Yurigame10 aoba_hihumi04
*青葉とひふみが同棲している設定でのお話です(yurigame01参照)*
【ひふみ】
「んうぅ~…今日は私嫌な奴だったぁ~…」
青葉ちゃんと一緒に帰ってくるや、青葉ちゃんは静かに部屋に戻るとベッドに入り
枕に顔を埋めながら唸っていた。
多分コンペで失敗したのと、私の差し入れのチョコを苦手な紅葉ちゃんに無理やり
食べさせたことによる後悔からきているのだろう。
「青葉ちゃん…」
会社でもどう声をかけていいかわからなかった。情けない先輩で恋人でちょっと自信を
失いそうになる。でも、ここだったら…。
私は青葉ちゃんの傍に近寄って頭をそっと撫でた。すると少し強張っていた青葉ちゃん
の体から力が徐々に抜けていくのが目に見えてわかった。
しばらくそうしていると枕から顔を上げた青葉ちゃんは少し顔を赤らめながら
私の方を向いてジッと見てきた。
「ひふみ先輩~」
私に抱きついてきて珍しく甘えてくる青葉ちゃんが可愛い。
抱きつかれた瞬間、抱かれ慣れてない私はビクッとして顔が熱くなるけれど
これで青葉ちゃんの気持ちが紛れるのなら私も嬉しい…。
「ひふみ先輩柔らかくて気持ちいい~」
「青葉ちゃん…」
声に出されるとすごく恥ずかしいんだけど…。
しばらくそうして青葉ちゃんを慰めていると、普段の青葉ちゃんに戻ってきて
笑顔を私に向けてくれた。
「ありがとうございます。少し元気になりました」
「よかった」
青葉ちゃん、スーツのままだったからシワにならないように素早く部屋着に着替えて
少し遅めの食事の用意を二人で始めて軽く済ませた後、寝室に戻ってから私は話を
切り出した。
「それにしても…私からの差し入れのアレ…少しやりすぎだったんじゃ?」
「だって、ひふみ先輩からのチョコを断るから。いじわるしたくなるじゃないですか~」
笑顔でそう言う青葉ちゃんを見ているとちょっと怖ささえも感じる。
そう、温泉いったときに雪だるまをお湯に沈ませていた時にちょっと似ている気がする…。
「嫌がることを強要しちゃ…だめだよ…?」
「はい!だからさっき、反省していたとこです!あと…チョコくれた時のひふみ先輩の
どや顔がとても可愛かったです」
「や、やめてぇ…!」
あの時の自信たっぷりの顔をした後に紅葉ちゃんに断られた時、すごく恥ずかしかった。
甘いの苦手なの…ちゃんと覚えてたつもりだったのに…。
「青葉ちゃんの…いじわる…」
「え、ひふみ先輩…?」
「もう、青葉ちゃんなんて知らない…」
「わー!ごめんなさい!」
ちょっといじけた顔をして青葉ちゃんに背中を向けると慌てたような声を出して
私の体に腕を回してきて止めてくる。
同じようにちょっとイジワルなことを言ったら本気で心配した青葉ちゃんの
気持ちが伝わってきて心がほっこりする。
「冗談…だよ…」
「え!? もう…ひふみ先輩…!」
「でも…相手が嫌がることを強要するのは…やめようね」
「はい!…なるべく」
元気のよい返事の後、ボソッと何か足していたけど私は青葉ちゃんを信じてるから…!
私の動きが止まったのを確認した青葉ちゃんは私に回していた腕を解いて私も再び
青葉ちゃんと目を合わせる。綺麗な目をしていた、コウちゃんがいたときのように…。
「今日のことも気にしないで…。私は青葉ちゃんの絵が大好きだから…。
PECOの時みたいに青葉ちゃんらしいの…また私に見せて…」
青葉ちゃんの手を両手で握って顔を近づけて呟いた。私の言葉に青葉ちゃんは
少し顔を赤らめて私と同じように小さな声で「はい」と幸せそうに呟いた。
そしてお互いに顔を近づけたまま目を合わせると自然と二人の唇が重なっていた。
ぷにぷに柔らかい青葉ちゃんの唇。熱っぽい吐息が出て、握った手を恋人つなぎにして
近くにあったベッドにそのまま倒れ込むような形で横になった。
「ん…はぁ…。んふふ」
「青葉ちゃん?」
唇を離して少し息が上がる青葉ちゃんはどこか嬉しそうに笑みを浮かべていた。
「こうしていると仕事の疲れも少し忘れられて、私…幸せだなと思って」
「私も…こうして青葉ちゃんの傍にいられるの、嬉しいよ…」
「私…ひふみ先輩が好きな私らしい絵をがんばって描けるようにします。
今の私に何が足りないのかよく考えます!」
「うん…がんばって…」
「はい!」
それから私はもう一度青葉ちゃんの体を抱きしめる。青葉ちゃんも同じように
私の背中に手を回す。お互いに体を密着させてどちらかの、もしくは両方の
ドキドキが聞こえて、心地よくて。仕事の疲れもあったからかそのまま眠気と
青葉ちゃんの匂いに包まれていたらいつの間にか私は眠りに就いたのだった。
**
次の日、青葉ちゃんと一緒に出社して紅葉ちゃんと目を合わせて無言に見つめあうのを
見た私はハラハラドキドキ。でも何事もなく青葉ちゃんが紅葉ちゃんに声をかけて
各々席について仕事を始めた。
言葉を交わしてる間に見せた二人の強気な表情。いかにもな良きライバルといった
雰囲気が出ていてかっこよかった…。と思いつつ同時に特に何事も起こらず
ホッと胸を撫で下ろした。
昨日の今日で心配だったけれど二人ともいつも通りに戻ってくれて嬉しかった。
そして仕事の合間にトイレに行こうと立ち上がって青葉ちゃんが途中私の傍に来て
耳元で囁いてきた。
「ありがとうございます。ひふみ先輩のおかげで目指す方向を思い出しました」
「う、うん…」
耳元だから青葉ちゃんの吐息が当たり少しこそばゆくて顔が熱くなる。
「こんな私ですけど、これからもよろしくお願いしますね」
チュッ
「!? あ…青葉ちゃん、な…何を…!?」
言葉の最後に青葉ちゃんが私の頬にキスをして、びっくりした私は少し声を大きくして
青葉ちゃんに言うといたずらっぽい笑みを浮かべながら青葉ちゃんは
トイレに向かっていった。
私は慌てて周りを見ると私以外この場にはいなくてさっきの青葉ちゃんのキスが
誰にも見られてないのを確認して安堵した。すごく胸がドキドキいってる…。
それは誰かに見られたのではないかというスリルのと…後は青葉ちゃんにされたことが…。
すごくドキドキした…。でも…。
「こんな気持ちで仕事に集中しにくいよ…どうしてくれるの…青葉ちゃん……!」
情けない声で誰にも聞こえないような小さな声で呟いた。
今度は私の方が色んな意味で大変な一日になったのでした…。
お終い。
Tweet |
|
|
1
|
1
|
追加するフォルダを選択
きららキャラット2018/6の号を読んで思いついて勢いで書いたもの。
この回でははじめとゆんの百合度も高かったですね(*´▽`*)キュンッ
書く前にはももと青葉が仲良くなっていって不安で寂しがる
ひふみパイセンも書きたかったのですが入れるとこなくて断念。
続きを表示