けていた黄金のバッヂを奪いました。超高難易度の第一級魔術師試験に合格した者だけが、授けられる由緒正しいバッヂです。街へ帰還するルーシーの背中の上でナタは泣きじゃくっています。
「私のせいでピーターとジョルジュが…」
「あまり自分の事を責めない方が良い。お前の責任ではないよ」
「違うよ…。私が魔法のお勉強をちゃんとしてなかったから、回復魔法が使えたら良かったのにって思ったの」
「回復魔法があると私も助かる。勉強すればお前も使えるようになるのだな?」
「さっき魔法屋で見てた魔導書がいるの。こんな事になるなら、お師匠様のところでちゃんとお勉強して置けば良かったよ…」
「あの魔導書か…。私の稼ぎの三ヶ月分もするのだぞ?婚約指輪でも買う気分だな」
ゲイザーは宿屋にナタを置いてから、役所に向かいました。手配書と黄金のバッヂを受付に見せます。
「スライムの討伐を達成したので、報告に参りました」
「このバッヂは!第一級魔術師の資格を持った者の仕業だったのですか?」
「はい、危うく私も奴の策に掛かって殺されるところでしたが、なんとか討ち取りました!」
「道理で討伐に向かった者が誰一人帰って来ないと思ったら、そんな相手だったとは…」
「報酬を上げてもらえませんか?この値段では割に合わない。命懸けの戦いでした」
「上の者に相談して参ります。少々、お待ちください」
もし役所が報酬の支払いを渋ったら、長時間交渉しなければならないので、ナタは置いて来たのです。思ったよりスムーズに報酬の支払いがあり、魔法屋へ向かいました。宿屋に戻るとナタに魔導書を手渡します。
「これは私からのプレゼントだ。頑張って回復魔法の勉強をするんだな」
「えっ!でもこれ…高いから買えないって、おじさん言ってなかった?」
「回復魔法をお前が習得すれば、私が怪我をした時も治療代が浮く。長い目で見れば安い出費だ」
「わかった!ナタ、魔法のお勉強、頑張る!」
ナタは分厚い魔導書を夜遅くまで、読んでいましたが、やがて疲れて眠ってしまったようでした。ゲイザーはナタに毛布を掛けてから、眠りに就きます。
…つづく
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昔、書いていたオリジナル小説の第7話です。